3月12日に大幅リニューアル

Haruが“和製Twitter”から脱皮、ミニブログは普及するか

2008/03/12

 「Haruは和製Twitterと呼ばれることもあったが、新バージョンは違う」。そう語るのはミニブログサービス「Haru」(はる:http://haru.fm)を運営するアセントネットワークスの朴世鎔代表取締役社長だ。朴氏によれば、ミニブログと呼ばれるサービスには大きく分けて2種類ある。

 1つはTwitterのようにメッセージが次々と流れ去るフロー型。もう1つはTumblrに代表されるような蓄積型。TumblrはTwitterほどに知られていないが、一部のユーザーで人気が急上昇しているミニブログサービスだ。Tumblrユーザーが投稿したメッセージなどのエントリは、自分のブログページのような体裁で蓄積されていく。ユーザーは、Webブラウジング中につぶやいたひと言や、画像、Webページの一部などを手軽に引用して、それに対してコメントするという手軽さで、エントリを蓄積していける。また、ほかのユーザーが作成したブログエントリを、丸ごと引用して新たなエントリとしてしまう“リブログ”という文化も芽生えつつある。

 蓄積型のミニブログは、文字通りライトなブログツールとして利用されている面があるが、フロー型のミニブログは共時的な体験共有ツールという面が強い。

tumblr.png ミニブログサービス「Tumblr」では、テキスト、写真、引用、リンク、チャット、音声、映像などを、ポストしていくことができ、それがそのままブログとなる。Twitterと同じミニブログと呼ばれるジャンルの中でも蓄積型に分類できる

ブログとSNSの間を埋めるミニブログ

 3月12日にリニューアルしたHaruは「フロー型のいいところと、蓄積型のいいところを取ったサービス」(朴氏)という。「Haru Season 2」と名付けられた新バージョンは、ブログやSNSからミニブログに流れてくるユーザー層の取り込みを狙う。

haru01.png

 ブログの欠点は継続が難しいことだ。週に1回以上書かない非アクティブなユーザーはブログをやめてしまうことが多い。一方、気軽なメッセージが書けるSNSはコメントや足跡機能が心理的負担と感じるユーザーが少なくない。

 ブログが自分の思考やできごとをまとまった文章にするのに対して、ミニブログは、そのときどきの短い言葉や写真を連ねていく“ライフログ”の系譜に属するサービスだ。敷居ははるかに低い。

 Haru Season 2では、あらかじめ用意された「myday.fm」、「mystory.fm」の2つのドメインを使って、ユーザー固有のブログのURLを設定できる機能が追加された。開設したブログは、通常のブログ同様にデザインの変更ができる。

 つまり、Twitterなどと異なり、メッセージは書き捨てではなく蓄積したエントリとして自分のブログのように公開できるわけだ。蓄積したエントリの一部を後から削除したり、編集したりできるのもTwitterとの大きな違いだ。

haru03.png Haruを使って投稿メッセージをブログとして公開した例

 TumblrやHaruのような蓄積型ミニブログとTwitterの、もう1つの大きな違いは、Twitterがテキストメッセージだけにフォーカスしているのに対して、TumblrやHaruでは文字装飾や画像が扱いやすいという点だ。Haruには画像のほかにも、GoogleマップやGoogleカレンダーと連動してイベント告知が行える「イベント」という投稿種別もある。

 Haru Season 2では、こうした投稿種別にさらにビデオブロギング機能が追加。約30秒の動画をアップロードできるようになった。ローカルPCに保存された動画ではなく、Webカメラを使って直接アップロードできるのが特徴で、ビデオ版Twitterといった使い方が可能になる。

haru02.png Haru Season 2ではビデオブロギング機能が追加。約30秒の動画をアップロードできるようになった

 Haruのポジションがユニークなのは、SNS的な機能を積極的に取り入れていることだ。Tumblrでは個々のユーザーが他のユーザーと交流する仕組みをほとんど用意しておらず、Tumblrコミュニティと呼ぶべきものは育っていない。

 これに対してHaruではSNS的な機能や、ユーザー同士の交流を促す仕組みが多く用意されている。

 1つは投稿エントリの公開範囲を指定できる機能だ。あまり細かなグルーピングを行うような機能は提供されていないものの、投稿の公開範囲を「全体」「自分を友だちにした人」から選ぶことができる。今後の機能拡張では自分にしか見えない投稿も可能にする。TwitterやTumblrでは投稿したメッセージはすべてインターネット全体から閲覧可能という意味でブログ的だが、Haruでは「自分を友だちにした人」を選択した場合にはSNS的になる。「自分だけ」とすれば、今後は備忘録的な使い方も出てくるかもしれない。

