「Eビジネスは構造設計できない」、アカマイが再攻勢開始

2005/12/27

 2004年に初の黒字化を達成し今期も売り上げを伸ばす米アカマイは、日本法人の新体制を整え、再び日本国内での顧客拡大に本腰を入れる。

アカマイ日本法人の代表取締役社長に就任した小俣修一氏

 アカマイ日本法人の代表取締役社長に2005年12月、就任したのは前マクロメディア 常務取締役 小俣修一氏だ。同氏はマクロメディアでリッチコンテンツ・ビジネスを、コンパック・コンピュータ、日本BEAシステムズでハードウェア、ソフトウェアプラットフォーム・ビジネスを手がけた。インターネットの成長をコンテンツとプラットフォームの両面から見てきた経歴を持つ。

 「2003年のアカマイ・テクノロジーズ・ジャパンの解散後、米アカマイのサテライトオフィス的な役割でしかなかった日本法人を、オフィスと人的基盤の両面で整備し、パートナーと共に日本市場での売上拡大を目指す」と小俣氏は語る。日本市場に向けたビジネスの強化はワールドワイドでのアカマイのニーズの高まりを受けてのことだとし、その理由について「2005年は時代の分岐点だった。ブロードバンド、ユビキタスインターネットの本格化でいよいよインターネットが社会基盤になった。アカマイはインターネットをビジネス基盤として運用していく役割を担う」と述べた。

 米アカマイは2005年、同社と同様に世界規模の分散ネットワークを保有する米Speedera Networksの買収を完了し、顧客のWebコンテンツとアプリケーションを高速に配信するためのよりインフラの強化に成功した。さらに、Webアプリケーションを高速に提供するためのソリューション「Web Application Accelarator」(WAA)の提供を今年から開始。日本でも、WAAの顧客を増やすという。

米アカマイ シニアプロジェクトマーケティングマネージャ ワーレン・ロス氏

 同サービスのマーケティングを担当する米アカマイ シニアプロジェクトマーケティングマネージャ ワーレン・ロス(Warren Ross)氏は「WAAの顧客としては、香港のキャセイパシフィック航空がある。同社は世界的なトラベルエージェントのイントラネットに同サービスを採用し、ビジネスのスピードアップと年間150万ドル規模のコスト削減に成功した。そのほかにも、自動車のBMW、アウディ。運輸のFedex、製造業のSKFなどあらゆる業種のビックカンパニーが採用している」と説明する。

 WAAの特徴は(1)スピードアップ、(2)ルートの最適化、(3)キャッシュサーバとオリジンサーバのダイナミックなマッピング、(4)TCP通信の高速化、(5)プリフェッチ(次に実行されるアプリケーションの事前キャッシュ)の5つ。すでにトリノオリンピック、2006 FIFA ワールドカップのチケット販売サイトに採用され、「2002年のワールドカップのときのように、Webサイトからチケットが購入できないという混乱はもう発生しない」(ロス氏)。

 小俣氏は「Eビジネスのインフラは緻密なサイジングで構築したとしても、いざ運用フェイズに入ると予期せぬ状態に遭遇する。いわば“構造設計できない世界”だ。世界規模で配置されている1万5000台のキャッシュサーバは24時間365日全世界のNOCで監視されており、顧客と顧客のユーザーを結ぶインターネットは常に高いビジビリティで監視可能。アカマイのソリューションがあれば、インターネットビジネスの計画的な運用が実現できる」と自信を見せる。さらに「米Speederaの買収でインターネット4大エンコーディングをサポートできるようになった。日本国内ではメディアエンターテイメント、Eコマースを中心に売り上げを伸ばしていきたい」と今後の戦略について語った。

(ナレッジリンク 宮下知起)

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