Unbreakable Linuxを国内展開

日本オラクルがRed Hatサポート開始、クローンOSも提供へ

2007/08/30

 日本オラクルは8月30日、レッドハットなどに代わって、同社と同社パートナーが顧客の「Red Hat Enterprise Linux」をサポートする「Oracle Unbreakable Linux」サポートプログラムを9月1日に開始すると発表した。オラクルはOSからデータベース、ミドルウェア、アプリケーションまでのフルスタックをワンストップでサポートできることになる。日本オラクルの代表取締役社長 新宅正明氏は「最もセキュアでローコストなプラットフォームを広めたい。オラクルがサポートビジネスに踏み出すことでLinuxに対する信頼度が向上する」と話した。

 オラクルと同社パートナーが提供するのはRed Hatユーザーに対する24時間、365日の電話サポートと修正パッチ、修正カーネルなど。ほかのオラクル製品と同様のライフタイム・サポート・ポリシーも適用する。Red Hatを導入していない顧客には、Red Hatから商標を外したクローンOS「Oracle Enterprise Linux」を提供する。新たなパッチが適用されてもOracle Enterprise LinuxはRed Hatと同期され、ハードウェアやソフトウェアの互換性も保証する。オラクルがLinuxカーネルに対して行った修正は「すべてコミュニティにフィードバックする。将来のRed Hatのバージョンに反映してもらいたい」(日本オラクル システム事業担当 常務執行役員 保科実氏)としている。

レッドハットよりも格段に安い

oracle01.jpg 米オラクルのLinuxエンジニアリング担当バイスプレジデントのウィム・コーカーツ氏

 サポートプログラムのメニューは3つ。パッチを提供する「Enterprise Linux Network Support」が2CPUまでで年間1万2400円、CPU数無制限の場合も同額。パッチに加えて24時間365日の電話サポートが利用できる「Enterprise Linux Basic Support」は2CPUまでが年間4万9900円、CPU数無制限の場合で年間12万4900円。さらに過去のバージョンのRed Hatに対して修正パッチを提供するバックポート修正やOracle製品と同等のライフタイム・サポート・ポリシーが付く「Enterprise Linux Premier Support」は2CPUまでが年間14万9900円、CPU数無制限で年間24万9900円。いずれのメニューについてもオラクルは「レッドハットより格段に安い」としている。

 米オラクルのLinuxエンジニアリング担当バイスプレジデントのウィム・コーカーツ(Wim A. Coekaerts)氏はレッドハットなどが提供する既存のLinuxサポートについて、修正パッチが現在や過去のバージョンに提供されないことや、修正パッチのリリース間隔が長いこと、サポートコストが高額なことなどを指摘し、「Linuxベンダからは真のエンタープライズサポートは得られない」と話した。

 日本オラクルのパートナーとなり、サポートプログラムを再販するのは伊藤忠テクノソリューションズ、デル、ミラクル・リナックス、新日鉄ソリューションズ、NTTデータ先端技術、サイオステクノロジー。独自のLinuxサポートプログラムに対して「Oracle Unbreakable Linux」サポートプログラムをオプションとして付け加えるのは日立製作所とNEC。サポートプログラムを再販する各社は主に中堅中小規模の企業、システムを対象にサポートプログラムを販売する。日立とNECはエンタープライズ市場向けに高付加価値なサポートプログラムを提供する。

oracle02.jpg サポートプログラムを発表した日本オラクルとパートナー各社の幹部

Linuxカーネル技術者の育成も

 また、日本オラクルは日立、NECと協力してサポートセンターの「Enterprise Linux Joint Support Center」を年内にも設立する。Linuxカーネルの不具合や障害を発見し、修正パッチの提供やハードウェアの動作確認などを共同で行う。Linuxカーネルのメンテナーや技術者の育成も行う。

 オラクルはさらにLinux技術者の育成を目的に新たな認定資格「Oracle Expert Program:Managing Oracle Database on Linux Certified Expert」を設ける。研修コースも10月から開講する予定。

 Red Hatのサポートプログラムをオラクルが始めるのは、「Linuxの活用範囲が広がっていることが背景」(新宅氏)にある。Oracle DatabaseのプラットフォームにLinuxを選択する顧客も増えていて、新宅氏は「今後2〜3年で20〜30%はLinuxになる」と説明した。ネットサービスなどエッジ系、フロント系のシステムから基幹系までLinuxは広く使われだしている。それだけOSとしての評価が高いということだが、さらに国内市場でLinuxが広がるにはエンドユーザーが安心してLinuxを使えるようなサポート体制が必要とオラクルは判断した。オラクル幹部は、サポートプログラムの狙いを「単なるレッドハット対抗ではなく、Linuxを拡大するため。狙いはWindowsだ」と話した。

(@IT 垣内郁栄)

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