企業ユーザーはサービスパック待ち

SP1はWindows Vista導入の起爆剤になるか?

2007/12/04

 マイクロソフトがWindows Vistaを企業向けにリリースして以来この1年間、企業にとって同OSの導入の障害となる無形のバリアが存在した――Service Pack 1(SP1)がリリースされていないことである。

 Windows Vistaの最初の主要アップデートがリリースされていないため、多くの企業はこのOSが未完成であると考え、導入を拒んでいるのだ。

 職場管理サービス会社のGetronicsでグローバルソリューションディレクターを務めるリー・ニコルズ氏は、「多くの大企業に存在する大きな心理的障壁として、マイクロソフトの製品は、最初の主要パッチあるいはサービスパックがリリースされるまで導入すべきではないという信念がある。Windows Vistaが修正されて安定したと思えるようになるまで導入を見合わせるという企業は多い」と話す。

 しかしニコルズ氏は、こういった考え方にはあまりメリットがないと考えている。SP1は単なる信頼性向上のためのアップデートであり、基本的にはこれまでのアップデートやリリースを集約したものに過ぎないからだ。しかしその一方で、SP1でも安心できないので、SP2以降のサービスパックが出るまで待つというユーザーもいれば、まだWindows XPで十分だというユーザーもいる。

 Enderle Groupのアナリスト、ロブ・エンダール氏は、企業でのVistaの導入がこれまで進まなかった原因の1つとして、Vistaのサービスパックの登場を待つ必要がないことを企業に納得させようとしたマイクロソフトの戦略を挙げている。

 「企業ユーザーは最初のサービスパッチまで待とうとしているのに、マイクロソフトはVistaではそういうものは必要ないと彼らに言おうとした。しかし、Vistaには目立つ欠陥が多かったため、マイクロソフトのメッセージは受け入れられず、企業はSP1まで待つことを決め、『こちらから電話をするから』モードに入ったのだ」とエンダール氏は話す。

 Windows XPでも同じ傾向が見られた。XPはWindows 2000のいくつかの問題を修正したマイナーリリースであったため、比較的受け入れられやすかった。エンダール氏によると、それでも大多数の企業はSP1の登場まで待ったという。そして、XPのSP1は比較的早くリリースされた。「Vistaはメジャーリリースであったために欠陥も多く、そのことがSP1原則を再認識させることになった」(同氏)

 世界25カ国に約2万5000人の従業員を抱える年商数十億ドル規模の大企業であるGetronicsも、ほかの多くの企業と同様、既存のハードウェアの入れ替えに合わせてVistaに順次移行する方針だ。

 「当社のサプライヤーであるデルから購入する分を除けば、ハードウェアに関しては特に標準化していない。当社でのシステム更新は基本的に、既存のハードウェアの入れ替えに合わせて進められている。そうとはいえ、われわれはこれまでに2500人のユーザーをWindows Vistaに移行させた。全社的な配備が完了するのは2008年7〜9月期になる見込みだ」とニコルズ氏は話す。

 非常に少ないスタッフで高度なITサービスを提供しているのが自慢のGetronicsにとって、Vistaの最大の魅力の1つが、IT関連の人件費の節約が可能になるということだ。「画像の作成と管理にかかる時間と労力を削減できる。また、BitLockerなどの技術を利用するとともに、ローカルファイアウォールの設定を一元管理することにより、従業員の俊敏性とモバイル性を犠牲にせずにセキュリティリスクを減らすことができる」とニコルズ氏は言う。

 しかしマイクロソフトのゴールドパートナーであるGetronicsは、企業ユーザーにとってのVistaのメリットを十分にアピールしていないとマイクロソフトに対して批判的だ。

 「個人的な見解として、マイクロソフトはWindows Vistaの投入に際して企業環境でのメリットや、Windows XPと比べた場合の利点や改良点をきちんと伝えなかったと思っている。IT関連の人件費の削減やナレッジワーカーの生産性の向上などに関する話はあまり聞かなかった。対照的に、Office 2007ではそういった点が非常にうまく伝わっている」(ニコルズ氏)

 Getronicsでは、Vistaのリリース以来、企業顧客が直面している導入に関する問題を取り除くのに多くの時間を費やしてきたという。これらは主として、同OSのハードウェア要件とアプリケーションの互換性に関するものである。

 マイクロソフトの幹部たちは、最大のライバルは自社の従来製品だとよく言っているが、この点についてはニコルズ氏もまったく同感であるようだ。「Windows Vistaを勧めるのが最も難しいのは、きちんと管理された環境でWindows XP SP2が動作しており、顧客がそれで十分だと考えている場合だ」と同氏は米eWEEKの取材で語っている。

 Getronicsにとってのチャレンジは、そういった顧客にWindows Vistaの価値を示し、なぜ導入しなければならないのか、いつどんなふうに導入すべきか、そのコストはどのくらいかという疑問に対する答えを理解させることだという。

 「われわれは問題を解決していないのではないか、疑問に答えていないのではないか、と弱気になる時もある。マイクロソフトが企業にとっての価値を示すのにもっと力を入れていれば、このような疑問は早い段階で解消されたかもしれない。価値はあるのだが、業界全体を教育するためのしっかりしたコミュニケーションプロセスがなかったのだ」とニコルズ氏は話す。

 アナリストのエンダール氏も同意見で、Vistaの価値に関するメッセージは同製品のビジュアル面に関するものが中心であり、これは企業にはあまり関心がないことだと指摘する。セキュリティに関するメッセージは、XPの場合とあまり代わり映えがしないという。XPでもセキュリティが非常に重視されたからだ。

 「XPの場合は、企業は導入の必要性を理解できたが、Vistaでは、この1年間の大半を通じて導入の必要性に関する質問が絶えなかった。伝統的に力不足のマイクロソフトのマーケティング部門が同社の足を引っ張る格好になったが、公平な目で見れば、製品自体にも未完成な部分があった」(エンダール氏)

原文へのリンク

(eWEEK Peter Galli)

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