次のリリースは2〜3年後?

MS、「Office」リボンUIの今後をコメント

2007/02/01

 1月30日のOffice 2007の公式リリースに先立ってインタビューに応じた、マイクロソフトのビジネス部門製品マネジメントグループ担当コーポレートバイスプレジデント、クリス・カポセラ氏は、Office 2007に同梱されなかったほかのアプリケーションにも、いずれはリボンベースの新しいUIが採用されるだろうと、eWEEKに対して語った。

 「リボンには一概に肯定的な反応を得られていたので、Office 2007のリリースに際しては、オーサリングエクスペリエンスが充実し、「Word」「Excel」「PowerPoint」におけるコンテンツ制作がきわめてシンプルになっている点を強調してきた。セールスポイントを絞り込めたことは、非常に有益だった」(カポセラ氏)

 マイクロソフト Office System製品を統括している同氏は、「こうした背景から、『OneNote』や『Project』『Visio』といったほかのOfficeアプリケーションにも、ユーザーのフィードバックを参考にしつつ、リボンを取り入れようと考えている」と続けた。

 マイクロソフトがオーサリングエクスペリエンスを強化する過程で学び、現在も学び続けている教訓は、Officeのほかの要素や、ユーザーに提案する使用方法にも流用していくことができると、カポセラ氏は述べている。

 「つまり、われわれのUI改良はまだ終わっていないということだ。単にほかのアプリケーションに新機能を実装すれば済む話ではない。Office 2007でわれわれが上げた成果とこれまでに得た反響から、ユーザー機能をさらに進化させることができると分かり、むしろ興奮を覚えた。機能を固定してしまうのではなく、無限に広げていく可能性が開かれたのである」(カポセラ氏)

 また同氏は、憶測を呼んでいるOffice 2007の検索アドイン(コードネーム「Scout」)を製品化する計画は、現時点では存在しないことをeWEEKに明かした。カポセラ氏いわく、 Scoutは「マイクロソフト Research内部で生まれた最新のプロジェクトで、すぐれた検索技術を含むもの」だという。

 しかし、Scoutはあくまで社内用のプロトタイプであり、正式な製品ではない。Office開発チームは、「Office Online」の双方向的なガイドの利用数が増えていることからも、ユーザーがOffice 2007内で目当てのものを探し当てられるようにする現行の機能にも、大きな自信を持っていると、カポセラ氏は述べた。

 Office 2003のコマンドやツールバーの在りかや、旧版から新版への移行方法を短い映像を用いてユーザーに教えるガイド機能は、Office 2007の新UIにも引き継がれている。

 「これらのガイド機能は無料で使用できるようになっており、Office 2003からOffice 2007への移行を支援するツールとして、最も頻繁に使われている」(カポセラ氏)

 すなわち当面はOfficeユーザー向けにScoutを製品化する意向はない、ということかと問われたカポセラ氏からは、「その通りだ」と答えを聞いた。

 カポセラ氏は、VistaおよびOffice 2007のリリースの遅れがボリュームライセンスユーザーに与えた影響に関して、マイクロソフトが個別調査を試みたことも認めている。

ボリュームライセンスユーザーの問題

 「これまでマイクロソフトは、2〜3年ごとにOfficeの新版をリリースすることを常としてきた。だが今回のメジャーアップグレードには、 3年と2カ月を要してしまった。そこでわれわれは、協業してきた顧客と個々に話し合う機会を設け、マイクロソフトとの関係についてどう感じているか、 マイクロソフトの対応はどうだったか、『保証契約』に何らかのメリットを見いだせたか? といった事柄を述べてもらった。結果は、実に満足のいくものだった。結局のところ2カ月はごく短い期間に過ぎず、顧客に深刻な影響がおよんだ形跡はないと判断できた」(カポセラ氏)

 同社は今後も、Officeのメジャーリリースを2年から3年置きに行っていく方針だという。マイクロソフトの企業顧客の大半がそうした前提条件でソフトウェアを購入しており、3年の契約期間中に出荷されたものであれば、どのバージョンのOfficeでも使用できる権利を与えられている。

