日立とNTTファシリティーズ、省電力データセンター構築で協業データセンターのCO2排出量を年間約7万トン削減

» 2008年07月02日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 日立製作所とNTTファシリティーズは7月2日、省電力データセンター構築に向けて協業すると発表した。両社の技術・ノウハウを組み合わせて、サーバと空調などIT機器とファシリティが密に連携するデータセンターの省電力運用管理基盤システムを開発し、2009年3月の提供開始を目指すという。

 NTTファシリティーズの取締役 データセンター環境構築本部 本部長の小泉泰之氏は、「これまでデータセンターでは、IT機器とファシリティをそれぞれ個別に運用管理し、最適化を図ってきた。だがIT機器と連携すればさらなる省力化が図れる」と、協業の狙いを解説した。

 協業では、日立のサーバ、ストレージ、ネットワークと、NTTファシリティーズの空調、電源、センサーの稼働状況を、日立の統合システム運用管理製品「JP1」で監視し、状況に応じて連携制御する「省電力運用管理基盤システム」を共同開発する。また「両社製品を扱うベンダにもシステムを利用してもらえるよう、2008年度中に、IT機器とファシリティを連携して運用・管理するためのインターフェイス仕様の策定、公開を行う」(小泉氏)という。

写真 NTTファシリティーズの取締役 データセンター環境構築本部 本部長の小泉泰之氏

 省電力運用管理基盤システムは、両社グループのデータセンターに適用するほか、一般のデータセンター事業者、企業のIT部門などにもソリューションとして提供する。日立製作所 理事 情報・通信グループ CSOの北野昌宏氏は、「この取り組みにより、年間約7万トンのCO2排出量を削減できると見込んでいる。この数値は電力に換算すると約1億2000万kWh、約3万4000世帯の年間消費電力に相当する」と述べた。

写真 日立製作所 理事 情報・通信グループ CSOの北野昌宏氏

 今後は、まず日立の統合プラットフォーム製品である「BladeSymphony」と、NTTファシリティーズの空調機「FMACS-V」、ラック型空調機「FTASCL」の稼働状況を監視、統合制御するための仕組みを構築する。その際、「状態の見える化」「静的な最適化」「動的な最適化」という3つのステップを踏んでシステムを構築するという。 

 具体的には、IT機器のワークロードと、IT機器と空調の消費電力を単一の画面で管理可能とするなど「状態の見える化」を図り、そのうえで静的、動的な連携制御を実現する。例えば5台のサーバのうち1台に負荷が集中し、1台だけ高温になっている場合、従来はその1台の温度を引き下げるためにサーバルーム全体を過剰に低温にする必要があった。しかし今後はサーバの負荷を分散させて、5台とも一定の温度に保つことで適正な範囲内で温度を設定し省電力化する、といった静的な連携制御を自動的に行える。

 動的な最適化としては、サーバの片寄せとそれに連動した空調の運転が挙げられる。例えばサーバルームが3つに分かれている場合、従来は各室のサーバ、空調を均一に稼働させていたが、今後は1室のサーバに負荷を片寄せし、他の部屋のサーバ、空調の電源を切る、といったことが実現できる。

写真 「JP1」でサーバや空調の状況を監視し、設定した運用ポリシーに基づいて自動制御する

 「これまで、サーバと空調を監視し、状況を判断し、適切な対処を行うのは人間の役目だった。しかし省電力運用管理基盤システムでは、最初に設定する運用ポリシーに基づき、こうした監視、制御を自動的に行うことで、効率的にデータセンターの全体最適化を図れる」(小泉氏)という。

 今後はストレージ、ネットワーク、電源、センサーなど、省電力運用管理基盤システムを適用するIT機器、ファシリティを順次拡大する予定。両社では「共同開発の成果を一般のデータセンターにも提供することで、国内におけるグリーンITの取り組みに積極的に貢献していきたい」とコメントしている。

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