ユニファイド・コミュニケーション製品群を全世界で発表

MS、オフィス製品にVoIPやWeb会議を統合

2007/10/17

 マイクロソフトは10月17日、同社が“ユニファイドコミュニケーションソフトウェア”と呼ぶ製品群を全世界同時に発表した。日本市場向けには11月から順次提供する。今回発表されたのは、サーバソフトウェアの「Microsoft Office Communications Server 2007」(OCS)、クライアントソフトウェアの「Microsoft Office Communicator 2007」、SaaS型のWeb会議サービス「Office Live Meeting」、360度の全方位カメラを備えるオンライン会議用の電話システム「Microsoft RoundTable」の4つ。また、Exchange ServerをOCS対応にする「Microsoft Exchange Server 2007 Service Pack1」の提供を11月中旬から無償ダウンロードサービスとして提供する。

プレゼンス情報を核にコミュニケーション統合

ocs01.jpg マイクロソフト 代表執行役兼COO 樋口泰行氏

 ユニファイド・コミュニケーションとは、電話、メール、インスタントメッセージ、オンライン会議など、これまでバラバラだったコミュニケーションツールをVoIPやSaaS型サービスを組み合わせて統合するというコンセプト。マイクロソフトはソフトウェアのサーバ製品をプラットフォームとして提供し、その上にパートナー企業がこれまでPBX向けなどで提供してきたVoIP関連の機器、ハンドセットやIP電話などのデバイス、ソリューションなどを提供する。代表執行役兼COO 樋口泰行氏は「国内ですでに50のパートナーが製品やサービスの提供をアナウンスしている。現在、コミュニケーションツールは統合される環境が整ってきたというタイミングではないか。パートナーも盛り上がりを見せている」と話した。また日本とほぼ同時に米国で行われた発表イベントには同社会長のビル・ゲイツ氏が登場し、「職場におけるコミュニケーションやコラボレーションの手法に根本的な進化をもたらすような先進的なソリューションの実現を急いでいる」と話すなど、法人向けVoIP市場への長期的で包括的なコミットメントを表明した形だ。

 今回の製品群について、日本では約1500人のベータテスターが参加したほか、3社が早期検証プログラムに参加したという。ソリューションプロバイダとしてはユニシス、大塚商会、三井情報、NEC、アクセンチュアなど9社と提携し、PBX関連ソリューションでは8社との提携を発表している。また、国内では7社がデバイスを提供予定だという。

ocs02.jpg 同時に公開されたパートナー企業によるデバイス製品。VoIP対応ハンドセットは、PC上のソフトウェアと連動して使える

Outlookから電話やWeb会議を起動

 Office Communication ServerとOffice Communicatorを導入することで、プレゼンス情報を中核にして、音声、ビデオ、インスタントメッセージ、会議などのコミュニケーションがオフィス製品からシームレスに行えるようになる。具体的には、オフィス製品にUIとしてプレゼンス情報が埋め込まれている。Outlookの送受信欄の名前表示の横にはプレゼンス情報を示す小さなアイコンが表示されていて、色で在籍であることが分かる。在籍で対応可能であることが分かれば右クリックして表示されるメニューから電話をかけたり、Web会議を開始することが可能だ。PCで電話を受けたり、転送や保留もできる。各コミュニケーションツールは連携しており、メールからインスタントメッセージ、インスタントメッセージから音声通話へと「直感的な操作でコミュニケーションを昇格させることができる」(インフォメーションワーカービジネス本部マネージャ 越川慎司氏)。OCS製品の早期導入テストに参加した横河電機のIT担当者によれば、「相手のプレゼンスを確認してから電話する習慣が根付き、無駄な電話がなくなるなど業務が効率化した」という。Outlookから発信した場合には、タイトルを引き継ぐため、電話を受ける前に用件が分かるというメリットもある。

 こうしたオフィス製品へのプレゼンス情報の統合として、越川氏はVisioで書かれた座席表の例もデモンストレーション。座席表から直接内線通話で呼び出したり、Web会議を起動できるとした。

ocs03.jpg Outlookのメールの差出人の横に“連絡可能”を示す緑色のアイコンが表示されている(左)。右クリックのメニューから、すぐにインスタントメッセージを送れる(右)
ocs04.jpg Visioの座席表にプレゼンス情報を統合したデモンストレーション

人間の顔を認識して映し出す360度全方位カメラ

 SaaS型で提供するWeb会議サービス「Office Live Meeting」は、パワーポイントなどのオフィス文書や動画ファイルを共有画面に表示しながらオンライン会議ができるサービスだ。CADなど一部のユーザーしかインストールしていないアプリケーションでも、画面を共有して操作することができる。会議の内容は記録を取っておいて、後で共有することもできる。

 同時に発表した11月発売予定の「Microsoft RoundTable」は、ミラーを備えた360度全方位撮影可能なWebカメラ。人間の顔を認識し、音声がする方の映像を映し出す機能を持つ。

ocs05.jpg Microsoft RoundTableは上部にミラーを備え、360度全方位を撮影できる
ocs06.jpg RoundTableとOffice Live Meetingを用いたWeb会議システムの例。CADなど、一部のユーザーだけが持つアプリケーションも共有可能

文化に根ざしたコミュニケーションの違いにも配慮

 日本のニーズを汲み上げた機能も実装した。一例はプレゼンスを出したくないという日本人の要望を取り入れた、特定個人や特定グループにアクセスレベルを限定する機能だ。すべてのメンバーをフラットに扱うのではなく、チームメンバーや同部署の同僚など近しいメンバーに対しては、緊急時の自宅の電話番号を閲覧可能としたり、応答不可のステータスであっても連絡を受け付ける設定などができる。「コミュニケーションのやりかたは文化に根ざしている。日本で根付くためにどういう機能を付加しなければいけないか、フィードバックをいただき、反映した」(樋口氏)。

(@IT 西村賢)

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