SaaSにどう取り組む

MSバルマー氏が否定する「OS何でもいい論」

2007/10/11

 フロリダ州オーランドで10月10日に開催された「Gartner Symposium ITxpo 2007」においてマイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOは、Linuxとオープンソースに対する攻撃は手控え、Googleに対するマイクロソフトの見解、そして検索、広告、クラウドコンピューティング(訳注:インターネットサービスをベースとするコンピューティング)が マイクロソフトにもたらすチャンスについて語った。

 このシンポジウムで行われたアナリストとの質疑応答セッションの中で、バルマー氏は参加者が常々疑問に思っていることに答えた。その疑問とは、 SaaS(Software as a Service)をめぐるマイクロソフトの戦略はどういうものか、そしてGoogleへの対抗策は何かというものだ。

 バルマー氏はこのセッションで、マイクロソフトとGoogleの間に類似性を見るのは誤りであると言い切った。「両社は少しも似ていない。検索と広告という世界ではGoogleがリーダーだ。われわれはナンバー3であり、ナンバー2、さらにはナンバー1を目指してがんばっているところだ」と同氏は語った。

 バルマー氏によると、マイクロソフトはショッピングなどの個別分野やユーザーインターフェイスを通じて自社の差別化を図ってきたという。「プロダクティビティやビジネスコンピューティングの分野では、Googleの製品は模倣の域にも達しておらず、ほかの企業の製品も大したことはない」と同氏は切り捨てた。

 さらにバルマー氏は、オンデマンド/クラウドコンピューティングの世界の進化は、短期的な展開と長期的な展開が異なるものになるとの見方を示した。

 同氏は、マイクロソフトの4つの主要ビジネスモデルであるPC、Web、エンタープライズ市場、そしてデバイス/エンターテインメントにも言及した。

 「われわれはこれらを結び付ける必要があり、その過程でクラウドコンピューティングが一層重要になる。しかし、あらゆるものをシンクライアントで動作させるような世界を目指しているのではない。それ以外のすべてのモデルを結び付けたいと考えているのだ」とバルマー氏は話す。

 バルマー氏によると、ワシントン州レドモンドに本社を置くマイクロソフトは現在、20億ドル以上の広告収入があり、このビジネスは拡大しつつあるという。マイクロソフトの主要なビジネスモデルの中では、広告プラットフォームの市場シェアは「低い方」だと同氏は述べた。

 またバルマー氏は、Webベースのアプリケーションへの移行は、同氏のいう「OS不可知論」(訳注:OSは何でも良いとする考え方、OS agnosticism)によるものではないとの見解を示した。「ユーザーはOS不可知論に基づいて移行しているのではない。彼らは簡単なインストールを望んでいるだけなのだ」と同氏は話す。

 SaaSもマイクロソフトのWeb戦略の1つの側面である。しかしバルマー氏によると、Microsoft Officeのサービスベース版あるいはブラウザベース版では、OSベース版を使用するのと同じように良い仕事をすることは不可能だという。「しかしわれわれは導入を簡素化する必要がある」と同氏。

Windowsもコミュニティ開発

 バルマー氏は次に、マイクロソフトの「Silverlight」技術をめぐる話題を取り上げた。Silverlightは、リッチでリアルなアプリケーションを実現するクロスプラットフォーム/クロスブラウザ技術である。

 「Webモデルは今後さらに充実する。いつか、OS全体をダウンロードしているような感じになるだろう。ますます多くのOS機能がダウンロードされるようになるのだ。われわれはWindows Liveでそれを一部実現している。さらにリアルタイムな拡張性がクラウド(雲)の中から提供されるということだ」と同氏は語る。

 さらにバルマー氏は、「マイクロソフトはおそらく、ITのコンシューマ化によって世界で最大の恩恵を受けてきた企業だろう。われわれはそれを信じ、実践してきた。われわれがかつて他社から奪ったようなことを、誰もわれわれに対して行わないよう願っている」と述べた。

 「マイクロソフトのビル・ゲイツ会長が去ることで同社の現在の進化に影響が出るか」との質問に対して、バルマー氏は「当社の戦略、そしてわれわれの取り組みは、ビルの引退とは無関係に進化している。当社はデスクトップ企業だが、エンタープライズ分野へ事業を拡大した。われわれは現在、広告とオンライン分野、そしてデバイス分野に取り組んでいる。Windowsが今でも当社の中心的製品であるという点については誤解しないでもらいたいが、われわれは進化しつつある」と語った。

 しかし同氏によると、重要なソフトウェアのリリースの期日やスケジュールの約束については、マイクロソフトもはう少し慎重になるつもりだという。これまで約束の期日を守れずに困った経験があるからだ。コンシューマー技術に関しては、マイクロソフトは今後、ロードマップを示したりもしないという。

 バルマー氏は最近、Linuxとオープンソース技術に対して攻撃的な姿勢を示してきたが、今回はその機会を与えられながらも、そういった姿勢は見せなかった。

 「世の中にはビジネスモデルの問題に関して極端に宗教的になる少数の人々がいる」と同氏がいうと、聴衆で埋め尽くされた会場からまばらな拍手が起こった。「ソフトウェアの世界ではコミュニティ開発が盛んになるのは間違いない。LinuxよりもWindowsでそれをやってもらいたい」。

 将来展望に関してバルマー氏は、マイクロソフトにとって10億ドルの売り上げを期待できるような次のビッグビジネスは、SharePointおよび同社の管理ソフトウェア製品であると述べた。

 「マイクロソフトはSAPなどの企業とそうしたように、オラクルとの提携も強化するつもりなのか」との質問に対し、「それは良い考えだが、少し難しいかもしれない。われわれとオラクルの間には共感する部分が多くない」とバルマー氏は語った。

原文へのリンク

(eWEEK Darryl K. Taft)

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