グリーンIT国際団体が相次ぎ日本での活動を発表グリーン・グリッドとクライメート・セイバーズ

» 2008年05月28日 00時00分 公開
[内野宏信、河内典子,@IT]

 データセンターの省エネ化に取り組む世界規模のコンソーシアム、グリーン・グリッドは5月28日、「データ調査委員会」と「コミュニケーション委員会」を日本で発足させると発表した。両委員会により、データセンターの省エネ化に関する情報を収集・分析するともに、データセンターの省エネ化、グリーンITに向けた活動の普及、啓蒙を狙う。また同日、産学官が連携するグリーンIT推進協議会とMOU(覚書)を締結。日本国内での活動推進に弾みをつける。

 グリーン・グリッドは、マイクロソフト、IBM、APCなど11社のボードメンバーで設立。ベンダ、ユーザー企業などグローバルで180社以上の会員企業を持ち、国内でも伊藤忠テクノソリューションズ、NTTデータ、富士通など、すでに23社が日本委員会に参加している。

 同コンソーシアムの目標は「省エネ化に向けたユーザー視点での有益なモデル・メトリクスの定義付け」「データセンターの効率改善に必要なスタンダード、効率性の測定方法、ベストプラクティスの策定および技術開発」「省エネルギー基準、省エネ実現のためのプロセス、測定方法、各種省エネ技術の適用促進」──の3つ。

グリーン・グリッド代表のジョン・タッシーロ氏

 グリーン・グリッド日本委員会のデータ調査委員会は、日本国内の会員企業・団体の情報を収集、分析し、グリーン・グリッド本体の技術委員会に報告。コミュニケーション委員会は、技術委員会の調査結果を日本の会員企業・団体などに提供する役割を担う。データ調査委員会の活動はこれからだが、コミュニケーション委員会の代表にはAPCジャパン マーケティング本部ディレクターの坂内美子氏が着任し、今後、積極的に活動を展開していくという。

 グリーン・グリッド代表で、APCのバイスプレジデントであるジョン・タッシーロ(John Tuccilo)氏は、「省エネに対する関心の高まりを受け、参加企業数は大幅に増え続けている。会員企業には省エネ化に向けたオープンなディスカッション、コラボレーションの機会を多数提供できる」とアピールした。

 また、データセンターのエネルギー消費要因として、施設構造、電力配分、冷却構造、サーバ台数などを挙げ、「エネルギー効率をいかに高めるか、という観点でデータセンターを見る場合、その構成要素1つ1つを単独で見るのではなく、包括的に捉えて効率化を考慮すべき」と強調した。

 例えばIT機器に30%、冷却機器に45%、照明に2%というように、各データセンターは、それぞれ固有の電力消費配分となっている。「まずはそうした現状を把握し、どうすれば効率化できるのか、自社のセンターに最適な方法が採れるよう、構成要素全体のバランスを考えるべきだ」という。

 そのポイントして、データセンターの現状を把握するための指標であるDCiE(Data Center infrastructure Efficiency)と、PUE(Power Usage Effectiveness)を紹介。前者はストレージ、サーバなど、データセンターにおける「IT機器の消費電力」を「センターの総消費電力」で割った値。後者はその逆で「センターの総消費電力」を「IT機器の消費電力」で割った値となる。「こうした指標によって、センターのエネルギー効率を数値で明確に把握すれば、確実に改善が狙える」。

 タッシーロ氏は「省エネ、省コストの実現に向けて、構成部品の改良、サーバやストレージ、ネットワーク技術の改良、仮想化技術の活用など、考慮すべきことはさまざまある。また、単に省エネを図るのではなく、省電力化とビジネス効率を両立させることが何より重要。その実現を狙うためには、世界規模でのユーザーの協力が必要だ」と力説した。日本に委員会を発足したことについて、「限られたリソースの有効活用に長じている日本企業の技術を、省エネ化という共通目標のもと、世界中に提供してほしい」と語った。

グリーン・グリッド、グリーンIT推進協議会の幹部

クライメート・セイバーズも日本で活動へ

 インテル、グーグルなどが主導する「クライメート・セイバーズ・コンピューティング・イニシアチブ」も5月28日、グリーンIT推進協議会と協力して、日本における気候変動対策を行うと発表した。両団体は情報交換や情報提供、イベント開催で協力する。

 データセンター施設全体の省電力を目的とするグリーン・グリッドに対して、クライメート・セイバーズは「新規PC、サーバのエネルギー効率の向上」「電源管理機能の利用促進」が目的で、2010年までに2007年と比較してコンピュータの消費電力を50%削減することを目指している。代表のローリー・ワイグル氏(米インテル)は「グリーングリッドとは補完的な関係」と説明している。

 クライメート・セイバーズにはグーグル、インテルのほかに、マイクロソフトやヒューレット・パッカード、デルなどが参加。日本企業ではNECと富士通、日立製作所がスポンサーとして加わっているほか、オービックビジネスコンサルタント、クオリティがアソシエイトとして参加する。

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