「賢く失敗しろ」

Googleが“失敗”サービスを公開する理由

2007/10/26

 「イノベーションは変化を起こすことで生まれると、昔から相場が決まっている。従来の競争上の優位を振りかざすのではなく、継続的な技術革新に努め、特に他者との協力に力を入れるよう、企業を変えるのだ。こうしたコラボレーション面におけるイノベーションが、新製品および新サービス開発のきっかけになる」。

 Google Enterpriseの製品マネジメントディレクターである、マット・グロッツバック氏がニューヨークで述べたコメントだ。同氏は10月24日に開催された「Interop New York」で基調講演を行い、企業にイノベーションを実現させるような変化が必要だと論じている。

 「常に新しい物事が提案され、たくさんの小さな変化が絶えず起きている、そんな継続的なイノベーションの仕組みが求められている」と同氏は述べ、「iPod」「Macintosh」を始めとするアップルの数々のイノベーションを講演の中で例に挙げ、高く評価した。

 そのような仕組みを作り上げたいならば、製品を開発し、さまざまなテストを実施して、リリースするまでに何年も寝かしておく時代遅れな方法を採っていてはだめだと、グロッツバック氏は話す。

 Google Appsスイートを強化するため、Postiniの買収と統合に尽力した同氏は、製品のベータ版をすばやくユーザーに提供し検証してもらい、独自のペースを守って完成品をリリースすることで有名なGoogleの代表として、こうした見解を示している。

 この主張を裏付けるように、グロッツバック氏は10月24日、カリフォルニア州マウンテンビューに拠点を置くGoogleが、同社のウェブメールアプリケーション「Gmail」向けのIMAP(Internet Message Access Protocol)機能を無償で提供開始するという発表を行った。

 IMAPは、携帯電話やPDA、デスクトップなどの間で情報を同期させ、任意のクライアントを使ってユーザーが行うあらゆる作業を、電子メールにアクセスできる環境であればどこからでも続けられるようにするプロトコルだ。グロッツバック氏自身もこれを利用しており、講演ではIMAPを用いて電子メールアカウントと「iPhone」を同期させる方法を紹介している。

 また同氏は、企業は情報の隠匿という悪しき慣習を廃し、代わりにほかの作業チームとこれを共有するべきだと話した。

 例えば、たいていの大企業には、コンシューマ向けビジネスやエンタープライズ向けビジネスといった枠組みが存在し、そこには明確な境界線が引かれている。基調講演後にeWEEKのインタビューに応じたグロッツバック氏によると、同氏および同氏配下のエンタープライズチームは、Googleのコンシューマ専門部署の責任者としばしば打ち合わせをし、両部門が協力して新製品を開発していく方法を検討しているという。

 そのほかにもGoogleは、勤務時間の20%もしくは1週間のうち1日を、毎日の通常業務以外のプロジェクトに割くよう社員に推奨していると、グロッツバック氏は講演に集まった聴衆に語った。Gmailも「Google News」も、こうした取り組みが生み出した成果なのだそうだ。

 ブログに試作ツールをアップするのは、Googleの社員にとっても大きな冒険なのではないだろうか。ある意味で、その答えはイエスだ。まずは Google社内のユーザーに、製品の出来を検分されることになるのである。しかし、プログラマがそうしたリスクを冒すことを、Googleは歓迎している。

 グロッツバック氏は、「当社では賢く失敗することに重点を置いている」と話し、プログラマが開発した機能を数週間以内にオンラインでテスト用に公開するのは、同社ではごく当たり前だと述べた。「失敗に対してペナルティは課さない。それどころか、われわれは失敗を奨励している。失敗しないのは、挑戦していないことを意味する場合があるからだ」(グロッツバック氏)

 かつてのハイテク産業は、エンタープライズ分野におけるイノベーションをコンシューマ分野に波及させたと言っては誇っていたが、今日ではこれが逆転する現象が起こり始めていると、グロッツバック氏は指摘する。

 例えば、当初はコンシューマ向け製品と思われていたGoogle Appsだが、グロッツバック氏のチームは1日に1500社もの企業を勧誘し、「Microsoft Office」の補完ツールとして、あるいは代替ツールとして、同製品を試用させることに成功している。Appsのアップデートは、1週間おきには行われるのだという。

 グロッツバック氏は基調講演に続く質疑応答で、同氏自身、Google AppsがMicrosoft Officeに取って代わるとは考えていないが、互換性の低い個人用の生産性ツール(「Word」や「Excel」など)から、すべての要素がオンライン上に存在しているコラボレーション性の高いツールへ移行する企業は増えており、「ゲームの流れは確実に変わりつつある」と述べた。

原文へのリンク

(eWEEK Clint Boulton)

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