解読不可能な量子暗号システム、相互接続実験成功、三菱電機など

2006/4/13

左から、NEC 國尾武光氏、東京大学・生産技術研究所 前教授 今井秀樹氏、三菱電機 久間和生氏

 三菱電機とNEC、東京大学・生産技術研究所は5月12日、異なる量子暗号システム間の相互接続実験に世界で初めて成功したと発表した。三菱電機とNECの量子暗号システムを相互に接続し、東大生研が安全性の評価を行った。

 「量子暗号」とは、光子の量子状態を利用してデータを運ぶ暗号方式。現在主流の暗号技術(暗号アルゴリズム)に対し、絶対に解読されない暗号として、三菱電機をはじめとした企業において、商用化に向けた研究・開発が行われている。単体システムでの商用化製品はすでに開発されているが、暗号アルゴリズムの詳細や、通信に必要な光学機器の構成が標準化されていないため、異なるシステム間で相互に接続することができなかった。今回の研究成果は、三菱電機とNECの量子暗号システムを相互に接続する技術が開発されるとともに、情報化通信研究機構が有する研究開発テストベッドネットワーク「JGN2秋葉原アクセスポイント」を利用した実験で、開発した技術の有効性が実証された。

 三菱電機とNECが独自に開発した量子暗号システムを相互に接続するため、インターフェイス機能と暗号鍵を共有する機能を新たに開発した。これらの新機能は、今後量子暗号システムの標準化を進めるための基礎技術となる見通し。これらの技術を活用することで、将来的には高い秘匿(ひとく)性を持った通信ネットワークの実現が期待できる。

 東京大学・生産技術研究所は、最新の量子暗号理論とセキュリティ技術の視点から、開発された新機能を実装することで発生するネットワークの脆弱(ぜいじゃく)性、盗聴で漏えいする可能性がある情報を解析し、この方式の安全性を検証・確認すり作業を行った。

 三菱電機とNECは、5年後を目標に量子暗号化ネットワークの実用化を目指すとするが、それぞれ独自で開発を進めるのか、あるいは共同で行うのかといった具体案については未定であるとした。

(@IT 谷古宇浩司)

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