模様付きの壁でも白色スクリーンとして使える技術、NII

2006/7/26

国立情報学研究所 助手の佐藤いまり氏

 国立情報学研究所 助手の佐藤いまり氏と東京大学大学院情報学環 佐藤洋一助教授の研究グループは7月25日、模様付きの壁を白色のスクリーンとして利用するための映像補正技術を開発したと発表した。

 今回開発した「映像補正機能付プロジェクタ・カメラシステム」は、模様付きの壁に投影した画像をカメラで観察しながら補正を行う。これにより、映像の画質を可能な限り保持しながら、模様の影響をある程度緩和することが可能となる。

 補正には、「事前処理」と「事後処理」の2回の処理が必要。カメラで投射対象を映しながら、プロジェクタの補正を行う事前処理は、「現在、バグがあるために30分ほどかかるが、バグが取り除かれれば10分程度で終わる」(国立情報学研究所 助手 佐藤いまり氏)。事後処理は、ハードウェアの性能によって処理速度が変わるが、いずれにしても数秒程度で完了する。

 今回開発した手法のユニークなポイントは、投影しようとする映像の内容に応じて、被投影面で観察される映像の画質を向上させる光学補正である点。映像の内容を考慮することで、被投影面の一部の反射率が低い場合でも、その部分に投影する映像の明るさがもともと暗いのであれば模様の影響は小さいといった臨機応変な判断が可能。投影する内容と人間の視覚特性の関係を考慮した研究の成果である。

 現在は、静止画のみの対応だが、将来的には動画対応も予定している。平面のみならず、段差のある形状への映像投射においても機能拡張が可能。佐藤氏は「どこにでも投射できるプロジェクタとして民生用機器への応用が考えられるほか、公的な場での映像投射というニーズにも対応できる」と実用化への可能性を語る。

(@IT 谷古宇浩司)

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国立情報学研究所の発表資料

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