オラクル参入でSaaS市場は? 「Siebel CRM On Demand」正式発表

2006/9/29

 日本オラクル、日本オラクルインフォメーションシステムズ(OIS)は9月28日、SaaS(Software as a Service)型のCRMアプリケーション「Siebel CRM On Demand」を10月1日に提供開始すると正式発表した。Salesforce.comなど国内で先行する競合ベンダよりも価格を低く設定。両社は製品機能や拡張性でも競合を上回るとし、「この分野でもリーダーの地位を確保し、ナンバー1になる」と意気込んでいる。

OISの代表取締役社長 村上智氏

 オラクルの正式参入で、SaaSアプリケーションの国内市場が本格化すると見られる。米オラクル買収前のシーベルは国内でSiebel CRM On Demandを一部展開してきたが、契約関連のデータが日本語に対応していないなど不完全だった。10月から提供開始するアプリケーションは日本語化をさらに進めた。ホスティング先もIBMから米オラクルが運営する米国オースティンのデータセンターに変更。プラットフォームもIBM DB2からOracle Databaseに変更した。

 Siebel CRM On Demandはマーケティングや営業支援、サービスなど「大企業向けの自社導入型製品『Siebel CRM』と同じ機能」(OIS 代表取締役社長 村上智氏)を、ネットワーク経由で利用できる。最新版のRelease 12ではアナリティック(分析)機能を追加。リアルタイムだけでなく、過去のデータと現在のデータを対比でき、ビジネスの傾向などをつかめるようにした。また、金融、ハイテク、自動車、ライフサイエンスを対象にした業種別ソリューションを標準で用意。ユーザー企業は複雑なカスタマイズを行うことなく自社の業務に適した画面、データモデル、ビジネスプロセスを利用できるという。

「Siebel CRM On Demand」の利用画面。Webブラウザでアクセスして利用する

 Siebel CRM On Demandの月額料は1ユーザー当たり8750円(税抜、データ容量10MBまで)。村上氏は「初期導入コストを劇的に下げる」と話した。同氏は「市場シェアや競合は気にしない」としながらも、「競合ベンダの半分の価格で、10倍の機能を提供できる」と強調した。Siebel CRM On DemandはオラクルとOISが直販。日本IBMなど約10社のパートナーは導入やコンサルティングを担当する。新規パートナーの開拓も進める。

 オラクルがSiebel CRM On Demandの強みとしてアピールするのは拡張性。Siebel CRM On Demandの単体導入のほかに、自社導入型のSiebel CRMをすでに導入している企業が、地方や海外の拠点にSiebel CRM On Demandを導入し、自社導入型と共存、連携させることができる。Siebel CRM On Demandを導入している企業がビジネスの拡大に応じてスムーズにSiebel CRMに移行できる点も両社が強調するメリット。オラクルはSiebel CRM On Demandを中堅、中小企業だけでなく「エンド・ツー・エンドですべての規模の顧客に提供する」(村上氏)考えだ。

米オラクル 日本アプリケーション・ビジネス担当 シニア・バイスプレジデント ディック・ウォルベン氏

 日本オラクルとOISは、金融、通信・メディア、ハイテク、自動車など業種別に営業、ソリューションコンサルタントからなる60人規模のCRM専任部隊を組織した。10月には中堅企業担当の専任組織を新設する計画で、2007年5月末までに全体で120人規模まで拡充する。米オラクル 日本アプリケーション・ビジネス担当 シニア・バイスプレジデント ディック・ウォルベン(Dick Wolven)氏は、「顧客はより少ないベンダからより多くの製品、サービスを得たいと思っている」と話し、買収によって膨大な製品、サービスを抱えることになったオラクルの強みを強調した。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
日本オラクルの発表資料(Siebel CRM On Demand)
日本オラクルの発表資料(ビジネス戦略)
Web 2.0技術ポータル

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