サンの考えは?

ODF、MS Officeと相互運用性を実現できず

2007/08/15

 Microsoft Officeの代替製品を勧められた企業が最初に思うのは、その代替ソフトウェアは、事実上の標準となっているマイクロソフトのファイルフォーマットをきちんとサポートするかということだ。

 米eWEEKラボでは、Open Document Format(ODF)標準をベースとする各種のプロダクティビティアプリケーションをテストした(同標準を採用した製品で最も有名なのが、サン・マイクロシステムズの「StarOffice」およびそのオープンソース版の「OpenOffice」である)。テストから判断する限り、ドキュメントの再現性は不完全であり、ほとんどの企業や組織には満足できないものだ。

 OpenDocument Foundationの創設者であるゲーリー・エドワーズ会長によると、OpenOfficeなどのOpen Documentベースのアプリケーションは、同フォーマットを推進するベンダがその気になりさえすれば、より高い相互運用性を提供することができるという。ソフトウェア標準の開発に取り組む個人に資金を提供する非営利組織である同財団は、マサチューセッツ州のOpen Document Formatの実証実験に参加したほか、OASISのOpen Document技術委員会(ODF TC)の設立当初から同委員会に参加していた。

サンは役割を果たしていない

 エドワーズ氏は、「同委員会を監督するサンは、相互運用性の促進という長期的目標を共有しながらも、簡単に利用できるOpen Document Formatの実装に必要な変更を推進する役割を十分に果たしていない」と話す。同氏によると、サンはODFの開発を、自社のオープンソーススイートであるOpenOffice.orgがサポート/実装している機能だけに限定するよう主張しているという。これに対して同氏は、完全な変換再現性を実現するのに必要であれば、マイクロソフトのOffice固有の拡張機能を受け入れるべきだとしている。

 「プロプライエタリな拡張機能をベースラインの上に置くというベースラインインプリメンテーションの問題は、以前からODF TCの懸案事項だった」とエドワーズ氏は自身のブログ「Open Stack」の4月6日付の記事で述べている。

 「われわれがやろうとしたのは、Open XMLの技術と手法を受け入れてベースライン内に実装することにより、プロプライエタリな拡張機能をベースラインの上に置くことができるようにすることだ。これは、ベースラインから分岐する以外に選択肢がないという場合のニーズに対処するためだ。ベースラインの質と奥行きは、相互運用性と変換の再現性を規定する。ベースラインから分岐してしまうと、相互運用性および変換品質のレベルが損なわれる。このためODFの設計者たちは、予想される一般的な相互運用性のユースケースのすべてに対応する包括的ベースラインが存在する市場を提供しようとしているのだ」と同氏は記している。

 「各種の市場セグメントおよび個別業界向けインプリメンテーションが『拡張機能』の導入を必要とするのは間違いない」と同氏は続ける。

 「これらの拡張機能はプロプライエタリである可能性もあれば、オープンなものである可能性もある。われわれはオープンであることを望むが、プロプライエタリであろうとなかろうと、ODFに対するクローズドな拡張機能やパッケージ化された拡張機能セットが理にかなう状況も数多く存在する」(同氏)

相互運用性に異なった理解

 しかしサンは、マイクロソフトフォーマットとOpen Document Formatとの間の不整合を解決するには、プロプライエタリな拡張機能に頼るよりも、ODFベンダ各社の経験と知識に頼る方が良いと主張している。 サンのコミュニティ開発/マーケティング担当マネジャー、アーウィン・テナムバーグ氏は、「OpenDocument Foundationは相互運用性の実現方法に関して異なった理解をしている」と語っている。

 OASISのOpen Document Format採用委員会の共同委員長を務めるテナムバーグ氏によると、サンでは、Open Document Formatの開発を続ける上で最も現実的な方法は、土台から築き上げる作業を維持することだと考えている。一貫性のないプロプライエタリな拡張機能を標準化することは、プロセスの複雑化と混乱を招くという。ほとんどのアプリケーションがその情報を利用することができないからだ。

