“リアルゼネコン”のIT事例を見る、NASを建設現場に

2006/6/29

 「ゼネコンはIT業界におけるプロジェクト・マネージャ的な位置づけにある」。東急建設の経営企画室 システムセンター 課長 吉村典之氏は、建設業界におけるゼネコンの役割をこう説明し、自社のITシステム導入事例を紹介した。複数の協力会社を取りまとめてシステム構築を完成させるITベンダは、“ITゼネコン”とも言われる。IT業界と近い構造にある“リアルゼネコン”のITシステム導入とは。

東急建設の経営企画室 システムセンター 課長 吉村典之氏。6月28日に「データストレージEXPO」で講演した

 マンションなどの建設現場では多くの作業員が働いているが、その取りまとめを行っているゼネコンの社員はごく少数だ。東急建設では約1500人の技術員が、常時500カ所にのぼる作業所(工事現場)につめているに過ぎない。単純に計算すると1つの作業所に3人。この3人が作業内容の周知や、手配、打ち合わせなどの作業をこなす。「もちろん、専任のIT担当者は置けない」(吉村氏)

 少ない技術員で作業を効率的に回すにはITシステムが不可欠だ。工事現場で扱うデータは、設計図などの図面データ、契約書などのドキュメント、そして工事写真データの3点。特に現場で問題となっているのは工事写真データだという。工事写真は建設の施工段階で撮影し、竣工引渡し時に提出する必要がある。完成後に確認できないような内部構造を撮影することも多いため、撮り直しができず、確実なデータ保管が必要。「日々数十枚〜数百枚を撮影し、工期全体では数万枚になる」(吉村氏)こともあり、データ量は大きい。

 この膨大な写真データをはじめ、工事現場のさまざまなデータを確実に保管するITシステムとして東急建設が候補に上げたのがストレージ。特に設置や運用管理が簡単なことなどに注目し、アプライアンス型NASを採用した。同社が工事現場にアプライアンス型NASを初めて導入したのは2001年だった。しかし、この初代NASは「問題点が多かった」と吉村氏は振り返る。現場で最も不評だったのはWebブラウザベースで利用する管理メニュー。専用のLinux OSで稼働するこのアプライアンス型NASは、東急建設が導入していたActive Directoryと連携できず、現場でアクセス権をあらためて設定する必要があった。

 また、WindowsのクライアントPCとの連携もいまいちで、ファイル名に非互換の文字を使うとファイルが開けなくなったり、フォルダ階層がループするなどの問題があった。さらにハードディスクドライブの障害が「思ったよりも多かった」(吉村氏)ことで、データの消失も発生した。RAID 1のミラーリング構成を組んで運用していたが、障害を本社のシステムセンターに通知する機能に不備があり、障害発見が遅れた。2基あるHDDが共にクラッシュする障害が3年で10件発生。うち復旧できずに完全にデータを消失してしまう障害が3件あったという。データ消失事故を受けてクライアントPCに直結するUSB接続のHDDを、バックアップ目的で導入したが、「30ページものマニュアルを読む必要があり、実際にバックアップを励行してくれたユーザーは全体の30%程度だった」(吉村氏)。

 初代アプライアンス型NASの問題発生で東急建設は2004年に2代目のアプライアンス型NASの選定に入った。重視したのはActive Directory連携やバックアップ機能の標準搭載。「Active Directoryとの連携を考えるなら『Windows Storage Server 2003』」との考えから、同OSを搭載する「Iomega StorCenter Pro 200d」の導入を決めた。同製品はテープドライブの8倍の速度でデータを圧縮保存できるハードディスクドライブ「REVドライブ」を内蔵。保存したデータを随時バックアップするようにした。ほかにもRAID 1のミラーリングでデータを保護すると同時に、Windows Storage Server 2003の「Volume Shadow Copy」機能を使って1日に4回、データのスナップショットを取るようにした。

 吉村氏は2代目のアプライアンス型NASについて「初代と比べて圧倒的にトラブルや問い合わせのコールが減少した」と評価。今後はデータ保管方法の標準化やセキュリティの向上に取り組むという。

(@IT 垣内郁栄)

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