来年1月確定は危うい?

日本版SOX法「実施基準案」に疑問符、アビームが指摘

2006/11/13

 「この内容ですんなり固まるかは疑問だ」。アビーム コンサルティングのEBS事業部 プリンシパルの永井孝一郎氏は、金融庁が11月6日に公開した日本版SOX法(金融商品取引法の一部)の実施基準案をこう評する(参考記事)。「諸方面の要請に応じて早めに出したのが見え見え。かなりの矛盾が出ていて、この内容でパブリックコメントにかければ修正要請が山のように出てくるだろう」と手厳しい。永井氏が指摘した実施基準の「大問題」とは。

abeam01.jpg アビーム コンサルティングのEBS事業部 プリンシパルの永井孝一郎氏

 永井氏が「驚がくした」のは、日本版SOX法の対象企業だ。実施基準案では上場会社とその連結子会社に加えて、持分法適用会社と業務委託先も対象としている。持分法適用会社は親会社が完全な支配権を持たない場合もあり、「実質的な内部統制整備ができるかは疑問」という。さらに業務委託先ではITアウトソーシング企業なども対象になり、対象企業は膨大。永井氏は「特にアウトソーサは大変な騒ぎになる。これらの企業を合わせると10万社程度。とてもそれだけの企業の内部統制を整備できる公認会計士、コンサルタントはいない」と懸念する。永井氏によると上場企業、約3800社のうちで内部統制整備を本格的に始めているのは1000社未満といい、今後は企業内を含めた内部統制の要員養成が重要になる。

 実施基準案は公表までに最低2回は書き直されたという。そのたびに方向転換されていて、矛盾が起きていると永井氏は見る。方向転換の1つはアビームが従来想定していた「勘定科目アプローチ」(金額的影響の大きい勘定科目にかかる業務プロセスを評価する手法)ではなく、虚偽報告リスクの高い決算・財務報告プロセスと業務プロセスの評価が重要視されていること。さらに持分法適用会社を評価対象にしたことで、対象範囲が大きく拡大した。

 一方、子会社の業務処理統制について売上高比率で3分の2程度と絞り込むことも明記。いわば対象範囲を拡大したうえで3分の2程度という指標で絞り込む手法を、基準案は採用している。永井氏は拡大と絞込みの結果、内部統制の構築範囲と評価範囲の整合性を保てなくなることを懸念する。

 IT統制については、監査すべき内容がかなり具体的に記載されているため、「監査人の負担は相当高くなる」と予測する。上記のように企業の内部統制整備や監査にかかわることができる監査人は不足が予想される。しかし、基準案では「ITシステムの設計書、ドキュメントをすべて読み込む必要がある」として、永井氏は「監査人がすべてを評価できるというのは、絵空事だ。できるわけがない」と厳しく指摘した。

 基準案は11月20日の内部統制部会で了承され、パブリックコメントが実施される見通し。2007年1月末にも確定するというスケジュールを金融庁は描いている。しかし、永井氏は「パブリックコメントにはさまざまな疑問、要望が寄せられるだろう。その調整が短期間でできるかは疑問だ。私はおそらく(1月中の確定は)遅れると思う」と話した。

 基準案がこの内容で確定するとすでに内部統制整備を進めている企業も対応が必要になる。永井氏は「業務処理統制の文書化の範囲として除外してきた組織、子会社についても、決算・財務報告プロセスと虚偽報告リスクの高い業務プロセスについては文書化が必要になった」と指摘。IT統制についても基準案の「財務報告に係る内部統制の監査」を参照に作業を見直す必要があると説明した。

(@IT 垣内郁栄)

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