Linuxは難しい? 中小向けWindowsクラスタ普及でMSなどが新団体

2006/3/9

 マイクロソフトと同志社大学は3月8日、マイクロソフトのクラスタOS「Windows Compute Cluster Server 2003」(Windows CCS)を研究機関や一般企業に普及させるためのコンソーシアム「Windows HPC コンソーシアム」を4月1日に設立すると発表した。マイクロソフトの代表執行役社長 ダレン・ヒューストン(Darren Huston)氏は「デスクサイドでスーパーコンピュータを実現し、ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)を大学や企業のメインストリームに持っていく」と述べた。

マイクロソフトの代表執行役社長 ダレン・ヒューストン氏(左)と同志社大学 学長の八田英二氏

 同志社大は1994年以来、HPCの研究に取り組み、2001年、02年、03年とLinuxベースのクラスタシステムを開発した。2003年の「SuperNova System」はAMD Opteronプロセッサを512CPU搭載するマシンで、スパコンの速度ランキングを掲載する「TOP500」で93位に入った。

 コンソーシアムで取り組むのはHPCの一般化だ。今夏にも出荷するWindows CCSはLinuxクラスタと比べてローエンドのHPCをターゲットにした製品。Windowsベースのために運用管理やアプリケーション開発も比較的に容易だ。同志社大の工学部知識工学科 教授 三木光範氏は「同志社大がLinuxクラスタの成果を挙げると企業から利用させてほしいという熱い要望があった。しかし、大学では引き受けることができず、最終的にはその企業自身でHPCを開発できるよう助言している。だが、中小企業ではLinuxクラスタの管理は大変すぎる。産業界にHPCを普及させるためには管理が容易なWindows CCSが必要と考えた」とコンソーシアム設立の理由を説明した。

 コンソーシアムでは4月1日以降、同志社大の京田辺キャンパス(京田辺市)内に16〜32ノード、64CPU構成のクラスタシステムを構築する。このクラスタシステムを使ってアプリケーションを検証したい一般企業を募集し、コンソーシアムで審査。採択された企業はコンソーシアム参加企業の支援を受けて、無償でアプリケーションを検証できる。

 コンソーシアムでは、10〜20社程度を採択する方針で、検証結果は一般公開していく。「安価で使いやすいスパコンが中小企業や研究者のデスクサイドに導入されることで、応用計算の果実を得られるようになる。その手伝いをしたい」(三木氏)

 コンソーシアムには同志社大、マイクロソフトのほかに、可視化アプリケーションを提供するケイ・ジー・ティー、熱流体解析アプリケーションを用意するソフトウェア クレイドル、金融工学、流体解析のアプリケーションを提供するティージー情報ネットワーク、ハードウェアの構築、保守を担当するビジュアルテクノロジーが参加し、採択企業の検証を支援する。

(@IT 垣内郁栄)

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同志社大学
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