話題のCometを実装、「Lingr」はリアルタイムWebを目指す

2006/9/23

 インフォテリアの米国子会社インフォテリアUSAが公開したチャットサービス「Lingr」が話題を呼んでいる。サーバからの情報をプッシュする新しい技術「Comet」を採用し、従来のチャットサービスと比べて極めて軽快な操作性を実現している。インフォテリアの代表取締役社長 平野洋一郎氏は「LingrはCometを活用した技術的なアプローチ。LingrのようなリアルタイムWebが今後注目されるだろう」と語った。

 従来のチャットシステムはクライアントからサーバに対して数秒おきにポーリングを行い、新しいメッセージを取ってきていた。しかし、この仕組みではメッセージ投稿と表示の間にタイムラグが出てリアルタイム性が損なわれる、ネットワークに負荷がかかるなどの問題があった。また、クライアント側の操作性を高める技術として画面表示と非同期でデータをサーバから取得するAjaxがある。だが、Ajaxはサーバからクライアントへの一方通行の仕組み。Ajaxを使っても「相手がサーバの外にいて、いろんなイベントがある場合は自分で取りに行かないといけない」(平野氏)という状況は変わらなかった。

「Lingr」のトップページ

 対して、Cometはサーバからクライアントへの通信をリアルタイムに行って、情報を擬似的にプッシュを実現する技術だ。インフォテリアUSAの社長 江島健太郎氏によるとCometは「コネクション張りっぱなし方式」。技術詳細は江島氏のブログが詳しいが、基本はクライアントが発行したHTTPリクエストをサーバが受け入れたままにして(セッションをつなぎっぱなしにして)、メッセージ投稿など外部からサーバに対してイベントがあった場合に、サーバがクライアントに対してメッセージを送信する。

 ただ、この仕組みではセッションをつなぎっぱなしにするためにサーバのリソースを消費し続けるという問題がある。LingrではJavaで開発されたServletコンテナ対応のアプリケーションサーバ「Jetty 6」を採用することでこの問題を回避しているという。

 Lingrが注目を集めるもう1つの理由は、CGM(Consumer Generated Media)を強く意識した機能を実装していること。Lingrはチャットルームごとにパーマリンクが設定され、固有のURLが割り当てられる。ブログなどからのリンクが容易。また、チャットのログはアーカイブとして自動で保存されるが、そのアーカイブにもパーマリンクが付く。Lingrはチャットルームごとにタグを付けることも可能。チャットルームに画像や動画のURLを入力すると、画像や動画がチャットルーム内に表示される機能もある。平野氏は「Webリソースとして参照できるチャットだ」とLingrに期待を寄せている。

(@IT 垣内郁栄)

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