レッドハットがKVMベースの仮想化製品を発表ハードウェア組み込み向けも視野

» 2008年06月19日 00時00分 公開
[西村賢,@IT]

 米レッドハットは6月18日、米国ボストンで開催中の年次イベント「Red Hat Summit 2008」で記者会見を開き、仮想化関連ソフトウェア製品とID管理ソフトウェア製品を発表した。仮想化製品は、昨年スタートしたオープンソースプロジェクトの「oVirt」(オーバート)の成果物をレッドハットとして製品化するもので、Linuxカーネルに組み込まれたハイパーバイザのKVM「Embedded Linux Hypervisor」と、Webベースの管理ツール「Virtual Infrastructure Management」の2つを提供する。

 Embedded Linux Hypervisorは、LinuxやWindowsをホストするための仮想化インフラで、40MBとフットプリントが小さく、サーバやアプライアンス製品への組み込みもできる。KVMをベースとしており、Linux同様のパフォーマンスやセキュリティ機能、幅広いハードウェアサポートが期待できるという。

米レッドハットCTOのブライアン・スティーブンス(Brian Stevens)氏

 KVMプロジェクトはXenプロジェクトから派生したもので、開発メンバーには重複も多い。「KVMはXenからの自然な進化」(米レッドハットCTO ブライアン・スティーブンス)で、OSとハイパーバイザを別々に用意してバージョンの整合性検証が必要なXenと異なり、OSに統合された形でハイパーバイザを提供できるのがKVMのメリット。オープンソースのXenプロジェクトが提供するハイパーバイザを利用した商用製品が複数ベンダから提供されているのと異なり、KVMはリーナス・トーバルスをはじめとするLinuxカーネル開発者が管理するカーネルツリーに統合・管理されている。KVMはライブマイグレーション、クラスタリングなどの機能も提供する「フル機能を備えたハイパーバイザ」(スティーブンス氏)。

 同社はこれまでXenのサポートも提供してきたが、今後はKVMとXenの両方ともにサポートしていくという。

 Virtual Infrastructure Managementは、仮想化関連APIを提供するlibvirtに対応したWebベースの管理ツール。libvirtがサポートするXen、KVMなどのハイパーバイザを使った仮想環境を管理できる。数百から数千のゲストOS集中管理することができる。ライフサイクル管理、リソース管理、ポリシー設定、監査、モニタリングなどが行える。libvirtはLinux上の仮想化環境でデファクトスタンダードのライブラリとなっており、ハイパーバイザ、管理ツールともに他製品への移行が容易になると期待できる。

oVirtの管理ツール画面。libvertのAPIに対応しており、XenやKVMなどのハイパーバイザーを対象に、リソース管理やゲストOSのライフサイクル管理ができる

 2008年第4四半期に正式版を提供予定のID管理製品「Red Hat IPA」も、オープンソースプロジェクトで開発中のものをレッドハットとして製品化するものだ。FreeIPAはFedoraに対してセキュリティ管理のインフラを提供するソフトウェア群の開発を行っている。Fedora Directory Server(LDAP)、MIT Kerberos、NTP、DNSといったサーバと、Webベースまたはコマンドラインベースの管理ツールを提供する。現在のところ、ID管理機能だけをサポートしていて、今後ポリシー設定や監査設定のサポートを計画している。

 Red Hat IPAは必ずしも仮想化環境を対象としたものではないが、仮想環境に適用することで、サーバ統合時に必要となるシングルサイオンや、ポリシーベースの運用を可能にする。IPAはIdentity、Policy、Auditの頭文字で、スティーブンス氏は、これらの機能は「これまでオープンソースソリューションに欠けていた大きな穴」と話す。

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