 「製品開発に最大限の努力を費やしているのはもちろんだが、高品質を保つためにある程度時間がかかる場合もある。期限を守ることに固執した見切り発進は、ぜひとも避けたい」(カポセラ氏)

 同氏は、今回OfficeとVistaが同じ日に発売されたことに鑑みて、両製品の開発およびリリースサイクルは正式に連動していくことになるのかという質問に対して、両者が同時に市場に投入されたのはまったくの偶然だと回答した。

 「当初からそうしたプランを立てていたわけではない。また、毎回両製品を連動させることがマイクロソフトにとって重要だとも思えない。全社的な製品ロードマップを把握しておくのは不可欠な作業であり、当然ながらテクノロジーの依存関係も押さえているが、だからといって、Officeの新版をいつもWindowsと同じタイミングで発表するということにはならない」(カポセラ氏)

 「われわれOffice開発チームは、みずからをWindowsプラットフォーム上で動作するソフトウェアの作り手だと認識している。すばらしいアプリケーションを作り上げるために、同プラットフォームのどの主要機能を利用すべきなのか、Windows開発チームから指示を受ける立場にいる。そうした一連の指示の中からOfficeユーザー層に有用なものを選別し、アプリケーションに組み込んでいるのだ」(カポセラ氏)

 今からおよそ3年前、マイクロソフトの「Open XML」ファイルフォーマットがOfficeプラットフォーム上でしかシームレスに動作しないといった複数の問題点を、欧州連合が違法と判断した。同社の競合社は、Vistaでもこうした問題は解決されていないと不満を漏らしているが、これに対してカポセラ氏は、マイクロソフトほどオープンスタンダードにリソースを投じている企業はほかになく、同社はそのことを誇りに思っていると主張した。

 「Open XMLスタンダードについては、少しばかり言っておきたいことがある。まず、同規格はすでにECMA標準となっており、現在はISO標準の座を目指して鋭意努力を重ねているところだ。また、同規格は多くの企業の密接な協力を得て開発したもので、いわば業界が成し遂げた成果と言えるのである」(カポセラ氏)

 さらには、Open XMLは完全にドキュメント化されたオープンファイルフォーマットであることから、「Linux上でのみ動作するJavaベースアプリケーションの開発者であろうとも、Windowsで動くWordおよびExcelで開くことの可能なOpen XMLファイルを作成できる。近い将来、Apple Macintoshでも同じことが可能になる予定だ。Open XMLがOfficeとだけ連係しているとするのは、明らかな誤りである」と、同氏は苦言を呈した。

 確かに、マイクロソフト製品は一切使用しないLinuxサーバ用のPerlスクリプトアプリケーションしか作らない、究極の反マイクロソフト派開発者であっても、同プラットフォーム上で同言語を用い、コンテンツをOpen XMLフォーマットへ書き換えることはできる。

 そうしたコンテンツは、Windows PCもしくはMacOS上のWordで読み書きでき、あるいはマイクロソフトのプラットフォームとは関係ない、別の言語で記述されたアプリケーションからも扱うことが可能だと、カポセラ氏は指摘している。

 Wordで読み取れるXMLファイルを作成するのは「実に簡単で、数年後にはごく当たり前の作業になると考えられる」という。

 カポセラ氏は、同フォーマットに対するサードパーティ開発者の支持を獲得していくのはマイクロソフトの務めであり、同社は「実際に万策を講じている。だがその前に確認してもらいたいのは、Open XMLフォーマットを使用する機能的なアプリケーションを開発する際に、Windowsマシンもマイクロソフトの開発ツールも必要としないという点だ」と述べた。

 これはちょうど、「HTMLを使うしゃれたアプリケーション」を誰でも作成できるのと同じことだという。「HTMLを読み込むのは、別に『Internet Explorer』でなくてもかまわない。Linuxマシンで稼働している『Firefox』だってよいのだ」(カポセラ氏)

(eWEEK Peter Galli)

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(@IT 垣内郁栄)

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