金融庁 内部統制部会長が「私的な立場で」

日本版SOX法「実施基準案」、八田進二教授がポイント説明

2006/12/05

 青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科教授の八田進二氏は12月5日、EMCジャパンが主催したセミナーで講演し、金融庁の企業会計審議会 内部統制部会が11月21日に発表した金融商品取引法(いわゆる日本版SOX法)の実施基準(公開草案)のポイントを説明した。八田氏は同部会の部会長。「私的な立場で話す」と前置きして講演した。

sox01.jpg 青山学院大学大学院 会計プロフェッション研究科教授の八田進二氏

 基準案は12月20日までパブリックコメントを受け付けている最中。金融庁は2007年1月中には最終決定する考えだ。八田氏は基準案について「好意的に受け止められている」と話し、評価を得ていることを説明した。

 基準案全体を貫く考えは、「各組織での工夫による整備を重視した『標準化』を指向したこと」。実際、内部統制ルールの詳細を記述するのではなく、枠組みを示して、企業経営者が自らルールを策定できるように配慮した記述が多い。また、米国で内部統制整備のコストが膨らんだことを考慮し、「精度の実効性を保った上での『コスト効率的な対応』を指向した」という。

「作るのが求められる」文書化3点セット

 基準案は、財務報告に係る内部統制整備の全体を示す「基本的枠組み」と、経営者向けの「評価および報告」、監査人向けの「監査」の3部で構成する。基本的枠組みは、内部統制構築のポイントを6分野16項目に整理した「構築の要点」を示している。八田氏は「最低限これを読んで整備を進めてほしい」と説明。さらに監査人に説明するために業務記述書、業務フロー図、リスクコントロールマトリクス(RCM)の文書化3点セットを「作っておくことが求められる」と指摘した。

 評価および報告については「財務報告に係る全社的な内部統制に関する評価項目の例」として、42の評価項目を例示。八田氏は「チェックリストとして利用可能だ」とした。評価および報告では、内部統制の評価範囲を絞り込む記述もある。連結ベースの売上高などの一定割合で、概ね3分の2程度までの事業拠点を含めるとの内容だ。さらに選定した重要な事業拠点について、売上、売掛金、棚卸資産の3つの勘定科目に至る業務プロセスを評価対象にすると例示している。八田氏は数値基準を示すことについては部会内で「賛否両論があったが、例示として、ないよりはいいだろうと判断し、示している。これは大英断だ」と経緯を明らかにした。

5%ルールは「緩い」

 内部統制の不備のうち「重要な欠陥」と判定する基準は、「金額的な重要性」と「質的な重要性」。評価および報告は、金額的な重要性の基準を「連結税引前利益の、概ね5%程度」と例示する。八田氏はこの基準について「これは緩い数値。企業のリスク環境や企業規模によって大きく変わる」と指摘。そのうえで「経営者は評価範囲について一定の絞り込みを行った段階で、必要に応じて、監査人と協議を行うことが適切」と語った。

 実施基準案については持分法適用の関連会社が内部統制の評価範囲に入っていることを批判する声がある。八田氏はこの批判について「いう方がおかしい」と反論。「そもそも金融商品取引法が指向する、連結ベースの有価証券報告書のディスクロージャ制度が関連会社を範囲にしている。そのため(実施基準案も)関連会社まで網をかけざるを得ない。部会の範ちゅうの話ではない。だから非常に簡易な絞り込んだ形での対応で済ませることが必要ではないかとしている」とした。

 八田氏は「実施基準は90ページ。そのうち7分の1がIT関係。これは大変なことだ」と話し、ページを割いてITの対応を分かりやすく説明したことを強調した。そのうえで「これから内部統制整備が始まる3700の上場企業に対して、監査業界やコンサルティング業界、IT業界が(すべての上場企業に)同じマンパワーでサービスを提供できるかというと無理。(企業にとって)必要なのは、いまあるリソースで最大の対応をし、人材の育成、知識の吸収をすることだ」と訴えた。

(@IT 垣内郁栄)

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