 テナムバーグ氏の見解によると、Open Document Formatに機能を追加する手法として、2つの主要な理念的アプローチがある。1つは、IBM、サン、ノベル、アドビ、コーレルなどの支持ベンダに、アプリケーション間の相互運用性を促進するのに必要な機能を実装してもらうという方法だ。

 2つ目はエドワーズ氏が支持するアプローチで、必要な機能セットを実装するためにプロプライエタリな拡張機能を組み込むのを認めるというもの。テナムバーグ氏は、「この考え方は手っ取り早く実施できるかもしれないが、それによって相互運用性を実現することはできない。ODF固有の機能ではなく、プロプライエタリな拡張機能をベースにしているからだ」と指摘する。

“ダ・ヴィンチ・コード”

 OpenDocument Foundationでは、ODFの相互運用性に関する同財団のアイデアをプラグインという形で具体化した。これはマイクロソフトのバイナリフォーマットとODF間の相互運用性を提供するもので、エドワーズ氏によると、双方向のドキュメント変換プロセスで高い再現性を実現するという。

 同財団のプラグイン型変換エンジンは「Da Vinci」と名付けられた。これは、マイクロソフトのアプリケーションだけが理解できるコード(エドワーズ氏はこれをMicrosoft Word内部の「秘密の関係」のコードと表現している)を解読することができるからだ。その機能は、マイクロソフトが推進しているOOXML (Office Open XML)変換プラグインと同様だ。

 「すべてのMS Wordドキュメントは、インメモリバイナリ表現(IMBR)を内部的に保持している」とエドワーズ氏は説明する。「.docバイナリドキュメントは、 IMBRをファイルにダンプしたものに過ぎない。MS Wordの読み込み時には、これと逆のプロセスになる。MS Wordで変換プロセスが起動されると、IMBRは最初に非常に特殊な100%内部的な形式に変換される。われわれはこれをMS-RTFと呼んでいる。というのは、標準のRTFのように見えるが、実際にはそうではないからだ」(同氏)

 しかしエドワーズ氏によると、OpenDocument Foundationの変換アプローチの可能性を実現するためには、マイクロソフトフォーマットのドキュメントに含まれるプロプライエタリな拡張機能に対応するための規定をODFバージョン1.2(現在の予定では07年末にリリースの見込み)に盛り込む必要があるという。

 「サンは、MS Officeに依存するワークグループ/ワークフローのビジネスプロセスで求められる高いレベルの双方向再現性を可能にする変更を、OpenOfficeに加えることに反対した。彼らが提唱する『外部型』プラグインでは、MS Officeに依存するビジネスプロセスに対応することができない」とエドワーズ氏は語る。

相互運用性の改善を断念

 サンから必要な支持が得られなかったため、有望視されていた同財団のプラグインは現在、棚上げされた格好になっている。そしてOASISのOpen Document技術委員会の委員を5年近く務めてきたエドワーズ氏も、プラグインの取り組みから手を引いた。

 「われわれは2007年4月に、ODFの相互運用性を改善する取り組みを最終的に断念した。サンは、マイクロソフトドキュメントに対する ODFの相互運用性を改善する取り組みをすべて阻止あるいは無効化した」とエドワーズ氏は話す。同財団では今後、クライアントサイドのサーバに関連する相互運用性のみに注力する方針だという。

 「プラグインアーキテクチャは、マイクロソフトとサンのアプリケーションをファイルフォーマットレベルで変換できることが分かっているため、汎用的なファイルフォーマットに向けた取り組みはかつてなく現実味を帯びている。最も必要なのは、巨大なアプリケーションを持った巨大ベンダや市場シェアに対するどん欲な願望を持っている巨大ベンダに支配されることのない標準プロセスだ。マイクロソフトにあれこれ指図するのは政府の役目だ。われわれは市場が要求することを行うことができない」とエドワーズ氏は話す。

 エドワーズ氏によると、Open Document Formatの将来を指図する権限が市場に与えられれば、政府機関には受け入れることができない「Rip out and Replace」(廃棄・入れ替え)方式という結果にしかならず、これはOpen Documentの運命を危うくするという。

原文へのリンク

(eWEEK Tiffany Maleshefski)

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