世界初、携帯電話でIP電話提供へ

「ケータイでも050番号のIP電話が一般化する」、日本通信

2008/04/21

 「ケータイでも今後は050番号のIP電話が一般化する」。日本通信は4月21日、世界初の携帯IP電話サービスを第2四半期をめどに開始すると発表した。NTTドコモとのレイヤ2、3による相互接続実現の見通しが立ったことを受けての発表となる。

jci01.jpg 日本通信 常務取締役CFO 福田尚久氏。手にしているのは携帯電話の通信機能を搭載したカメラ端末(国内未発売)

 都内で開いた記者会見の席で冒頭の発言を行った同社常務取締役CFOの福田尚久氏は、こう語る。「固定網ではIP電話は一般化した。携帯電話を中心とした移動体通信の世界では普及していないが、これは技術的問題ではない。音声サービスはキャリアにとって主たる収入源で、IP電話サービスの提供によって売上が大幅に減るリスクがあるから、日本だけでなく世界のほかのキャリアでも携帯IP電話は提供していない。しかし、固定電話で起こったのと同じことがケータイでも起こる。われわれは既存キャリアとの相互接続によってケータイ向けのIP電話サービスを提供する」(福田氏)。

 福田氏は2つの変化が携帯IP電話のニーズを喚起するだろうという。

 1つは端末販売の健全化により、端末の多様化が予想されること。現在、行き過ぎた販売奨励金制度の是正措置として、消費者の目に触れるショップ店頭やチラシなどで端末価格が正しく表示される機会が増えている。従来、1円だった端末が4万円、5万円と表示されるようになっている。かつて日本メーカーの高機能端末が1円で売られている横で、ノキアなど海外の高機能端末が数万円の価格となるなど海外メーカーにとって日本市場は参入が難しかった。「iPhoneは日本円で言えば4万円。それでも売れるのは隣に3万円の端末が売られているからだ」(福田氏)。

 もう1つはネットワークの開放。通信インフラとサービスの切り分けにより、垂直統合型の産業構造の転換が始まっている。これまで、番号ポータビリティや販売奨励金制度や極端な長期契約割引の見直し、相互接続による通信設備開放などにより徐々に起こってきた。「SIMロックについても排除の検討が進んでおり、われわれは時間の問題だと考えている」(福田氏)。

 海外メーカーの参入が進むと同時にデータ通信を中心にしたiPhoneやAndroid端末のようなコンピューターメーカー系の端末が出てくれば、IP電話へのニーズが高まるだろうという。高速無線ブロードバンドサービスの普及も視野にある。「WiMAXのような無線通信端末が出てくれば、それはIPだけになる。そうなればIP電話サービスで音声通話を提供するようになるだろう。これからの流れはオールIPだ」(福田氏)。

 同一キャリア同士の通話などに限られるものの、すでに携帯電話でも安価な通話サービスが実現されている。こうした現在、IP電話サービスに魅力はあるのかとの問いに対して福田氏は、こう答える。「日本ではIP電話イコール安い電話という認識しかないが、IP電話の魅力はさまざまな通信が統合できること。例えば固定電話に着信した留守番電話のボイスメッセージをケータイで聞くような例がある。あるいは電話会議。アドレス帳から5人選んですぐにつながるようなサービスだ。こういうサービスを法人ユーザーは望んでいる。“ユニファイド・コミュニケーション”ということで、例えばマイクロソフトやシスコがさまざまなサービスや製品を開発している。そこに大きな勝機があると思っている方々が多くいる。それを可能にするインフラを実現してほしいというリクエストが、われわれのIP電話サービス開発のドライブになっていた」(福田氏)。

 ケータイ向けの050番号の割り当ては前例がない。同社は総務省が規定するIP電話に必要な3つのレベルの品質基準のうち最上位を除くレベルを満たすことが可能とし、会見の席上では音声通話のデモンストレーションを行った。Windows MobileやSymbian OSなど仕様がオープンなOS上では着信機能も実現もでき、「着信については機種によって一部使えるというサービス提供になる」(福田氏)もようだ。

「失われた3年」からMVNOとしてグローバルに離陸

 日本通信は上場3年目を迎える。MVNOとしてデータ通信サービスなどを手がけてきたが、売り上げ高はPHSによるデータ通信市場の縮小などで減少傾向にある。2008年3月期の連結売上高は34億1700万円で前年比14.5%の減収となる見込み。同社代表取締役社長の三田聖二氏は、こうした推移を「失われた3年」と指摘する。日本通信はMVNO事業でNTTドコモとの相互接続条件でなかなか折り合いが付かず、総務大臣による裁定を申請するなど事業化が遅れてきた経緯があるためだ。三田社長は「当初は企業同士の交渉で(通信インフラ)を仕入れられるという、ある意味ナイーブな発想があったかもしれない」と指摘する。iモード、レイヤ2、3による相互接続がすべて実現できれば、3年後には現在の10倍以上となる400億円の売り上げ達成も可能だという。

jci02.jpg 上場以来の3年を「失われた3年」だったと指摘する日本通信 代表取締役社長 三田聖二氏

 日本での本格的MVNO事業立ち上げが手間取った一方、欧米の事業は順調だという。米国のUSセルラーとの相互接続の事例では「100%企業同士、市場での交渉だけで話が済んだ。最初の話し合いから6カ月でサービスインできた。また現在、欧州でもあるキャリアと交渉中だが民間企業同士のWin-Winの説明で話が順調に進んでいる。日本のように通信事業者の義務という話を持ち出すことはない」(三田社長)。現在、日米で合計4個所のデータセンターを構築済みだが、今後は欧州にも同様のデータセンターの構築を予定している。同社は、これまでのキャリアとの相互接続交渉のノウハウを生かして、3年後に日米欧亜で15億人をカバーする、グローバルモバイルネットワーク事業者を目指すという。

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(@IT 西村賢)

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