XenSource買収は嵐の前触れか

マイクロソフトが「新生シトリックス」を買収すれば理にかなう

2007/08/16

 シトリックス・システムズによる5億ドルのXenSource買収は、マイクロソフトによるシトリックス買収の前触れなのだろうか?

 The 451 Groupのブレノン・ダリー氏とその同僚など一部のアナリストは、そうだと考えている。

 「シトリックスは、マイクロソフトのソースコードへのアクセスを基に、10億ドルを超える規模のビジネスを築いた。マイクロソフトの次期ハイパーバイザー技術『Viridian』のコードにXenSourceが独占アクセスできることが、この取引の重要な要因だ」とダリー氏は8月15日、 eWEEKに語った。「シトリックスにとって、Viridianは次のビジネスのための基本的なOSコンポーネントになる。Windows Terminal ServerがPresentation Serverにとってそうであったように」

 マイクロソフトがXenSourceの買収に踏み切る可能性もあったが、その可能性を阻んだのはXenハイパーバイザーに関する知的財産問題だ。XenはGNU General Public License(GPL)の下でライセンスされており、レッドハットとノベルのSUSE Linux部門のディストリビューションに採用されている。

 「XenSourceが2006年6月にViridianソースコードに関してマイクロソフトと提携して以来、買収は妥当に思えていた。だがオープンソースは依然として、レドモンドの重鎮たちにとって障害だ」(ダリー氏)

 シトリックスとXenSourceを統合した後の企業をマイクロソフトが買収すれば理にかなう。それにより、マイクロソフトはXenSourceの事業の厄介なGPLの側面から距離を置くことができ、それと同時に独自のサーバコンソリデーション製品を、信頼できる仮想化デスクトップユーティリティスタックに融合させられるだろうと同氏は言う。

 「シトリックスとXenSourceは、IBMのEclipseのように、オープンソースXenプロジェクトを非営利組織にスピンアウトすることを話し合っている」とThe 451 Groupの上級アナリスト、レイチェル・チャルマーズ氏は語る。

 その時点で、統合後の企業は純粋にプロプライエタリなソフトベンダになり、XenあるいはマイクロソフトのViridianでホスティングされる仮想マシンを管理する製品を持つだろう。それがシトリックスを「マイクロソフトにとって魅力的な買収ターゲット」にする。チャルマーズ氏はそう話す。

 マイクロソフトがシトリックスを買収すれば、シトリックスのPresentation Serverが生み出す企業向けWindows関連の売上高10億ドルを手に入れられる、とダリー氏は語り、統合後の新生シトリックスの買収を狙うのはマイクロソフトだけではなく、ヒューレット・パッカード(HP)やシスコシステムズも参戦してくるだろうと指摘する。

 同氏は、特にヴイエムウェアが仮想化分野をリードしてきた中で、マイクロソフトが遅れているViridianに熱心に取り組み、その一方でXenSourceとの技術協力にも取り組んでいることから、仮想化市場の競争は過熱していると語る。

 「XenSourceもマイクロソフトも、ヴイエムウェアのIPOが脱線の要因になることを望んでいる。ヴイエムウェアは仮想化市場で両社のずっと先を行っているが、まだ市場は初期の段階だ。マイクロソフトは Viridianのための時間稼ぎとして、できるだけ市場を減速させようとしている。Viridianのデビューを延期しなければならなかったからだ」(同氏)

 だがシトリックス、XenSource、マイクロソフトは等しく、買収完了から少なくとも1年の間は統合や計画に手を取られることにもなり、ヴイエムウェアに販売に集中する時間を与えることになると同氏は指摘する。

 マイクロソフトのSystem Centerおよび仮想化担当ジェネラルマネジャー、ラリー・オレクリン氏は、マイクロソフトと新生シトリックスの提携がより密になるとにおわせ、仮想化分野の巨大なチャンスに触れた。

 「シトリックスとXenSourceはマイクロソフトの戦略的パートナーだ。当社はこのコラボレーションが今後、今日のXenプラットフォームと新しいWindows Server仮想化技術のより緊密な関係を生み出すと確信している」(同氏)

 「本日のシトリックスによるXenSource買収、そして最近のヴイエムウェアのIPOは、仮想化市場の動的な性質を強く示すものだ。全世界のサーバのうち、仮想化されているのは現在5%足らずと、この市場はまだ緒に就いたばかりで、革新と顧客にとってのチャンスに満ちている」

 ダリー氏とThe 451 Groupの同僚はこの見方に賛成し、8月15日に発表された調査報告書では仮想化市場は3社を中心に回っているとしている。「市場の寵児ヴイエムウェア、若い血潮とこれまでの財産を持つシトリックス、マイクロソフトのViridianの(潜在的な)脅威の3つだ。Viridianは今のところ2008年第3四半期に登場予定で、マイクロソフトが完全に手の内を見せるまで、シトリックスとヴイエムウェアには12カ月の猶予がある」

 ヴイエムウェアは約85%の市場シェアを持ち、VI3技術で完全に統合されたスタックを提供し、第3世代仮想化技術を代表している。一方 ViridianとXenベースの製品(SUSE Linux Enterprise Server 10、Red Hat Enterprise Linux 5、XenEnterprise、Virtual Ironなど)は依然として第2世代の製品だとこの報告書にはある。

 「重要なのは、シトリックスがXenSourceに、ヴイエムウェアに価格圧力をかけるのに必要なチャネルインフラを与えるだろうということだ。その一方でXenのシマンテックとの重要な、拡大中の提携――XenSourceのピーター・レビンCEOがベリタスの初期の社員だったことを思い出してほしい――は、企業顧客に受けの良いストレージの世界とのつながりをもたらす。それは、シトリックスがヴイエムウェアとEMCの関係に対抗する手段となる」(報告書より)

原文へのリンク

(eWEEK Peter Galli)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)