NEC、EMCの次世代製品製造で一挙にストレージ事業拡大?

2006/4/6

 NECと米EMCは4月5日、NECからEMCへの次世代ストレージ機器の事実上の独占供給を含む、広範な提携関係の締結を発表した。

 両社はこれまで、EMCのストレージ関連製品をNECが国内でOEM販売する関係だったが、新たな提携では、「Enterprise Information Managementという新しい分野をともに開拓していく」(NEC代表取締役社長矢野薫氏)ことが目的という。今後の企業における情報管理では、ストレージ・ハードウェアに、ミドルウェアや管理ツール、アプリケーションを有機的に組み合わせていくことが重要であるという認識のもと、これらすべての分野で協業していく。

 今回の提携の一環として、NECとEMCは共同で「Storage Bridge Bay」(SBB)規格に準拠したエントリレベルのストレージ機器を開発する。NECはこの共同開発製品の製造を1社で担当し、両社がそれぞれの販売チャネルを通じて販売する。NECは日本や中国、東南アジアを中心に販売し、EMCは日本を含む全世界で販売する。

 SBBは、ストレージ機器の筐体(きょうたい)におけるストレージコントローラ接続スロットを、接続技術にかかわらず共通化する規格。これにより、ユーザー企業は記憶装置部分を買い換えることなく、ファイバチャネルやiSCSI、NASといった接続技術間の移行を簡単に行うことができる。Storage Bridge Bay Working Groupという業界コンソーシアムがこの規格を推進しており、今年6月には最初の製品が登場するとされている。NECは国内ベンダとして初めてこのコンソーシアムに参加したという。

左から、NECの川村副社長、矢野社長、EMCのトゥッチ会長、エライアス副社長

 EMCに対するNECの製造・供給は、契約上は独占的なものとはなっていない。しかし、「EMCとしてはほかの製造業者を使う理由は今のところ見当たらない」と米EMCのグローバルマーケティング兼事業開発担当副社長ハワード・エライアス(Howard Elias)氏は説明し、当面はNECのみに製造を任せる予定であることを明らかにした。

 共同開発製品は2007年度中の発売を予定している。NECの川村敏郎副社長は、EMCへの製品提供で、事業をグローバルに展開できると顔をほころばせた。

 「初期ロットで数万台の規模になる。現在のNECとEMCの国内ストレージ製品売上はハードウェアとソフトウェアで約400億円だが、新製品発売後1年で600億円程度に持っていきたい」(川村副社長)

 両社の共同開発と製造に関する協業は、現在のところエントリレベルの製品が対象だ。しかし川村氏は、「より上のクラスの製品についても、共同で技術検討を開始する」と話している。

 両社はストレージ・ハードウェア以外でも、幅広く共同開発を進めていく予定だ。「Enterprise Information Managementを実現するには、まだまだ足りない部分がたくさんある。これを共同で開発していく。その際、できるだけ重複投資をしないように、製品の共通化を図っていく」(川村副社長)という。

 管理ツールでは、NECは「WebSAM」、EMCは「Smarts」という製品を持っている。両社は今後、さまざまな管理機能モジュールを共同開発し、これらモジュールが両社の管理ツール上で共通に使えるようにしていく。最終的には2社のツールのフレームワーク統合を目指し、技術検討を進めていくという。

 さらに両社は、EMCの文書管理ソフト「Documentum」をベースに、業種別テンプレートを開発、NECの業種別アプリケーションと連携させていくとともに、グローバルにその成果を提供していくとしている。

 EMCは、今回の提携を通じた日本市場でのシェア拡大にも期待を寄せる。EMCの会長兼社長兼最高経営責任者ジョー・トゥッチ(Joe Tucci)氏は、「EMCは日本以外のすべての市場で(外付けRAIDの)マーケットシェア第1位だが、日本では第3位だ。これが、今回の提携を進めることになったもう1つの理由だ」と話した。

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EMCの発表資料
NECの発表資料

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