グーグルの真の狙いとは

Zohoに先を越されたGoogle Docsの“オフライン化”

2008/01/31

 「グーグルは将来的に、Google Docsなどのアプリケーションをオフラインでアクセスできるようにする予定だが、当社のフォーカスはそれよりもむしろ、クラウドから提供されるアプリケーションとデータにある」。

 米グーグルのシニアプロダクトマネジャー、ジョナサン・ロシェル氏は、カリフォルニア州サンタクララで開催された「WebGuild Web 2.0」カンファレンスで1月29日、「Webオフィス」の将来をテーマとしたパネルディスカッションでこう語った。

 ロシェル氏は、オフラインアクセスはグーグルがいずれ提供しなければならない機能だとして、「われわれはこの機能を提供する方針だが、現在はオフラインとオンラインの狭間にある」と付け加えた。

 今のところ、Google Docsを利用するにはインターネットに接続する必要があるが、同社ではWebアプリケーションにオフライン機能を追加するツール「Google Gears」の開発を進めている。一方、Webベースのオフィスアプリケーションのスイートを提供しているZohoなどの企業はすでに、Google Gearsを利用してオフラインアクセスを実現している。

 Zohoの主要な狙いは、オフィスアプリケーションをオンライン化することにより、これらのプロダクティビティツールにウェブの恩恵をもたらすことにあるが、同社のエバンジェリストであるラジュ・ベゲスナ氏は、「人々がオフラインアクセスも必要としているのが分かったので、Google Gearsを利用してその機能を実現した」と述べた。

 この発言に対して、オープンソースのBPM(ビジネスプロセスマネジメント)ソフトウェアのベンダであるIntalioのイスマエル・ガーリミCEOは、「ZohoがGoogle Gearsを利用してオフラインアクセスを提供しているのに対し、これらのソフトウェアを開発したグーグルがそうしていないのは非常に興味深い」と指摘した。

 「こういったことが起こり得るのが、この業界、この分野の素晴らしいところだ」とガーリミ氏は話す。

 しかしロシェル氏によると、こういったことが起きているのはグーグルにとって驚きではないという。「ほかの企業が当社のアプリケーションの上に価値を付加するのは、当初からわれわれが狙っていたことだ」。

 「われわれの顧客が広範なアプリケーションを使いたいというのは、われわれにとって何の問題もない。われわれはデータにフォーカスしている。どこからでもデータにアクセスでき、アクセスを共有できるようにしようとしているのだ。コラボレーションやアクセスという意味では、今日のユーザーは自宅で行った作業を職場に持ち込むようになっている」とロシェル氏は話す。

 同氏によると、今日出回っている各種のプロダクティビティスイートとの間にはまだギャップが存在するが、将来的にはアプリケーションとデータがクラウドから提供され、ウェブ上で利用できるようになるという。

 「この方法は仕事の効率と生産性を高める。ユーザーはアップグレードしたりアプリケーションの新バージョンにお金を払ったりする必要がない。ベンダにとってはアプリケーションの配布がずっと簡単になる」(ロシェル氏)

 しかしこれは、最も普及しているプロダクティビティスイートであるMicrosoft Officeが駄目だとか、消え去ろうとしているということを意味するわけではないという。同製品にはまだ何億人ものユーザーがいるからだ。「ウェブ上で利用できるクラウドベースのアプリケーションとしてのオフィスに対する需要がある段階に達すれば、マイクロソフトは間違いなくそれに応えるだろう」と同氏は話す。

 ベゲスナ氏によると、オンプレミス型(自社運用型)アプリケーションに対するニーズも根強いが、クラウドベースのアプリケーションの分野はまだ初期段階であり、今後数年で新たな展開が予想されるという。

 「しかしデータはローカルに保存したいとユーザーは考えている。このため、向こう1年間ほどはクラウドベースのアプリケーションでありながら、データは社内に置かれるという製品が提供される可能性が高そうだ」とベゲスナ氏は語る。

原文へのリンク

(eWEEK Peter Galli)

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