IPAフォーラム2007

社内評価に不満の技術者こそ、外へ――Seasar開発者がメッセージ

2007/10/30

 「偉くなりたい、金がほしいのではなく、自分のことを認めてほしいのがエンジニア。そのためには社外に出て行くしかないと思った」。オープンソースのJava軽量コンテナ「Seasar」の開発者で、電通国際情報サービスに勤める比嘉康雄氏は10月30日、「IPAフォーラム2007」で講演し、自身の経験から「エンジニアは社外に出て行くことで認められる」と訴えた。

seasar01.jpg 電通国際情報サービス 事業推進本部開発技術センター Seasar2技術推進グループ 統括マネージャーの比嘉康雄氏

 社外に出て行かないとエンジニアは評価されない――比嘉氏がそう感じるのは自身の社内での仕事が正しく評価されていないと感じていたからだ。自身の仕事を社内にアピールできなかったことや、アピールしても仕事を上司が正しく評価してくれなかった過去のケースを挙げて、「技術者は社内で認めてもらうのが非常に難しいと思った」という。

 技術者の仕事を評価するのは一般的にはその上司。しかし、管理が仕事の上司は最新の技術動向に詳しくなく、技術者が最新の技術や困難な開発に取り組んでも高く評価してくれない。比嘉氏は「特に日本では厳しい」として「エンジニアは結局はどのくらいの時間働いたかしか評価されない。1カ月かかる仕事を1週間で片付けても、1週間で開発できる人には4倍の仕事が降ってくるだけだ」と述べた。

社外に影響受けOSS開発スタート

 技術者が社内で適切な評価を得るにはどうすればいいのか。比嘉氏の場合は社外でのオープンソース開発だった。比嘉氏は社内での鬱屈もあり、社外の開発コミュニティに積極参加。他社の技術者とオンライン、オフラインでコミュニケーションをとることで、人前で話すことにも慣れたという。メーリングリストへの積極的な投稿が出版社の編集者の目に留まり、技術書の執筆にもつながった。「外へ出たことがきっかけになり、人に声をかけられるようになった」

 オープンソース開発を始めたのも、社外の人とのコミュニケーションがきっかけだった。比嘉氏はJBossなどオープンソースのアプリケーションサーバの存在を友人から知らされ、その可能性に未来を感じた。「自分でも開発できるのではと生意気なことを思い」、2003年春にアプリケーションサーバを開発した。これが「Seasar」だった。このSeasarは友人の企業が採用し、外国為替取引システムで利用している。

 初代のSeasarはオープンソースライセンスではなかったが、比嘉氏は社内向け開発では得られない充実感を感じた。「友人の企業からフィードバックがバンバンあり、どんどんよくなっていた。フィードバックはやる気につながる。世の中で役に立っていることに感激した」。その後、2003年8月にOSS化した「Seasar1」を公開した。

自分に才能がないことを認める

 自信を持っての公開だったが実際は「あまり使ってもらえなかった」。比嘉氏はソフトウェアをよりよくするには「1人では限界がある。自分に才能がないことを認めて、みんなの意見で作るのが重要」と思うようになった。CGM、ブログなど集合知のパワーが知られるようになり、そのパワーを開発に生かすことができるのではと思ったことも背景にある。

 Seasarはバージョン2でJava軽量コンテナに生まれ変わった。開発は2004年1月から始めたが、その際に採用した開発手法が「はてな駆動開発」だった。高い頻度で新バージョンを公開し、ブログの「はてなダイアリー」で通知する。同時にはてなダイアリーの「キーワード」機能を使って、はてなダイアリー上でのSeasarへの言及コメントを収集した。コメントには比嘉氏自身が回答。「意見が付くとすぐに開発し、すぐにリリース」というアジャイルな開発を行った。比嘉氏は「いまでもキーワードのチェックは毎日行っている」といい、「いろいろな人の参加が得られやすくなった」と効果を語った。

社外評価が社内評価につながる

 Seasarプロジェクトは120人のコミッター、70〜80の個別プロジェクトを抱える大規模なOSSプロジェクトになった。コミュニティを広げるのに役立ったのはオフラインのミーティング。いわば飲み会だ。いろいろな開発コミュニティの飲み会に顔を出すことで知己を広げ、Seasarプロジェクトに開発者を引っ張り込んできた。「コミュニティを広げるには地道な作業しかない」

 社内への不満から始めたOSS開発だったが、Seasar2の外部での評価が高まるにつれて、社内での比嘉氏の評価も上昇。当初は業務時間外にOSSの開発を行っていたが、「2005年には業務時間の3分の1をOSSの活動に充ててもよいと会社から認められた。いまはフルの業務時間を充てている」。OSS開発を業務時間外に行っていて、自らの仕事とのバランスで悩む開発者は多い。しかし、比嘉氏は「最終的には社内で認めてもらわないと、OSS活動を長く続けられない。そのためにはまずは社外での活動を認めてもらうのがよい」と話した。

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(@IT 垣内郁栄)

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