MSがUltra-Mobile PC正式発表、「しかし第一歩に過ぎない」と担当者

2006/4/5

 マイクロソフトは4月4日、Windows XP Tablet PC Editionを搭載した小型モバイルPC「Ultra-Mobile PC」(UMPC)の日本での戦略を発表した。当初はターゲットを教育市場に絞る。顧客のニーズやアプリケーションの使い勝手を調査し、次期UMPCの開発にフィードバックする方針。米マイクロソフト コーポレートバイスプレジデント ビル・ミッチェル(Bill Mitchell)氏は「モバイルの先進国、日本での成功が不可欠だ」と述べた。

PBJが4月14日に出荷するUMPC「SmartCaddie」

 ミッチェル氏は@ITの取材に対して「UMPCの最初のフェイズはWindows Vistaが出るまで。それまでにいろいろなことを学びたい。Vista登場後に新段階として新しいソフトウェアやハードウェアのOEMパートナーを増やしたい」と述べた。今回発表のUMPCは「第一歩に過ぎない」として、フィードバックを基に次世代UMPCの開発を続け、全市場への展開につなげる考えを示した。

 UMPCはフル機能を備えたWindows XP Tablet PC Editionを搭載しながらも重さ0.9キロ以下、7インチのスクリーンを持つモバイルPC。マイクロソフトはほかに2.5時間以上のバッテリ駆動、無線LANやBluetoothサポートなどをガイドラインに定めている。国内ではPBJが製品化し、「SmartCaddie」の名称で4月14日に出荷開始する。価格は9万9800円。

 コンシューマを意識している欧米と異なり、国内では教育市場をUMPCのメインのターゲットにすえている。マイクロソフト日本法人は昨年から教育関係者と議論し、学校で使って家庭に持ち帰ることもできるUMPCが教育現場に受け入れられると判断した。ペン入力可能なUMPCのインターフェイスを活用し、小学校の漢字教育などに利用する。

 マイクロソフトは、4月に開校する立命館小学校(京都市)の3年生1クラスがUMPCを試験導入すると発表した。立命館小学校の副校長で、独自の教育法「陰山メソッド」で知られる陰山英男氏は「PCが得意な単純な反復や学習履歴の記録が可能」と指摘し、「UMPCはデジタル学習の本命だ」と述べた。

米マイクロソフトのWindows Mobile Platforms Division担当 コーポレートバイスプレジデント ビル・ミッチェル氏

 マイクロソフトは教育市場戦略のパートナーとして小学館や日本漢字能力検定協会、学習研究所、アルクなど6社と提携。マイクロソフトのWindows本部 ビジネスWindows製品部 シニアプロダクトマネジャー 飯島圭一氏は「学校現場だけでなく、英会話、通信教育など社会人向けの教育市場もターゲットにする」と話した。また、教育市場以外の焦点分野としてタブレットPCでソリューションを開発してきた金融、流通、製造、ヘルスケアなどを挙げた。マイクロソフトによるとすでにパートナーの選定に入っていて、「感触はすごくいい」という。

 国内では教育市場に焦点を絞るUMPCだが、ターゲット市場を含めてまだ模索を続けるようだ。ミッチェル氏は「もっと重要なアプリケーションがあるかもしれない。まずは教育向けで展開する」と語り、手探りで市場を開拓する方針を示した。ただ、デバイスに対して要求が厳しい日本で成功しないと、世界での成功もおぼつかないとの考えで、「まずは日本で顧客のニーズを探りたい」と語った。

 UMPCはプロジェクト名「Origami」として知られている。しかし、米マイクロソフトのUltra Mobile PCゼネラルマネージャーのオットー・バークス(Otto Berkes)氏によると「もともとのコードネームは“Haiku”だった」。コンパクトでエレガントなPCを目指す考えから命名したが、最終的には「大きな紙から美しい小さなものを作り出す。たくさんの可能性を秘めている」として現行の「Origami」になったという。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
マイクロソフトの発表資料
PBJの発表資料(3月13日、PDF)

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