日本のグリーンIT戦略は仮想化よりもハードウェアに頼りがちシマンテック、グリーンデータセンターに関する調査結果を発表

» 2008年02月12日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 シマンテックは2月12日、グリーンデータセンターに関する調査レポートを発表した。この調査は、グリーン(地球環境に優しい)データセンターに関してグローバル企業がどのように関心があるかをまとめたもの。

 調査はシマンテックが調査会社に依頼して2007年9月に行ったもので、Global 2000に準ずる大企業と公共機関を対象に実施。800名以上のデータセンター管理者から回答を得たという。

 企業の平均従業員数は3万1250人で、年間平均予算は米国が7100万ドル、米国以外が5400万ドルだった。

 調査対象国は、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、ドイツ、インド、イタリア、日本、メキシコ、シンガポール、韓国、英国、米国の13カ国。

日本の年間IT予算は平均3800万ドル
データセンターの電気代は80万ドル

 調査によると、年間のIT予算は世界平均が年間5400万ドルなのに対して、アジア太平洋地域は4200万ドル、日本は3800万ドルと少なかった。また、各企業が持つデータセンターの概要は、床面積は世界平均が1133平方メートル、日本は1031平方メートル。平均フロアラック数は世界平均が108、日本は126。データセンターの平均電力経費は世界平均が140万ドル、日本は80万ドル。電力消費に占めるIT機器の割合は世界平均が59%、日本は49%だった。

 シマンテック プロダクトマーケティング部 リージョナルプロダクト マーケティングマネージャ 朝倉英夫氏は、「従業員数の平均が3万人超なので、かなり大きい企業が回答の中心となっている。日本はIT予算が世界平均と比較して約7割の3800万ドルと少ない。また、日本は米国と比較して電気料金が2倍なのにもかかわらず、データセンターの電力経費が世界平均の約半分の80万ドルな点は評価に値する。取り組みの詳細な内容までは分からないが、空調の温度設定など細かい取り組みの積み重ねではないだろうか」とコメントした。

日本はグリーンデータセンター導入で、世界よりも大幅な遅れ

 電力効率化の優先度では、世界平均では「極めて重要」が16%、「とても重要」が42%なのに対して、日本は「極めて重要」が8%、「とても重要」が43%となり、「極めて重要」だと考える企業が少ないことが分かった。また、グリーンITに関するポリシー策定しているかどうかについては、日本企業の49%が策定しており、策定していない企業は35%だった。

 グリーンデータセンターの知識については、世界平均では14%が「とてもよく知っている」、54%が「それなりに知っている」だったのに対して、日本は「とてもよく知っている」が0%、「それなりに知っている」が61%で世界平均よりも低い水準だった。グリーンデータセンターの導入段階では、世界平均では「検討中」が71%、「検討していない」が29%だったのに対し、日本では「検討中」が69%、「検討していない」が31%だった。この点について朝倉氏は「日本は、全体的に世界よりもグリーンデータセンター導入に関して遅れている。管理者の知識不足も見られるほか、導入の検討すらしていない点は問題だと感じている」と語った。

日本でグリーンデータセンターを導入するカギは“社会責任”

 グリーンデータセンターを構築する理由では、日本の場合「社会に対する責任感」が最も多く74%、「効率の改善」が31%と続き、「コスト削減」は23%と世界平均の44%と比較して半分程度だった。

 データセンターのサーバの消費電力計測頻度では、日本は「少なくとも月に1回以上」が57%で計測の平均間隔は3カ月で、世界平均の「少なくとも月に1回以上」の48%、同6カ月と比較して頻繁にデータセンターの電力消費を計測していることが分かった。また、データセンターの電力消費を削減するのに有効な技術では、日本の場合「電力効率の高いCPU」が最も多く31%、「仮想化/統合」が22%で、世界平均の「電力効率の高いCPU」28%、「仮想化/統合」32%と比較して、“仮想化よりもハードウェアを重視する傾向”が強いことが判明した。

朝倉氏写真 シマンテック プロダクトマーケティング部 リージョナルプロダクト マーケティングマネージャ 朝倉英夫氏

 グリーンITへの支持では、日本では「支持する」が43%なのに対し、世界平均では「支持する」が57%となり、日本ではグリーンITへの支持がまだまだ低いことが分かった。

 朝倉氏は、「日本でグリーンITを推進するカギは“社会的責任”にありそうだ。一方、欧米が重視するコスト削減効果の部分をあまり重視していない点が気掛かりだ。管理者の知識レベルや支持数を見ても、日本は世界よりもグリーンITやグリーンデータセンターに関して、まだまだ遅れていることが分かった。今回同時に実施した中国やインドの企業では、世論や政府施策としてはまだまだグリーンITへの理解度は低いと考えられるが、コスト面などを考慮して積極的に取り組んでいる企業が多かった。恐らく、日本で仮想化技術の導入の意識が低いのは、まだ慎重になっているからではないか。米国ではその点をクリアにし、2007年に爆発的に仮想化が普及した。日本でもマイクロソフトが本格参入する2008年〜2009年にかけて仮想化技術とグリーンITが普及するのではないか」とコメントした。

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