その進化はInbox 2.0とも

グーグルとヤフー、WebメールをSNS化へ

2007/11/22

 グーグルまたはヤフーが自社のWebメールユーザーの巨大なネットワークをソーシャルネットワーク化して、ユーザーが個人のプロファイルを表示したり、ほかのユーザーと交流したりできるようにしたら、一夜にしてFacebookやMySpaceの強敵になるだろう。

 そうなればグーグルまたはヤフー、あるいはその両方は、瞬く間に大手ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)よりも大きなユーザー基盤を手にし、IBMのSNSソフトLotus Connectionsのように電子メールプラットフォーム基盤の強みも持つことになる。

 このアイデアはヤフー幹部が示したものだ。この幹部は同社がYahoo! Mailをよりソーシャル化して価値を高める方法を検討していることをニューヨークタイムズに明らかにし、アナリストの間で憶測を呼んだ。

 ヤフーのコミュニケーション・コミュニティ担当上級副社長ブラッド・ガーリングハウス氏は、同社は電子メール送信者のランク付けやアドレス帳とプロファイルのリンクに取り組んでいるとニューヨークタイムズで語った。

 電子メールプラットフォームで、ユーザー同士の関係、つまりソーシャルグラフをいくらか意識してもらうことがその主眼だ。電子メール受信者が、リンクをクリックして送信者のプロファイルを見られるようになれば理想的だ。

 ヤフーのガーリングハウス氏は、これを「Inbox 2.0」という構想の一部と表現した。同様に、グーグルの製品管理ディレクター、ジョー・クラウス氏も、iGoogleをもっとソーシャル化する機会はあるとコメントしている。アナリストらは、この計画を企業向けとして支持している。

 IDCのアナリスト、レイチェル・ハップ氏は11月19日にeWEEKに、電子メールプラットフォームをソーシャルネットワーキングプラットフォームに変えることには大いに意味があると語った。電子メールプラットフォームは、ユーザーが自分の人間関係にかかわる情報を保存する場所だからだという。Gilbane Groupのアナリスト、ジェフ・ボック氏も同意見で、電子メールクライアントの件名、フォルダ、スレッドは、ビジネスネットワーク――「ソーシャルネットワーキングという挽き臼に入れる穀物」――を表すとしている。

 例えばGmailは、複数のメッセージスレッドを1つの記録にまとめており、IBMのLotus Notes MailやMicrosoft Outlookでよく見られるような、メッセージが散らかった状態は少なくなっていると、ボック氏は19日のブログで述べている。

 一方、Lotus ConnectionsはWebベースの社内ディレクトリと、社内のコミュニティに関連するタグクラウドを含む。グーグルとヤフーはこうした Web 2.0技術を取り入れて、同様のロケーションやタグ付けの技術をWebメールアプリケーションに利用するかもしれない。

 GmailとYahoo! Mailはいずれも数億人のユーザーを抱えているため、Webメールをソーシャルネットワーキングツールと融合させるという案は両社にとって食指が動くものに違いない。こうしたハイブリッドプラットフォームは両社が法人分野でLotus Connectionsに対抗する上で役立つだろうが、FacebookとMySpaceに挑み、SNS広告を獲得する力を新たに強化することもできるだろう。

 魅力的で価値ある提案ではあるが、課題がないわけではない。SNSの利用者とは違って、電子メール利用者は個人の情報を表示することに慣れていない。企業がユーザーの電子メールボックス、アドレス帳、プロファイルをほかのユーザーに見えるようにするのは大仕事になるかもしれない。

 さらに、こうしたハイブリッドプラットフォームは金融サービス企業では倫理的な壁にぶつかる可能性がある。この種の企業では従来、ブローカーとアナリストが共同で作業することは認められていない。

 IBM Lotusのソーシャルソフト責任者ジェフ・シック氏以上に、それをよく知っている人はいないだろう。人々は電子メールからソーシャルデータを掘り出そうとする行為には非常に敏感なので、どんなソーシャルソフトでもその機能を制限あるいは無効化する方法を備えていなくてはならないと、シック氏は20日にeWEEKに語った。

 しかし、この機能を無効化すれば、特にほかに情報を集めるソーシャルソフトサービスがない場合、ネットワーク内のソーシャルデータの量が減る可能性がある。Lotus Connectionsは多様な利用パターンに合わせて、ソーシャルデータを集める5種類のサービスを備えている。

 Burton Groupのマイク・ゴッタ氏は、電子メールデータを共有したくないユーザーに嫌がられないよう、グーグルとヤフーはこのようなシステムをオプトイン(事前に承諾を得る形式)として提供しなければならないだろうと指摘する。

 しかし、オプトインしたユーザーでも、ある程度共有するものをコントロールしたいと思うだろう。企業は、ユーザーがヘッダ情報――送信先、送信元、cc、件名――だけを共有するのか、ほかのユーザーにメール本文まで見せるのか決められる機構を用意する必要がある。

 「プライバシーという罠に足を踏み入れることになる」とゴッタ氏はeWEEKに語った。「慎重にならなければならない。スパイダーマンに出てくるセリフ『大きな力には大きな責任が伴う』と同じだ」

 シック氏は、顧客はさまざまなアプリケーションからソーシャルデータにアクセスしたいと考えているとし、IBMはユーザーが電子メールクライアント、インスタントメッセージング(IM)クライアント、ワープロ、ポータル、RSSリーダーなどのソースからLotus Connectionsのデータにアクセスできるようにしていると述べた。

 グーグルとヤフーは電子メールネットワークで多くのテストを行い、オープン性とプライバシー面でのユーザー満足とのバランスを取らなくてはならないだろう。

 ボック氏は、マイクロソフトのOutlookとExchange、IBMのLotus Notesという2大メッセージングアプリケーションのせいで、社内メッセージングは「時間が止まっている」と語る。業界はプライバシー、セキュリティ、組織の境界線、文脈に関連する機能にもっと取り組まなければならないと同氏は結論づけている。

原文へのリンク

(eWEEK Clint Boulton)

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