組み込みベンダの半分が海外へ外注、発注先は中国40%、インド20%

2006/6/9

 情報処理推進機構(IPA)は6月8日、今回で3回目となる組み込みソフトウェアの実態調査「2006年版組込みソフトウェア産業実態調査」の結果を発表した。今回から、新たに地方の情報関連人材育成機関に各地方の実態や課題を聞いた「国内地域向け調査」が加えられたほか、従来別に報告していた「教育機関向け調査」も組み合わせて公開することとなった。

IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC) 組み込み系プロジェクト サブ・リーダー 田丸喜一郎氏
 同調査は2004年から開始し、今回で3回目。調査は2006年1月〜3月にかけて行われ、組み込み関連企業の324社の経営者や事業責任者、548プロジェクトのプロジェクト責任者、1496名の組み込み技術者、78の地方機関、165校の大学、57校の高等専門学校、10校の専門学校に加え、海外の154社からの電話インタビューが回答として得られた。IPA ソフトウェア・エンジニアリング・センター(SEC) 組み込み系プロジェクト サブ・リーダー 田丸喜一郎氏は、「昨年の調査より2〜5割程度回答が増えた。しかし、これでも組み込みソフトウェア産業のほんの一部でしかないので、今後も調査対象を増やしていきたい」と意欲を語った。

 調査では、深刻な組み込みソフトウェア技術者不足が明らかになった。2005年の技術者の実際の人数は約17万5000人で、事業責任者は約7万1000人不足していると感じており、不足率は約41%だった。しかし、2006年は実人数が約19万3000人に増えたにもかかわらず、不足人数は約9万4000人に増えており、不足率は約49%に上昇した。この要因を田丸氏は、「携帯電話などの普及により、一層組み込み系ソフトウェア開発の案件が増えていることが大きい」と分析した。

 組み込みシステム開発に携わっている期間は、2005年とあまり変化はないものの、1年未満という回答が増加しており、さらにその内訳を見ると、40代、50代の技術者が多いことから、「組織・会社として、組み込み系開発を新たに始めたところが増え、従来ほかの開発を行っていた40代〜50代の技術者が組み込み系に移行した可能性が高い」(田丸氏)とコメントした。

 また、出荷後の問題発生率では、2005年と比較して「なし」という回答が10%以上増えているものの、「30%以上」という回答も10%近く増えており、2005年に10%未満だったベンダがさらに努力して0%になった一方、問題発生率の高いベンダはさらに品質が低下している傾向があるという。田丸氏は、「問題発生率が高くなればなるほど、ソフトウェアが原因の不具合が増える。逆にいうと、ソフトウェア開発力の低いベンダは不具合発生率が高いという傾向がある」と指摘した。

 プロジェクトの評価に関する調査では、「製品出荷後の不具合」や「製品の出荷状況」に関しては約8割〜9割のプロジェクト責任者が「計画通り」もしくは「計画以上だった」と回答したものの、「開発費用」や「開発期間」に関しては60%近くのプロジェクト責任者が「計画を下回った/期間が延びた」または「計画を大幅に下回った/期間が大幅に延びた」と回答しており、納期や費用に関しては多くのプロジェクトで目標に見達だったことが分かった。

 工程ごとの内部工数と外部工数に関する調査では、「システム要件定義」や「システムアーキテクチャ設計」などはほとんどが内部工数だったが、「ソフトウェア詳細設計」や「ソフトウェア実装・単体テスト」や「ソフトウェア結合・統合テスト」では半分近くが国内外へのアウトソースとなっており、そのほか「技術要素」も国内外へのアウトソースが半数以上を占めた。田丸氏は「人手がかかるところは外部にアウトソースするケースが多いようだ。事業数で見ると、半数近くの企業が海外へ外注しており、外注先国は中国が最も多くて40%、次いでインドが20%、そのほか欧州や北米が続いている」と説明し、すでに半数近くの企業が海外オフショア開発を手掛けていることが判明した。

 組み込みソフトウェアエンジニアのスキルレベルは、現在半数近くが指導者が必要なエントリレベルで、約3分の1が1人で作業ができる「ミドルレベル」、10%程度が新人に指導できる「ハイレベル2」、作業を創意工夫して新たな開発手法などを構築できる「ハイレベル1」は10%未満だった。しかし、経営者の理想では、ハイレベル技術者がもっと必要だと考えており、ハイレベル技術者の不足率が顕著に表れた。

 職種別では、ソフトウェアエンジニアの不足率が一番低く、そのほかは全般的に不足率が高いが、その中でもブリッジSEの不足率はほかを大きく引き離し、ほかの倍近い不足率となった。この点について田丸氏は、「アウトソースするケースが増えたことにより、開発拠点が複数にまたがるケースが増え、多拠点の橋渡し的存在を担うブリッジSEの需要が急増していることが原因だろう」と語った。

(@IT 大津心)

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