BtoCのEC市場は2012年に10兆円規模に〜NRIがトレンド予測エレクトロニクス市場における日本の地位は大きく低下

» 2007年12月19日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 野村総合研究所(NRI)は12月19日、報道関係者向けの説明会を開催し、2012年までのIT市場動向の予測などを発表した。予測によると、2012年にはBtoCのEC市場が10兆円を超えるなど、インターネットビジネスは順調に拡大するという。

2012年光回線は2000万超え、奨励金制度の影響で携帯電話機は微減傾向に

 まずは、ブロードバンド・モバイル関連市場の予測をNRI 情報・通信コンサルティング部 副主任コンサルタント 阿波村聡氏が行った。阿波村氏によると、ブロードバンド市場は、2007年の2672万回線から2012年には3244万世帯へ増加し、世帯普及率6割に達すると予測。光ファイバー回線も順調に伸び、2012年には1995万回線まで拡大するとした。VOD(ビデオオンデマンド)市場は2007年の526億円から順調に増加し、2012年には約2倍の978億円になるという。この点について、同氏は「事業者ではGyaOやYahoo!動画が順調だが、ニコニコ動画は開始1年で300万人の会員を獲得するなど予想以上の伸びを示している。こういったサービスが今後さらに登場することで、大幅な伸びも考えられる」とコメントした。

阿波村氏写真 NRI 情報・通信コンサルティング部 副主任コンサルタント 阿波村聡氏

 NGNに関しては、「技術的な要件はほぼ整った」(阿波村氏)としながらも、一般コンシューマへは、回線スペックではなくサービス面を強調しなければ、NGNのメリットを訴求することが難しいとした。一方、法人向けでは概念が理解されやすく、現状サービスとの兼ね合いがうまくつけば、移行がスムーズに進むと予測した。次世代広域無線市場では、ノートPCでの利用を前提として2012年には利用者700万人2381億円市場になるとし、携帯型ゲーム機やカーナビゲーションなどへ搭載されることで、さらなる拡大が見込めるという。

 携帯電話市場は、2008年に契約回線数が1億を超えると予測。伸びは鈍化しているものの、高齢者/子供の保有率増加や2台目需要が中心となり微増を続けるという。一方、関連市場はモバイルEC市場を中心に順調に伸び、2007年の1392億円から年平均成長率21%で増加を続け、2012年には3666億円にまで増加すると予測した。ただし、2007年11月にNTTドコモやauが発表した販売奨励金廃止コース登場の影響で、国内の携帯電話端末の出荷台数は、2007年の4960万台から2012年には4590万台にまで約1割減少すると予測した。

エレクトロニクス市場における日本の地位は大きく低下し続けている

藤浪氏写真 NRI 情報・通信コンサルティング部 上級コンサルタント 藤浪啓氏

 続いて、同 上級コンサルタント 藤浪啓氏がエレクトロニクス産業について2012年までの展望を説明した。藤浪氏はまず、日本のエレクトロニクス市場における地位が、中国の躍進に伴って大きく低下していると指摘。現在、ほとんどを国内で作っている組み込みソフトウェアも、2010年に向けてオフショア開発が進む可能性が高いとした。

 また、日本のエレクトロニクス業界はあらゆる経営指標において米国企業に負けており、その要因には総合電機メーカーである点が大きいとした。特に半導体分野の収益性を見ると、「選択と集中」を徹底して行っている海外企業ほど収益性が高く、キラープロダクトに集中して投資している企業が強いことが分かったという。

 さらに既存のエレクトロニクス製品市場は今後数年で頭打ちすると推測されることから、業界再編がさらに加速すると予測。再編パターンとしては、水平統合や強者中心の再編といった「顧客、もしくはアプリケーションの集中型」、自前主義からプラットフォームを活用する「プラットフォームを軸とした再編、もしくは積極的な連携型」、自動車やエネルギーなど規模が必要な業界における「次なる巨大市場のダイナミックな取り組みに向けた再編型」の3パターン考えられると藤浪氏は説明した。

2012年にはブログサイトは2200万、SNS登録者は4800万強へ

小林氏写真 NRI 情報・通信コンサルティング部 主任コンサルタント 小林慎和氏

 同 主任コンサルタント 小林慎和氏は、無償でWeb社会に奉仕する“ボランタリー”の実態や、IT市場全体の予測を行った。小林氏は、無償にもかかわらずWikipediaなどの更新作業にいそしむ人々を「ボランタリーWebユーザー」と定義。常に多くの人が情報の鮮度を保っているWikipediaの更新を行う「Wiki族」や、YouTubeの映像にタグを貼り付けて検索性を向上させている「タギング族」、Q&Aサイトなどで丁寧に回答する「Q&A回答族」、Amazonの書評を書く「カスタマーレビュー族」などが数多く存在するとした。

 小林氏はこれらのWebユーザーをさらに、さまざまなWebコンテンツを無償で創造する「クリエータ」、Web上の情報を関連付ける「エディタ」、Web上の情報の価値を判定する「バリュア」の3種類に分類。閲覧のみのレーシーバーを3284万人、クリエーターを783万人、エディタを1476万人、バリュアを951万人と推測。さらにそれらすべてを行う人々をCEVと定義して234万人と推測し、その中でも毎日活動している人が63万人いるとした。

 NRIの調査によると、CEVが1日にWebに費やす時間は3.9時間なので、そのうちの半分をCEV活動に費やしているとすると、1日2時間×365日×63万人で約4億時間になり、東京都の最低時給739円で換算すると年間3400億円規模にもなると試算した。

 NRIは、Webビジネスは2007年の6243億円から2012年には1兆2629億円まで拡大すると予測。そのうちのモバイルが占める割合も、2006年の19%から2012年には24%へ伸びるとした。伸び率で見ると、ブログ・SNSが2007〜2012年の年平均成長率は37%程度、インターネット広告は10%強、BtoC EC市場は15%強だと予測。BtoC EC市場の規模は10兆円を超えるものの、小林氏は「内閣府によると、日本の最終消費支出額は300兆円だ。EC市場が10兆円といっても3〜4%に過ぎない。まだまだ今後拡大する余地がある」とコメントした。

 ブログ・SNS市場は、ブログが2007年の1505万サイトから2012年には2222万サイトに、SNS登録者数は2007年の2480万人から2012年には4871万人に拡大すると予測した。インターネット広告市場は、2007年の4737億円から2012年には7844億円にまで拡大。ブログ・SNS市場は同268億円から同1758億円に拡大し、インターネット広告比率も2006年の67%から2012年には46%へ落ちるとした。

 小林氏は、今後もボランタリーWebユーザーやCEVはこれからさらに拡大し、インターネット市場へ貢献していくと予測。一方で、ボランタリーWebユーザーの5割がその活動の中で誹謗中傷を受けた経験があることから、誹謗中傷を防ぐ施策などが今後重要になってくると予測した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