アドビはフル回転で取り組んでいる

Thermo、Share、CoCoMo――Adobe MAXで見えた次の技術

2007/10/05

 米アドビ システムズは、新分野へと踏み込み、また業界大手と競争している分野で推進力を高める新技術を発表した。

 同社のチーフソフトウェアアーキテクト、ケビン・リンチ氏は10月2日にAdobe MAX 2007で、企業のコアユーザー――デザイナーと開発者――がより効率的に仕事ができるようにする新技術の提供計画を説明した。

デザイナー向けアプリ開発ツール

 「クライアント、サーバ、サービス、ツールのいずれにおいても、アドビのチームはフル回転で取り組んでいる」(同氏)

 聴衆の喝采や歓声から判断すると、最も歓迎された新技術の1つが、コードを書かずにアプリケーションを作成できるアドビの新しいデザイナー向けツールだった。コードネームは「Thermo」という。

 「当社には世界最高のツールがあるが、もっといいものを作れると思っている」とリンチ氏は語り、Thermoのデモを行うマーク・アンダース氏とスティーブン・ハインツ氏を紹介した。

 「デザイナーは開発者とは仕事のやり方が違う。だから、デザイナーがアプリケーションをもっと簡単に構築できるようにしたかった。Thermoは、デザイナーがコードを書かずに直感的にリッチインターネットアプリケーション(RIA)を作れるようにする」(アンダース氏)

 ThermoはFlex Builderを使う開発者に、シームレスな作業の流れをもたらすとハインツ氏は語った。

 「デザイナーが作業の仕方を変えずにすむように――そして彼らが開発者に与えるものがもっと意味を持つように――しようとしている」とアンダース氏はいう。ハインツ氏は、開発者とデザイナーは来年、Thermoに関連して「何かを期待」できると語った。

4つのSaaSを発表

 またリンチ氏は、アドビのSaaS(サービスとしてのソフトウェア)分野への参入についても説明した。同社は市場投入を予定している4つのサービスにスポットライトを当てた。

 1つ目は「Scene7」だ。アドビは5月にリアルタイムリッチメディア配信サービスのScene7を買収した。このとき同社は主力であるクリエイティブ技術のオンラインでの存在感を拡大しようとしており、Scene7の双方向パブリッシングサービスを拡張して提供する計画を発表した。

 Scene7のCEOで、今はアドビクリエイティブソリューションサービス担当副社長のダグ・マック氏は、壇上に上がってScene7サービスの計画を説明した。アドビはScene7のリッチメディアパブリッシングシステムで自動化機能を提供し、より強力なWebサイト体験を作り出せるようにするという。

 Scene7は「動的にレンダリングされた1つのマスターイメージ」を提供すると同氏は述べた。

 アドビのクリエイティブスイートが主にこのシステムへの入り口となるが、「当社はコンテンツと視聴者のギャップを埋める」と同氏は語った。それはページにシンプルなURL呼び出しを埋め込むことで実現できるという。

 Scene7は「イメージポータル」あるいはURLを介してコンテンツを共有できる。また「これはSaaSとして提供される。コンテンツを他者と共有したい場合、シンプルなURL呼び出しでできる」と同氏。

 このScene7のオンデマンドソリューションにより、企業ユーザーは最小限のITサポートで、動的なリッチメディアコンテンツをアップロード、管理、強化、公開できる。マスターイメージのバリエーションも無限だとマック氏は語った。同氏はその後、アドビが手掛けたQVCのサイトでのScene7の使い方をデモした。

 Scene7はアドビのホスティング型ソリューションとして提供され、AIR(Adobe Integrated Runtime)技術を活用する予定だ。

 「これは、人々がWebサイトを利用する方法に革命を起こすだろう。これ以外にも、われわれは――印刷物、Web、ビデオなどで――クロスメディア型のワークフローを取り入れる」(マック氏)

 さらに、「来年はユーザーがサービスにアクセスして、サインアップして使えるWebセルフサービス製品を立ち上げる」という。

ファイル共有サービス「Share」

 次にアドビのエンジニアリングマネージャ、アンドリュー・シェバナウ氏がステージに登場し、ファイル共有を容易にする新サービス「Share」をデモした。Shareではユーザーに1Gバイトのストレージを提供するが、「ただのオンラインストレージではなく、FlashPaperを大きくしたようなものだ」と同氏は語った。

