イオンが自社DWHシステムの利用事例を紹介

1日1億トランザクションを支えるDWHは意外な組み合わせ

2007/10/10

 米ラスベガスで開催中のテラデータのユーザーイベント「PARTNERS 2007」において、イオン システム開発部 会計システムグループ 周辺会計/情報系システムチーム リーダー 吉村伸介氏が、同社におけるテラデータの導入事例を説明した。

6年間で売上高1.8倍を実現するもウォルマートに脅威を感じる

吉村氏写真 イオン システム開発部 会計システムグループ 周辺会計/情報系システムチーム リーダー 吉村伸介氏

 イオングループは、事業持株会社のイオンを中核とした155社からなる大手流通グループ。GMS(General Merchandise Stores:総合スーパー)のJUSCOやMYCAL、コンビニエンスストアの「MINISTOP」、スーパーマーケットの「MaxValu」(マックスバリュ)などを中心に展開している。

 事業別に見ると、GMSのJUSCOなどが36カ国471店舗、スーパーマーケットのMaxValuが10カ国765店舗、MINISTOPが2974店舗、ドラッグストアのWelciaが1859店舗、すべて合わせて売上高3兆8364億円、営業利益752億円(2007年2月期)に達する。そのほかの事業では、ショッピングセンター開発などを手掛ける開発事業が、売上高1270億円、営業利益385億円。THE BODY SHOPなどのスペシャルショップが売上高6097億円、営業利益162億円。イオンクレジットなどの金融事業が売上高6624億円、営業利益616億円となっており、イオングループ全体では売上高4兆8248億円、営業利益1897億円だ。

 吉村氏によると、2001年の売上高2兆7390億円、営業利益920億円であるため、6年間で売上高が1.8倍、営業利益は2.1倍に成長しているという。そして、今後はマレーシアやタイなどアジア地区への展開を強化し、コア事業として「GMS」「スーパーマーケット」「ドラッグストア」「開発」「金融サービス」「アジアビジネス」の6事業に注力する。

 しかし、ウォルマートなど海外大手小売業者には脅威を感じているという。ウォルマートなどは「Everyday Low Price」「Everyday Low Cost」をうたってアジア地域でも大きくシェアを拡大している。実際、販管費を比較するとイオンが28%なのに対して、ウォルマートは16%にすぎない。これに危機感を感じたイオンでは、ビジネスプロセスの見直しやメーカーとの直接取引などに着手し、仕入れコストの削減などの施策を順次実施しているとした。

Oracleとテラデータの同時利用で、パフォーマンスアップを実現

 IT管理の歴史を見ると、1990年代後半に汎用機中心からオープンシステムに移行。現在、会計システムはSAP R/3、人事システムはOracle EBSを採用している。吉村氏はイオンの規模を示すため、同社の1日のトランザクションを例示。POSから本部へのトランザクションは1日1億296万件、商品管理DBへのトランザクションは1日1348万件、店舗の売上情報報告は1日438万件に及ぶという。

 これを踏まえて同社では、商品の単品管理システム「ADaMS」を構築し、グループで共通化。商品管理システム「ADaMS」は、各店舗のPOSから上がってくる商品情報を管理するシステムで、テラデータの「NCR 5450サーバ」5ノードを採用。従来は、生鮮食品やGMSなど事業部ごとに異なるサーバ/DBで構築していたため、横串検索ができなかった。この問題を解消するためテラデータのDWHを導入し、全社的な商品検索を可能にしたという。

 また、コンビニ店舗などでは敷地面積の問題から、店舗内にPOSサーバなどを複数設置することが難しいうえに投資負担も大きい。このため、同社では小規模店舗向けに複数のサーバを1台にまとめて仮想化技術で少なくまとめる施策を実施。こちらは、マイクロソフトのSQL Server 2005で構築した。

 新営業システムでは、NCR 5400を4ノードとOracle 9を併用。従来の同社の営業システムは、アクセス権限を持つ人間が1000人を超えていることなどから、バッチ処理の負荷が非常に高かった。そこで、EAIから来るデータをいったんOracleに収め、その後テラデータのDWHに渡すことで改善したという。その際に、小売店から24時間365日来る営業データを、まず過去1カ月間のデータしか持たないショートレンジテーブルを更新し、ビューを作成。その後、ロングビューを更新し、過去の分も閲覧可能にするという。この方式により、パフォーマンスやディスク容量を改善できた。

 このように、イオンではグループシナジーを生み出すために、グループ全体の情報の可視化に注力した。しかし、その際には「システム統合は重要で実施したてきたが、パフォーマンスの低下は避けたい。そこで、商品選定の際には拡張性を重視した」(吉村氏)といった問題が発生していた。その点、「ノードを追加するだけで、追加した分だけパフォーマンスの向上が見込めるテラデータはポイントが高かった」とコメントした。

(@IT 大津心)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)