ロボット関連技術を宇宙開発に

JAXAが研究者や産業界に参加を呼びかけ

2007/03/20

 JAXA(宇宙航空研究開発機構)が次代の宇宙開発で必須になるロボットの開発研究で、外部の企業や研究者に参加を呼びかける。これまでJAXAでは、三菱重工や石川島播磨重工、日立製作所など特定の企業との協業はあったが、これまで接点のなかった企業や大学など、より広い領域から研究者や研究成果を集めたい考えだ。

 3月28日には「ロボットが拓く宇宙開発のNEXT STAGE 〜 『宇宙一』のロボット王国ニッポンを目指して 〜」と題したシンポジウムを都内で開く。宇宙飛行士の若田光一氏やJAXAの関係者だけでなく、ロボット工学の研究者や産業界からの参加者も集めた。シンポジウム開催後は約1年間の予定で、テーマや課題を決めた技術者交流会を定期的に開く。「研究者や企業に関心を持って入ってきてほしい」(JAXA 宇宙ロボット推進チーム 久保田孝助教授)。地上のロボット技術にも宇宙空間で活動できるだけの要素技術は多くあり、本質的な違いはないという。搭載される制御用プロセッサやOSも、一般的な組み込み向けRISCプロセッサやリアルタイムOSだ。ソフトウェアの開発環境もパソコンだ。

 背景には宇宙開発予算の縮小によるJAXAの開発力減という内的な問題もあるが、今後本格化が予想される宇宙探索という外的な要因も大きい。現在、“第2期月探索次代”といわれるほど、各国は月を目指し始めている。日本が今夏に本格的な月探査衛星「セレーネ」を打ち上げ予定であるほか、中国は「チャンア」、インドは「チャンドラヤーン」、米国が「LRO」(Lunar Reconnaissance Orbitor)を、それぞれ2007〜2008年に打ち上げ予定と、月探査プロジェクトが集中している。

 中国の宇宙開発には国威発揚や対外的な技術力誇示という政治的な意図もあるといわれるが、日本や米国の月探査は、20〜30年後の本格的な月面活動をにらんだものだ。セレーレ打ち上げの目的は、第一義的には謎の多い月の起源を知る手がかりとなる科学的データの収集だが、資源活用や月面での人類の活動可能性の調査という面もある。米国のLROは、科学的調査というよりも月面活動のための事前調査という意味合いが強いという。SFの世界のようだが、将来的に人類の月面活動が本格化する可能性は十分にある。

jaxa01.jpg 小惑星探査機「はやぶさ」に搭載された小型ロボット「ミネルバ」。591グラムと軽量だが、太陽光を感知し、光のあるほうへジャンプするという自律性を持つロボット

 そうなってくると、月面(あるは火星)といった遠方で、調査活動や施設建造のニーズに応えられるのは自律型のロボットだ。「20年後か30年後か分からないが、月面基地を作るとなれば、宇宙飛行士が行って路肩工事をするわけにもいかない。ロボットが先に行って作ることになる」(JAXA 宇宙ロボット推進チーム事務局長 小田光茂氏)。例えばJAXAは小惑星探査機「はやぶさ」に搭載した小型ロボット「ミネルバ」をはじめ、現在研究開発中の惑星探査ローバー、スペースデブリ回収ロボット、自律型大型衛星組み立てロボットなどでロボット技術に自信を深めており、「今後、日本のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)を取り込んで、海外にも宇宙開発向けロボット技術を販売していきたい」(総合技術研究本部 宇宙先進技術研究グループ 西田信一郎氏)という。

研究開発中の自律型大型衛星組み立てロボットの動作概念アニメーション。大型パネルを単純に展開する方式では衛星の約2倍のサイズが限度だが、ロボットアームで組み立てる方式なら、より大きなパネルも組み上げられる

 宇宙開発で用いられる技術は、“枯れた”ものだけが使われる。プロジェクトの開始時に、すべて基礎研究が終わっている必要がある。その一方、ロボットのように高度な技術では技術的成熟度は低い領域での研究も必要であるため、JAXAでは今後、そうした領域で外部の力を活用したい考えだ。日本が得意とするロボット技術の宇宙開発への応用へ向けた今回の動きについて、科学ジャーナリストの中野不二男氏は「日本の産業にとっていいことだし、宇宙開発にとってはいい着地点だったのではないか」と評価する。

(@IT 西村賢)

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