Weekly Top 10

電子書籍端末「iLiad」がすごい

2007/12/25

 先週の@IT NewsInsightのアクセスランキングは第1位は「落選報道のイー・アクセス・ソフトバンク陣営が“最後のお願い”」だった。2.5GHz帯を使った次世代高速無線通信サービスの事業免許の申請で、総務省による免許交付直前に流れた「ウィルコム、KDDI当確」の報道に対して、オープンワイヤレスネットワークと株主のイー・アクセス、ソフトバンクは総務省と電波監理審議会会長に対して要望書を提出。午後には緊急会見を開いて異議を唱えた。

 総務省も電波監理審議会も、こうした動きを事実上黙殺。翌21日金曜日には電波監理審議会は報道通りの答申を出し、即日総務省は免許交付を行った。

 申請で落選したことについて、オープンワイヤレス陣営は「まったく納得できないし、受け入れられない」というコメントを発表した(関連記事)。コメントは、体裁こそ一般的なプレスリリースであるものの、本文はわずか2行。文体も口語体と異例のものだった。その文面からは、憤懣やるかたない関係者の荒い息づかいまで聞こえてきそうだった。審査プロセスに十分な透明性があり、公平性が保たれていたのか、そもそも、行政による恣意的な電波配分が今の時代に最善であるのかなど、今後も議論は続きそうだ。

NewsInsight Weekly Top 10
(2007年1月21日〜1月27日)
1位 落選報道のイー・アクセス・ソフトバンク陣営が“最後のお願い”
2位 クアッドコアOpteronの失敗からAMDが学んだ教訓
3位 開発中のIE8がAcid2テストに合格
4位 日本のベンダも「GPLv3利用に委縮することはない」
5位 MSのオフィス検定、受験者の約半分は日本人
6位 楽天、Railsを使ってマイページを刷新
7位 @niftyがケータイ向けPCサイト変換サービス開始
8位 「Amazon Kindle」が革命的な理由
9位 FlashベースのIP電話プラットフォーム、米Ribbitが公開
10位 ARMで“瞬間起動”、TPが組み込みLinux高速起動ソリューション

 無線ブロードバンド普及前夜のいま、業界にも行政にも混乱が広がっているように見えるが、無線ブロードバンドという技術自体の未来は明るい。広大なビジネスチャンスが広がっている。

 無線ブロードバンドの普及で記者が期待しているコンテンツの1つが電子書籍、電子雑誌、電子新聞の類だ。常に2、3冊の本を鞄に入れておかないと不安になる私は、重たい本を持ち歩く必要がなくなる日が待ち遠しい。問題は、書籍の重さよりも、取捨選択しなければいけないという物理的制限と、その煩雑さだ。重さからいって持ち歩ける上限は4、5冊だが、リファレンス系の本など、常時持てるものなら持ち歩きたい書籍というのがある。あるいは、自分が所有権を持つ本を検索したり、好きに選んで表示させられるようになれば、住宅事情を理由に小さな本棚から溢れた本を処分する理由もなくなる。

 米アマゾンが発表したKindleのように、近年、電子ペーパーを使った読書端末の性能向上には目を見張るものがある。端末は、もう使える。後はネットワークとコンテンツだ。どちらが先かと言えば、たぶんネットワークだろう。

ranking01.jpg iRex Technologiesが製造・販売する電子書籍端末「iLiad」

 Kindleは米国内の携帯電話網を使うため、日本国内に持ってきても使えないのが残念だ。そう思っていたところ、「iLiad」という魅力的な読書端末があることを知った。iLiadはフィリップスからのスピンオフで、オランダをベースにするベンチャー企業、iRex Technologiesが製造、販売している電子書籍端末だ。モノクロ16階調で8.1インチ、768×1024ドット(160dpi)の電子ペーパーディスプレイを搭載。ワコム製のタッチスクリーンを採用し、読むだけでなく、メモや図を書き込むこともできる。IEEE802.11 b/gを搭載するほか、外部デバイスとしてUSBメモリ、MMC/CFカードなどが使える。対応する文書・画像フォーマットは、PDF、HTML、TXT、JPG、BMP、PNG、PRCなどでRSSコンテンツを読み込むこともできる。PRCというのはモビポケット(Mobipocket)と呼ばれる電子書籍専用フォーマットで、現時点でも約4万点の書籍をオンラインで入手できる。少し検索してみたところ古典的な名著から話題の新刊まで、かなり網羅している。モビポケットはまた、新聞社や雑誌社と提携して定期刊行物コンテンツも用意している。現在のところ日本語コンテンツはないが、iLiadにフォントを入れれば日本語表示もできるというし、国内販売を計画している日本企業もあるという。

 こうした端末と、無線ブロードバンドが組み合わされば、魅力的な活字系のサービスが提供できそうだ。PCやケータイといったある種汎用的なネットワーク端末と異なり、今後はさまざまなサービスを実現する専用端末に、後付け的に無線ネットワーク機能が付くことも増えていくのではないか。

 今回、総務省による無線ブロードバンド事業者の選定ではMVNOへのインフラ開放が条件に入っていた。広く普及して安価になった無線チップを搭載した電子書籍端末が、そうしたMVNO事業者から提供されるようになる日を心待ちにしたい。

(@IT 西村賢)

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