 各投稿に対してコメントが付けられるのもユニークな機能だ。例えば自分が貼り付けた写真に対して、ほかのユーザーからコメントが付くことがある。mixiのマイページのように、コメントが付けられたことはユーザーのマイページで通知され、一連の会話が生まれるという流れだ。

 また、Twitterではユーザーが発明して広まった「@name」とメッセージを書き出す@記法を使うことで、特定の誰かにメッセージを送っていることを示す文化があるが、Haruでは「#name#」のように指定することで、特定の誰かだけにメッセージを送ることができる。これは、そうした作法があるというだけでなく実際の機能として実装されている。

 Haruでは「[日記][食事][カレー]」などとブラケットで囲んだ文字列を付け加えることで、投稿メッセージにタグを付ける機能がある。タグは、Haru全体のトップページでタグクラウドとして表示されるなど、テーマ別に投稿をまとめる機能となる。タグは自分の分類用で使うこともできるが、タグを生かしたコミュニティがHaru内に生まれている。例えば[Haruカメラ部]というタグを付けて、互いに写真を見せ合うというコミュニティがある。こうした横のつながりをHaruでは「部室」と呼び、興味・関心を同じくするユーザーたちが、さまざまなコミュニケーションを行っている。注目すべきは、「Haru夜更かし部」「Haru宅飲み部」など目的がハッキリしないコミュニティの存在だ。こうしたコミュニティではリアルタイム性の高い1行だけの短いメッセージの交流が活発に行われている。これはmixiやTwitterでは見られないコミュニティのあり方で、むしろ1990年代のパソコン通信文化に近い。

 Haru Season 2で新たに加わった投稿種別「これどう?」も、ユーザー同士の交流を促す仕組みだ。これは、自分が気になっている商品や事柄を投稿することで、ほかのユーザーからコメントや5段階評価の星マークをもらえる評価機能だ。

“ミニブログ”はブログやSNSと並ぶジャンルを形成するか

 Haruは2007年5月にベータ版を公開。国内でミニブログサービス「もごもご」(ドラゴンフィールド)、「Timelog」(ファインアーク)などが立ち上がったのと同時期だ。今では国内だけでざっと20程度のミニブログサービスが立ち上がっている。

 Twitterが先駆けとなって急速に話題となったミニブログブームだが、獲得ユーザー数という面では苦戦している。Twitterはワールドワイドで50万超と言われるユーザーを抱えるが、日本のミニブログサービスは、いずれもユーザー数は1万人程度か、それ以下と見られている。1000万ユーザーを超えたSNS最大手のmixiと比較すると、まだ非常に小さな数だ。

 朴氏は「ミニブログサービス全体が盛り上がればいい」と期待を口にする。「SNSのような一人勝ちと違い、ミニブログサービスはブログのように多数のホスティングサービスが共存することになるのではないか」という読みがあるからだ。

 先行サービスを追いかける側ということもあり、Haruはきわめてオープンな戦略を採る。例えば、Haruへの投稿を、そのままTwitterにも自動投稿する機能や、OpenID、グーグルID、ヤフーIDなどの外部IDでのログイン機能、メッセンジャーからの投稿機能などがそれだ。「蓄積型ミニブログなら投稿場所はどこでもいい」(朴氏)。すでに30〜40%の投稿はケータイからになっているという。

 APIについても同様だ。標準化こそされていないものの、事実上の標準としてHaruはTwitter APIに似せて作られている。Twitter向けに書かれたアプリケーションであれば、ほとんど手直しなしにHaruに対応させることもができるという。現在、ユーザーの手によって書かれた約10種類のHaru対応アプリケーションが存在する。

 “ブログ”という言葉は特定のサービスを指す言葉ではない。コメントやトラックバックはサービス間の垣根を越えて緩やかにつながっている。そうした世界と同様に、Haruのように外部アカウントの取り込みや異なるサービス間でのデータ連携、互換性の高いAPIの採用といったオープン戦略を採るミニブログサービスが増えてくれば、ブログ同様に“ミニブログ”というジャンルが確立されていく可能性がある。メッセンジャーとも掲示板ともSNSともブログとも異なる位相に、果たして潜在ユーザーはどれほどいるか。Haruが切り開くミニブログの新しい世界が、今後どこまで定着していくか注目される。

(@IT 西村賢)

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