技術面、ビジネス面の両方で事業性検証

WiMAXでイー・アクセスとソフトバンクが提携

2007/06/21

 イー・アクセスは6月21日、都内で記者会見を開き、ソフトバンクモバイルと共同でWiMAX事業を展開していく方針を明らかにした。今秋にも予定されている2.5GHz帯での免許交付に向け、かつてのライバル同士が共同戦線を張った形だ。会見の席で挨拶したイー・アクセス 代表取締役会長の千本倖生氏は「孫さんとの間で、つい先ほど合意した。これまでADSL事業でソフトバンクとはライバル同士だったが、アントレプレナーシップ、挑戦者精神という点では2社はもともと似ていた」と提携について感慨を語った。

wimax01.jpg イー・アクセス 代表取締役会長 千本倖生氏

 両社間で合意しているのは、事業化に向けた技術面、ビジネス面での検証を共同で行うこと。共同出資による合弁事業の可能性など、具体的な見通しについては未定で、「結婚する前に、うまくいくかどうか同棲してみましょうということです」(千本氏)と説明する。詳細は決まっていないが「免許交付の前までに事業会社設立の詳細を詰める」

 総務省が打ち出した免許交付の方針では、3Gサービスを展開する事業者や、3G事業者への出資比率が3分の1以上の法人は免許交付の対象外となる。この“3分の1規制”があるため、イー・アクセス、ソフトバンクモバイルは免許交付を受けられない見込み。従って、両社は出資比率が3分の1未満の子会社を通じてWiMAX参入を図る。今回の提携を核として、「今日の発表が、今後、3社目、4社目、5社目とアライアンスパートナーが増えていくスタートの日になれば。NTTやKDDIであっても歓迎する」(千本氏)と、ほかのキャリアや戦略的パートナーから追加的な出資を募る。

wimax02.jpg

技術面、ビジネス面の両方で事業性を検証

 これまで両社はそれぞれ、モバイルWiMAXを用いたフィールドテストを行っているが、そうした実証実験で得られたデータや知見を持ち寄る。会見に同席したソフトバンクモバイル 取締役専務執行役員CTO 宮川潤一氏は、「例えばセルとセルの間のセルシュリンクの問題や、ビルの浸透度のことなど、まだまだ技術的に勉強していかなければいいけない。この先も1社で進めていくことに不安を感じていた」と技術面の課題が大きいことを示唆した。すでにイー・アクセスは2006年夏の実証実験で下り10Mbpsの接続に成功しているが、「WiMAXの事業規模とリスクを考えると、お互いに勉強しあったほうがいい」(千本氏)という観点から、WiMAX事業の事業性についても共同で検証していく。

 千本氏は「既存のキャリアが展開する垂直モデル型のビジネスモデルに対して、もっとインターネット的なやり方があるのではないか」と水平分業型のモバイルデータ通信業界の構築を訴えるが、その着地点は誰にも見えていない。今回の提携によって出てくる事業主体が、通信インフラだけを保有し、自らは通信サービスを行わず他社に提供するだけの、いわゆる“0種通信事業者”となる可能性もある。「インフラ投資が巨額だから、0種で各社がMVNOとしてサービスを受けるという形はあり得る」(千本氏)。

wimax03.jpg イー・アクセス 取締役 エリック・ガン氏(左)、同代表取締役会長 千本倖生氏(右)、ソフトバンクモバイル 取締役専務執行役員CTO 宮川潤一氏(中央)

(@IT 西村賢)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)