全国で講習会

Rubyが地方で愛される理由

2007/10/19

 開発言語「Ruby」が地方自治体の注目を集めている。開発者のまつもとゆきひろ氏には全国の自治体から講演依頼が殺到。Rubyを活用したITシステムの自治体への導入や、Rubyトレーニングを行う自治体も増えている。

ruby01.jpg Rubyの生みの親である、まつもとゆきひろ氏

 島根県松江市は10月1日、新しい医療保険制度に対応する業務システムをRubyで開発すると発表した。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)の「自治体等におけるオープンソース・ソフトウェア活用に向けての導入実証」事業の採択を受けた。開発を担当するのは、ネットワーク応用通信研究所(NaCl)とテクノプロジェクト、伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)からなるコンソーシアム。NaClは松江市に本社を置き、まつもと氏がフェローを務める。テクノプロジェクトも本社は松江市。

 NaCl本社があり、まつもと氏も居住することから島根県は特にRubyに対して熱心。県としても財団法人のしまね産業振興財団と共同で、「Rubyエンジニア育成講座」を10月29日から開催する。Ruby入門をはじめ、フレームワークの「Ruby on Rails」を学べるコースがある。NaClが講師を担当する。島根県は2004年からRubyの講習会を開催している。

 島根県は2006年12月の報道発表でRubyについて「現在、日本人が開発した言語としては唯一、世界的に普及し注目されている言語です。その開発者が島根県内に在住していることから、島根県(松江市)をオープンソースの拠点にしようする、様々な動きが生まれ始めています」と説明している。

地域経済を活性化したい

 ほかにはRubyのビジネス展開を図る業界団体、「Rubyビジネス・コモンズ」が7月末に立ち上がった。Rubyビジネス・コモンズは東京に本社を置く大手システム・インテグレータのほか、麻生教育サービスや麻生情報ビジネス専門学校、九州大学、福岡情報ビジネスセンターなど九州の組織、企業が多く参加する。設立総会は福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県が後援するなど、強くバックアップ。九州としてRubyを積極的に押すという姿勢が鮮明だ。

 設立の記者会見で福岡県 国際経済観光課企画監の合野弘一氏は、「九州には優秀な人材、技術者が多いが、仕事はすべて東京に持って行かれて、元請けで仕事を取ることが難しい状況。学校を出ても地元に仕事がないため、みんな東京に行く。知の共有でスキルレベルをアップして地域経済を活性化したい。この話には知事も大乗り気だ」と話した。

地理的不利を払拭できる可能性

 東京都三鷹市の第三セクター、株式会社まちづくり三鷹は10月から「Ruby on Rails講師養成講座」を始める。10月19日に開催したキックオフセミナーには、まつもと氏が出席。挨拶したまちづくり三鷹の代表取締役 内田聖ニ氏はRubyについて「私は仕組みはよく分からないが、これからのITビジネスに必ず必要なものであることは分かる」と話し、期待を示した。

 地方がRubyに注目する理由――そのヒントはキックオフセミナーで講演したまつもと氏の発言の中にある。まつもと氏はオープンソースソフトウェアの開発で採られるバザールモデル(用語解説)を説明。利点として空間的制約から自由な開発が可能になると指摘した。そのうえで「ソフトウェア業界は東京中心で、東京で働かないといけない。しかし、バザールモデルで自由な開発ができるようになる可能性がある」としてソフトウェア開発モデルの進化が、地方での開発を可能にすると説明した。

 バザールモデルの下では東京と地方との開発上の不利はなくなる。ソフトウェア開発者は仕事のために東京に縛られることはなく、住居環境や通勤環境に優れた地方でも東京と同じか、それ以上の生産性で開発できるようになる。地方自治体はこのソフトウェア開発環境の進化を地域振興に生かそうとしているのではないだろうか。地場のIT企業が中心となり、東京の大企業の開発を受注できるかもしれないし、技術者の地方へのUターン、Iターンが増える可能性もある。

 もちろん、まつもと氏はまだ慎重。講演では「地理的な不利を払拭できるのか。確証はまだないが、可能性はある」と話すにとどめた。それでも「地域を越えた活動によって(開発者の)ポテンシャルが発現する。地理的不利を払拭する可能性があるような気がする」と期待を示した。

(@IT 垣内郁栄)

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