HP Asia Pacific Enterprise Media Summit '07

“ITの人々”と“ビジネスの人々”をつなぐ、HPの新ビジョン

2007/05/23

ITからBTへ

 シンガポールで開催されているHP Asia Pacific Enterprise Media Summit '07のテーマは「ビジネス・テクノロジ」(BT)。IT(情報技術)に変わる言葉としてHPが普及を目指す新しい概念だ。BTを通して同社が世界中に発信するメッセージは「HPの製品とサービスがビジネスの成果を導き出す」ということ。ITが企業活動の基盤(インフラストラクチャ)を担い、業務の効率化を目指すという役割から一歩進んで、ITが事業に革新をもたらす役割にまで進化したという意味を持たせている。この新しいメッセージに沿って、同社の製品やサービスは再編された。

HP写真 HP Asia Pacific Enterprise Media Summit '07 ホスト役のエリック・ゴー氏(Vice-president,Marketing,Technology Solutions Group

 これまでHPが市場に発信してきたキーワードに「アダプティブ・インフラストラクチャ」がある。企業の情報システムにおける基盤部分の構築から運用について、コスト削減や将来的な拡張性といった要素を盛り込んだメッセージである。同社の製品やサービスのラインアップは、アダプティブ・インフラストラクチャという概念によって統合されていたわけだが、この概念で論じられる技術、例えば仮想化技術によるサーバの統合など、はどちらかというと“守り”のイメージが強く、企業側が情報技術を活用して攻めの展開を行っていくうえでのメッセージ性が弱かったという側面がある。

CEOは実際的な成果が欲しい

 同社が企業のCEOやCIOに対して行った調査によると、CEOの88%、CIOの90%が情報技術を自社の戦略における実際的な成果(outcome)に直結させていきたいと考えているという。この場合の成果とは、情報技術の導入によって、業務ノウハウを自動システム化した際に削減されるコストといった従来型の数値に加え、情報技術を活用することで生み出された革新的な製品やサービス事業がもたらすプラスの数値も含まれそうだ。ウダイ・クマラスワミ(Uday Kumaraswami)氏(HP Vice President,HP Services Consulting and Integration,Technology Solutions Group,Asia Pacific and Japan)は「例えば銀行なら、金融サービスの品質の向上や管理の容易性といったプラス要因を(情報技術の導入によって)求める。通信サービス業なら、サービスの企画からリリースまでの期間短縮による競合他社に対する競争優位性を期待するだろう」と話す。

 BTを裏付ける技術的な要素として、同社は改めてSOAの重要性を強調する。HP Softwareを統括するスティーブ・マクウィーター(Steve McWhirter)氏は「HPほどSOAに強い企業は存在しない。世界で一番だ」と言う。この発言の背景にはこれまで、ハードウェアを中心としたいわゆるプラットフォーム事業で業績を伸ばしてきた同社が、マーキュリーを買収し、ガバナンスやライフサイクル管理、パフォーマンス・チューニング、システム品質管理機能をソフトウェア・サービスのラインアップに加えることで、最大の競合であるIBMに対抗できる陣容と整えたことがうかがえる。

 なお、これらの買収により同社は、BTというコンセプトを構成する要素としてアダプティブ・インフラストラクチャに加えて、Business Information Optimization(BIO)とBusiness Technology Optimization(BTO)を追加した。新たに加わったこの2つの要素は、企業が情報システムを事業の基盤として長期的に活用していくという前提の元、HPが、意思決定の支援や新サービス企画の立案・展開などを支援するツールやサービスを安定して提供していくことを表明している。

新SOA製品とサービスを発表

 新ビジョンに基づく具体的なアクションとして、5月23日、HPはSOA関連のソフトウェア製品をいくつか発表した。同社は今回発表したSOA関連製品・サービスを「HP’s BTO for SOA」として整理、「ガバナンス」「品質」「管理」の3つのカテゴリに分けて市場に提案していく。

 例えば、ガバナンスのカテゴリには「HP SOA Systinet 2.51 Software」が、システムのライフサイクルとワークフローを管理する製品として含まれる。つまり、マーキュリーの製品が装いを新たに市場に再提案されることになるわけだ。

 そのほか同社は、SOAによるシステム構築に移行するための総合支援サービス「HP SOA Center of Excellence」や、IDCとの協力で実現した自己評価ツール「HP SOA Maturity Self-Assessment Tool」の提供など、企業に対し、SOAベースのシステムに移るための支援環境を提供し始めている。

(@IT 谷古宇浩司)

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