NECが新チップを搭載した無停止型サーバ、水冷を採用

2006/1/24

 NECは1月23日、新開発したLSI「GeminiEngine」(ジェミニエンジン)を搭載したフォールト・トレラント(無停止型)サーバ「Express5800/ft サーバ」を発表した。NECはIAサーバの可用性を高める手段としてハードウェアを二重化することで、低コストにノンストップシステムを実現するフォールト・トレラントに注目。新たに販売支援体制として30人規模の「新ftサーバ拡販プロジェクトチーム」を設けるなど力が入っている。

NECの執行役員常務 山本正彦氏

 NECの執行役員常務 山本正彦氏は企業の情報システムの中でIAサーバを利用する業務が増え、IAサーバに高い可用性が求められていると指摘。メインフレームやUNIXなどクラスタ技術を使った高可用性システムではなく、安価に信頼性を高められる既存のIAサーバをベースにしたフォールト・トレラントサーバの需要が増していると説明した。米IDCの調査によると2004年から2008年にかけてIAサーバ全般は12%の成長が見込まれているのに対して、二重化システムやクラスタシステム、コールドスタンバイシステムなどを実装したWindows/LinuxのIAサーバは約50%の成長が予測されるという。「IAサーバを中心とした高可用性サーバ市場のニーズをしっかりととらえる必要がある」(山本氏)

 新サーバに搭載するジェミニエンジンはNECが自社で開発。二重化したCPUやメモリ、I/Oなどを同期させるためのチップで、一方のハードウェアに故障が生じた場合は瞬時にもう一方のハードウェアに業務を肩代わりさせる。フォールト・トレラント用の制御チップセットと、IAサーバ用の汎用チップセットを1チップ化したのが特徴で、サーバの小型化を可能にした。マルチコア・プロセッサなど今後登場する新しいプロセッサにも対応できるという。「フォールト・トレラントのコアとなる技術の社製化を果たした」(NEC)ことで、NECは柔軟な製品開発が可能になるとしている。

タワー型を採用した「Express5800/ft サーバ」のミッドレンジモデル

 Express5800/ft サーバはXeon 3.20GHzを搭載したローエンドモデルと、Xeon 3.80GHzのミッドレンジモデルの2タイプ。それぞれラック型とタワー型がある。ミッドレンジモデルは水冷ユニットを搭載し、低騒音化を図っている。ローエンドモデルは138万円から(税抜き)。ハイエンドモデルは231万円から。出荷開始は2月3日。NECによると従来モデルと比較して価格が30%安く、性能が60%向上したことで「2倍以上のコストパフォーマンスを実現した」という。対応OSはWindowsで、2006年度にはLinuxにも対応する予定。世界で2008年までに1万1000台の販売を目指す。

 ミッドレンジモデルにはハードウェアレベルだけでなく、ソフトウェアレベルの可用性を高める「SingleServerSafe」(SSS)を標準搭載する。サービスやプロセス、OSなどの運用を監視し、障害時には自動で再起動して復旧する。ダウンタイムの軽減につながるという。

 また、クラスタソフトウェアの「CLUSTERPRO」を使ってフォールト・トレラントサーバをクラスタ構成で使うこともできる。OSなどによるサーバ自体が完全にダウンしてしまう障害でも業務を待機系のサーバに引き継ぐことで、ダウンタイムを短くできる。フォールト・トレラントサーバのクラスタは横浜市港湾局が導入。ほかに10社程度が国内で利用しているという。

 NECは2005年11月に米ストラタスと業務・資本提携を結んだ。今回発表したサーバをベースにストラタスがフォールト・トレラント制御のミドルウェアなどを追加する形で新サーバを共同開発する。

(@IT 垣内郁栄)

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NECの発表資料

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