求む「デザインの夫」

グーグル、「App Engine」でデザイナーと開発者の連携狙う

2008/06/23

 マイクロソフトとアドビは開発者とデザイナー間のワークフロー分野で激しい戦いを演じているようだが、グーグルでは「Google App Engine」を通じたデザイナーと開発者の連携に照準を絞って同分野に進出しようとしている。

 マイクロソフトが自社のデザインツールスイートであるExpressionと開発ツールのVisual Studioの連携を宣伝する一方で、アドビはCreative SuiteとFlexツールに加え、近く登場予定の「Thermo」技術により、デザイナーと開発者の共同作業を支援しようとしている。

 これに対し、先ごろ開催された「Google I/O」デベロッパーカンファレンスでは、グーグル UXチームのメンバーがデザイナーと開発者との連携を改善する必要性について論じ、「Google App Engineが連携の場を提供する」と語った。Google App Engineは、開発者がグーグルのインフラ上でWebアプリケーションを構築、運用することを可能にする。

 両分野の緊密な連携の必要性を認識するGoogle UXチームの開発者、リンゼー・サイモン氏は「デザインで頼りになる夫のような存在がほしい」と述べた。サイモン氏が引用したのは、Django PythonベースのWeb開発フレームワークの共同作成者であるサイモン・ウィルソン氏の「私にはデザインで夫のような存在が必要だ」という言葉だという。

 「これはとても面白いと思った。私は彼を開発者として尊敬しているが、彼は一緒に仕事をする開発者やプログラマーではなく、デザイナーを求めていると言っているのだ」とサイモン氏は話す。

 さらに同氏は「私はグーグルで仕事をすることで、ジョン(スキジェル氏:Google UXチームのデザイナー)のような人々に会えるという贅沢に恵まれた。私は優秀なデザイナーとも一緒に仕事をしたいのだ。私がグーグルで何かのプロジェクトに取り組むことになれば、ジョンと一緒に仕事をするつもりだ。デザイン面での手助けが必要だからだ。私はその分野の訓練を受けていない」と語った。

 「では、あなたがデザイナーを探しているとしたら、どんな人を求めるだろうか?」とサイモン氏は聴衆に問い掛けた。聴衆は約60対40の比率で開発者が多数を占めていた。

 この質問に答えるためにサイモン氏は1枚のスライドを見せた。これは新聞の求人広告もしくは交際相手募集広告のような内容で、「求む、デザイナー。当方プログラマー」というタイトルが付けられていた。

 広告の主な文面は「気取らない性格で闘志があり、幅広い能力を持ったインタラクション/ビジュアルデザイナー募集中」という内容だった。応募資格は「批判されてもカッとしないこと。バックエンド/フロントエンドのコードに関する熱弁に喜んで耳を傾けること。Photoshopカンフーの使い手であること。コードを怖がらないこと」となっていた。

 サイモン氏は「泣き言を言うようなデザイナーはいらない。求めているのは一緒に仕事ができる人である。Photoshopファイルを手渡すだけで、実装はすべてあなた任せというような人ではない。プロジェクトで共同で作業できる人を求めているのだ」と言い添えた。

 さらに「アンディー・ウォーホルのようなタイプのデザイナーを求めてはいない。求めているのは、闘志があって幅広い能力を持ち、コードを見ても怖がらないような人だ」と同氏は語る。

 「今日のアプリケーションでは、ビジュアルデザインおよびインタラクションデザインをその技術的実装作業から分離しようとすると、効果的なデザインを実現するのは難しい。それは生産的なワークフローではない」とサイモン氏は考えているという。「開発者は最初の段階からデザイナーと共同で作業する必要がある」(同氏)

 一方、「Engaging User Experiences with Google App Engine」(Google App Engineで魅力的なユーザーエクスペリエンスを実現する)と題された5月28日のプレゼンテーションでサイモン氏とともにステージに立ったジョン・スキジェル氏は、開発者に対して何を望んでいるかを示した同氏の広告を示した。

 「プログラマー募集、当方デザイナー」と題されたスキジェル氏の広告の文面は「正気で顧客重視の優秀なプログラマーを求む。普通のコミュニケーションスキルがあること」となっていた。

 「デザイナー側としては、正気で顧客重視のプログラマーを求めている。プログラマーは冷静でなければならない」とスキジェル氏は述べた。

 スキジェル氏がプログラマーに求める資質とは「激怒せずに人の意見を聞くこと。美学に対する理解があること。フロントエンドとバックエンドの技術を深く広く理解していること。臆することなく自分の考えを視覚的に表現できること」などだ。

 「これはコラボレーションだ。デザインに関する決定権はすべてデザイナーにあると思う必要はない」(同氏)

 一方、サイモン氏は「たいていのデザイナーはCSS(Cascading Style Sheets)を得意としており、開発者よりも上手なこともある。開発者はこの部分でデザイナーに手助けしてもらえる」と語った。

 サイモン氏によると、Google App Engineはワークフローをサポートし、「優れたコラボレーション環境を提供する」という。スキジェル氏は「ローカルテストと配備が容易で一貫性があり、複雑なところがない。App Engine Launcherは、Mac OS Xのような使い勝手の良さを開発者に提供し、SDK(ソフトウェア開発キット)の自動更新機能は開発環境を常に最新状態に維持する」と述べた。

 サイモン氏は「私の職場にいるデザイナーは全員Macユーザーで、彼らはコマンドライン方式を好むようなタイプではない。Google App Engineでは、プログラマーとデザイナーが同じ環境で作業できるというメリットがある」と話す。

 スキジェル氏によると、デザインフローなどはデザイナーとデベロッパーが共同で作業しなければならない重要な分野だという。これは反復的な作業であり、形式張らずに手早く行わなければならないこともあるという。「例えば、デザインを文書化する際に修正個所を取り込むには、デジタルカメラや携帯電話搭載カメラを利用すべきだ」(同氏)

 「1人で考えるよりも2人で考える方がいい。私自身も、いきなりプログラミングに取り掛かりがちだが、それは必ずしも最善の方法ではない。誰かと一緒に徹底的に議論する方がずっと良い」とサイモン氏は語る。

 一方、スキジェル氏によると、デザインとコーディングは並行して進めるべきだという。デザイナーがAdobe PhotoshopやFireworksで作業をする一方で、開発者はハンドラを記述する、といった具合だ。

 「私がモックアップやロゴなどのパーツのデザインに取り掛かる一方で、リンゼーはPythonコードを書き始めることができなければならない」(同氏)

原文へのリンク

(eWEEK Darryl K. Taft)

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