標準工期より30%以上短いとデスマーチの危険、JUAS指摘ソフトウェアメトリックス調査2008

» 2008年06月26日 00時00分 公開
[垣内郁栄@IT]

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は6月26日、システム開発の現状についてユーザー企業に尋ねる「ソフトウェアメトリックス調査2008」の結果を発表した。93社の341プロジェクトについてアンケート調査を行って、「標準の開発工期は投入人月の立方根の2.4倍である」などの指標を示した。JUASの専務理事 細川泰秀氏は「この世界は計数管理を持ち込まないとうまくいかない」と話し、開発の現場でこれらの指標が使われることに期待を示した。

 調査結果は昨年度の調査(注1)と似通っている。調査したプロジェクトから導き出した全体工数と全体工期の関係も同じで、「標準の開発工期は投入人月の立方根の2.4倍」とした。つまり、1000人月のプロジェクトの場合では、24カ月の工期を設定するのが標準的ということになる。新規データを加えながら、昨年度調査と同じ結果が出ていることから、この係数の信頼が高まったともいえる。細川氏は「100人月以上の開発で適用できる」と説明し、「この式のよいところは会議の場でもすぐに暗算ができること」と話した。

プロジェクトの全体工数の3乗根と全体工期をグラフ化し、回帰直線を引いて標準工期を求めた(JUAS資料から)

 標準工期を求めるこの係数をもとに、JUASは、特定のプロジェクトの工期が標準工期と比べてどの程度短いかを表わす工期短縮率を示した。実工期を標準工期で割った値を1から引いた数値が工期短縮率。短工期と長工期がそれぞれ全体の25%程度になるように計算すると、短工期の工期短縮率は0.24以上、長工期は−0.4以下と求めることができた。

 JUASでは標準工期と工期短縮率を使ってプロジェクトの工期をあらかじめ予想すれば、短工期でも失敗を避けることができるとしている。そのために過去の短工期プロジェクトで行った対応の事例を集めて、社内でノウハウとして蓄積することを推奨する。

 例えば標準工期と比べて、25%の工期短縮が予想される開発では、WBS (Work Breakdown Structure)による総合計画に加えて、週間での管理など日程管理を徹底させることを提言。技術やコンポーネントの標準化を図り、一括外注も検討するとしている。さらに25%以上の工期短縮をする場合では、日別の工程管理に加えて、「ベテランプロジェクト・マネジャー(PM)による采配と、全社挙げての協力および監視」が必要としている。ただ、30%以上短い工期は「無謀」としてデスマーチ化の懸念を示している。

PMの能力とバグ数に相関関係

 完成したシステムが納入され、安定稼働に入るまでに発見されるバグについては調査から「発注金額500万円に月1件以下」という指標が示された。JUASはこの指標を意識し、ユーザー、ベンダとも下回るように努力する必要があるとしている。バグについてはPMの力量に大きく左右されることも明らかになった。特にベンダ側PMの能力、経験の影響が大きく、「プロジェクト管理の経験なし」のPMが指揮したプロジェクトの欠陥率(工数当たりのバグの数)が最も高かった。逆に「多数の中・大規模プロジェクトの管理を経験」したPMが担当したプロジェクトの欠陥率は最も低かった。

PMの能力と欠陥率の関係

 ユーザー側のPMと欠陥率の相関関係はあまり見られなかったが、納期の遅延率については関係があることが見て取れた。業務に精通しているPMが担当しているほど、遅延度は低く、業務にいて経験や知識がないPMが指揮するプロジェクトでは遅延度が高かった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