 またShareはREST(representational state transfer) API一式を提供する。Share APIを使えば、文書のアップロード・ダウンロード、文書のURLとしての共有、文書の許可設定、文書サムネイルの取得、Flashベース文書のプレビューなどができると同氏は説明する。

 「非常に興味深いマッシュアップが可能になる」(同氏)

 Shareは現在β版で、2008年に正式版になる見込み。

 その次のサービスのデモはアドビのエンジニアリングマネージャ、ダニエル・デーブラー氏が行った。同氏がデモしたのは、高品質の音声機能、メッセージング機能、プレゼンス機能をFlashやFlexのアプリケーションに統合できるサービス「Pacifica」だ。

 同氏はアドビのエンジニア、ドミニク・サゴラ氏とライブビデオセッションをしながらPacificaサービスを披露した。サゴラ氏は、この技術にPacificaという名を付けたのは、同氏とそのチームのメンバーがサーファーであり、カリフォルニア州パシフィカが特にビギナーにとってサーフィンに適した場所だからだと語った。「だからわれわれは、Pacifica 1.0を考えていた」

 「インターネットでこの素晴らしい音声の波に乗るつもりだ」(同氏)

 Pacificaの最初のバージョンは、高品質の音声チャット、テキストインスタントメッセージング、プレゼンス機能、NAT(Network Address Translation)/ファイアウォールトラバーサル、Ajax、HTML、Flash、Flex機能を備えるとデーブラー氏は語った。

 来年にはビデオチャット、P2P、Adobe AIRサポート、PSTN(公衆交換電話網)アクセス機能を追加する計画という。

 「わたしにはかなりSkypeに似たものに思える」とZapThinkのアナリスト、ロン・シュメルツァー氏は言う。

 Pacificaの非公開βテストは10月に開始され、Pacificaチームは「音声コンポーネントが必要なエキサイティングなRIAを持っている開発者」を求めているとデーブラー氏は語った。チームのメンバーも募集しているという。

リアルタイムコラボ機能を統合

 アドビのソフトウェアエンジニア、ナイジェル・ペッグ氏は、「CoCoMo」サービスを披露した。CoCoMoは、アドビの最も成功したホスティングサービスの1つ、Web会議サービス「Acrobat Connect」(旧称「Adobe Breeze」)をベースにしていると同氏は語った。

 CoCoMoは画面の共有やホワイトボードアプリケーションなどのリアルタイムコラボレーション機能を統合するためのサービス。

 「過去1年半の間、Connectの新バージョンに懸命に取り組んできた。FlexのクライアントUI全体を作り直し、それがUIコンポーネント一式になっている」(同氏)

 CoCoMoは、リアルタイムデータメッセージング、リアルタイムAVストリーミング、ユーザーIDのプレゼンスと許可、リアルタイムのファイルの公開とコラボレーションのためのAPIにサービスとして接続するという。

 「見ての通り、これらサービスでは素晴らしい成果が上がっている――すべてライブコードを走らせている。これは始まりにすぎない」(リンチ氏)

 この日のスニークピークセッションで、リンチ氏らはFlash PlayerのVoIP技術、Photoshopのオンライン版「Flash Home」、Flex on Linux、Flash on C/C++、Flash新版「Astro」などの新技術を多数披露した。

 また同氏は、アドビはITビジネスのバックエンドの部分を開拓することに取り組んでいるとも語った。

 「ビジネスロジックは何度も書き直されている。だからわれわれはそうしたパターンのいくつかをソフトに組み込もうとしている。われわれはこの機能をサーバサイドロジックの最善の再利用と見なしている」(同氏)

 最後に、アドビのエンジニアのスティーブン・ウェブスター氏は、同氏がいうところの「リッチなフロントエンドに向けた」バックエンドサーバ「アドビ LifeCycle ES」をデモした。「RIAへの投資を、LiveCycle ESで『プラットフォーム化』することで次のレベルへと引き上げられる」

原文へのリンク

(eWEEK Darryl K. Taft)

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