NTTデータ「開発プロセス透明化宣言」、顧客と一体開発狙う

2006/2/23

 NTTデータは2月22日、仕様管理、品質管理、進ちょく管理の観点からシステム開発のプロセスをユーザー企業に分かりやすく説明し、事前合意を得る「プロセス透明化ガイドライン」を制定し、公表した。ガイドラインによってユーザー企業とのコミュニケーションを促進し、プロジェクトへの理解や参加を促すのが目的。NTTデータと顧客が一体となった開発が可能になり、失敗プロジェクトを減らせるとしている。

NTTデータの執行役員 金融システム事業本部長でプロセス透明化施策主査の栗島聡氏

 NTTデータの執行役員 金融システム事業本部長でプロセス透明化施策主査の栗島聡氏は「プロジェクト開発で問題がまったく出ないということはまずない。われわれの姿勢を確認する意味もあり、『開発プロセスの透明化』を宣言したい」と述べた。

 栗島氏は開発プロジェクトの課題について「上流工程での問題が非常に多い」と指摘した。複雑に組み合わされたシステムがユーザー企業のさまざまなビジネス局面で利用されたり、関係者が増えることでコミュニケーションが不足し、「要件定義工程での意思決定の遅れや先延ばし」が多くなっていると説明。また、工期の短期化で、ユーザー企業とコミュニケーションを十分に取る時間がなくなり品質悪化を招いたり、途中の失敗を取り戻す余裕がなくなっているという。

 栗島氏は「企画から試験・納品まで半年くらいで開発を終えることを求める顧客が多くなっている。特に(顧客から見えにくい)上流工程の時間が、はしょられている」と説明し、ユーザー企業がプロジェクトの内容を理解しないまま開発を進めることで、品質の維持が難しくなってきているとの認識を示した。「われわれの仕事の仕方を理解していただかないと、品質の作り込みが十分でなくなる面がある」

 ガイドラインは、システム開発の仕様、品質、進ちょくの3点について、NTTデータがユーザー企業に説明することを定める。システムの概要やスケジュール、ユーザー企業との役割分担を含めたプロジェクト体制、会議方法などは「プロジェクト基本計画」として策定し、NTTデータとユーザー企業で事前に合意する。また、事前に定めた指標に則り、プロジェクトの状態を定量的に分析し、ユーザー企業に適宜報告する。NTTデータは開発プロジェクトを企画から試験まで5工程に整理し、工程全体で30あまりのステップを設定。ステップごとにユーザー企業への報告や確認を行う。

NTTデータが発表した開発プロセス透明化の「宣言書」のパンフレット

 具体的には、仕様では、仕様検討から確定までのルールを規定し、要求定義の手順や確定の期限、双方の役割などを決める。仕様を変更する場合の方法も事前に両社で合意する。NTTデータからはユーザー企業に対して、要件・仕様管理表や仕様変更要求一覧などの文書を適宜提出する。

 品質では、定量的管理指標を使ってシステムの品質状況を把握する。問題点記述表や故障管理表、試験成績表、品質実績報告書などをユーザー企業に提出し、品質の情報をNTTデータとユーザー企業が共有できるようにする。また、進ちょくでは開発スケジュール表を提出し、開発のステータスがユーザー企業に分かるようにする。

 ガイドラインを守ることで、ユーザー企業がシステム開発の全体像や作業の流れを理解できるようになる。加えてNTTデータが期待するのは、ガイドラインによって「何を、いつ、誰がやるか」というNTTデータとユーザー企業の作業分担の明確化だ。「顧客にやっていただくことを事前に準備してもらえるうえに、NTTデータが本当にやるべきことを理解してもらえる」(栗島氏)

 特に仕様が急に変更になった場合、ユーザー企業がプロジェクトへの影響を認識していれば、次にどのような行動を採ればいいかを判断できることがある。「プロジェクトに問題が起きた際、『もっと早い段階で知らせてくれれば対応できた』という顧客企業もいる」(栗島氏)といい、プロジェクトのリスクに関する情報をユーザー企業と共有することで、「NTTデータと顧客が一体となった開発推進が生まれてくる」(同氏)ことを期待している。

 ガイドラインに基づくプロセスの透明化は、金融、公共、法人の数社の顧客に対して昨年から試験実施している。今後は、新規顧客に対して積極的にガイドラインを適用していきたいという。NTTデータグループだけではなく、協力会社に対してもガイドラインの遵守を求める。

(@IT 垣内郁栄)

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NTTデータの発表資料

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