「コンサルタントの取り合いに」、日本版SOX法これだけの不安

2006/1/12

 2008年3月期にも導入されると見られる日本版の企業改革法(日本版SOX法)をにらんで、コンサルティングファームの内部統制担当スタッフの拡充が続いている。アビーム コンサルティングのプリンシパル 永井孝一郎氏は「アビームは30人のコアスタッフを始め、すでに100人以上が内部統制のコンサルティングに携わっている。SOX法に関する知識を社内に浸透させ、すでに基礎教育済みの200人を含めて、今後1年で300人規模まで人員を拡充する」と述べた。

アビーム コンサルティングのプリンシパル 永井孝一郎氏

 SOX法への対応でまず求められるのはビジネスプロセスを文書化すること。業務ごとに予想されるリスクやその対処を定義する必要もあり、作業は膨大になる。文書化はビジネスプロセスを標準化、効率化することにもつながるため、その業務を深く理解している外部のコンサルタントが支援するケースが多い。

 2008年3月期に日本版SOX法が導入されるとすると、多くの企業では2007年4月からの期が内部統制の対象になる。2007年4月に内部統制の整備と運用を始めることを目指す場合、残された時間は1年強しかない。永井氏は「米国SOX法では1つの事業に対して500〜600の業務プロセスを定義している。1つの業務プロセスごとに10程度の業務ステップが存在することから、1社当たり数千〜数万の業務定義、リスク定義、コントロール定義などを行っている。これらの作業には数百〜数千人月の工数がかかった。日本版SOX法でも内部統制整備の本質は米国版と変わらないので、コンサルタントの取り合いになるのは目に見えている。気づいている企業はすでに動き始めている」と説明した。

 ただ、永井氏は「内部統制整備のスキルを持つ要員が限られるとともに準備期間も十分とはいえないため、ITについては、2007年4月の時点では本格対応が間に合わず、現行のシステムを前提とした対応とならざるを得ないだろう。むしろ、日本版SOX対応で膨れ上がるコストを吸収するために、SOX法対応を行いながら中期計画としてITの抜本的な再構築を検討すべきだろう。ポイントはグループ企業のシステム統合とシェアードサービス化だ」と述べた。

 また、永井氏は「米国SOX法では企業は対応のために、ITを除いても平均2億円程度の支出をしたといわれている。もともと、欧米企業は性悪説を前提とするマニュアル社会であり、企業の内部統制整備は進んでいた。日本はこれまで性善説の人治社会でやってきたためマニュアル類の整備が不十分である。日本版SOX法対応では、米国よりも支出が増える可能性もある」と述べた。

 性善説に則る日本企業は部門ごとの最適なビジネスプロセスが定義されていることが多く、全社・グループ全体でビジネスプロセスが標準化されていることは少ないとされている。日本版SOX法の対応で、日本企業の多くは内部統制の整備から始める必要が出てくる可能性がある。

 さらに永井氏は「標準化されたビジネスプロセスをあらかじめ実装しているERPパッケージと異なり、手作りのアプリケーションは固有のビジネスプロセスに合わせて開発されている。従って、内部統制文書化のためにはアプリケーションの仕様書やテスト結果も整備する必要がでてくる。ITシステムを手作りした企業では、日本版SOX法対応としてシステム開発費に匹敵する費用を要することも予想できる」と指摘し、手作りシステム特有の課題を強調した。

 アビームは2005年10月、企業の内部統制システムの構築を支援する新サービスを開始した。米国SOX法への対応で培ったノウハウに基づき開発した方法論「ABeam ICMS (Internal Control Management System) Framework」を活用する。当初はアビームがこれまでコンサルティングを担当した既存顧客にサービスを提供する。「既存顧客についてはすでに業務プロセスなどを把握していることから、内部統制システム構築で最も時間とコストがかかる業務プロセスレベルの内部統制を、スピーディかつ最小のコストで構築できる」(アビーム)

 新サービスは順次、新規顧客に対しても提供する考え。内部統制構築の業種別テンプレートを用意し、短期開発に役立てる。製造業向けのテンプレートからスタートし、流通業、リース業、金融業などの業種に対応したテンプレートを今後開発するという。

(@IT 垣内郁栄)

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