成長するソフトベンダは「戦略と組織がシンプル」売り上げ伸ばすSAS社長が語る

» 2008年07月30日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 SAS Institute Japanの代表取締役社長 吉田仁志氏は7月30日の会見で、同社の2007年度のビジネスが前年度と比較して新規の売り上げが1.5倍、新規顧客数が1.8倍になったことを明らかにした。製品を押し出す戦略から顧客の課題を解決するソリューション重視に戦略を転換したことが功を奏した。

 SASのグローバルの売り上げの中で、日本を含むアジア・パシフィック地域の比率は11%を占める。この比率は近年上昇しているといい、「特に日本の急成長が貢献している」と吉田氏は説明する。日本では金融、通信、医薬の各業種がSASの主要な顧客という

 吉田氏は「ビジネス・インテリジェンス(BI)のツール売りは限界に来ている」として「ベンダは企業の経営課題にもっと近づかないといけない」と強調する。SASは、規制や市場環境の変化が激しい業種向けにタイムリーにソリューションを開発し、BIプラットフォームと共に提供してきた。

SAS Institute Japanの代表取締役社長 吉田仁志氏

 金融業向けでは犯罪収益移転防止法の改正に合わせて「SAS Anti-Money Laundering」を提供し、国内でも数社の銀行顧客を獲得した。また、企業の環境意識の高まりを受け、「SAS Sustainability Management」を発表するなど、SAS製品が持つデータの分析能力を効果的に生かせるソリューションを開発、提供してきた。

 ソリューション重視というSASの戦略を推進するために、社内の営業、プリセールス、コンサルタントの機能と役割を明確にし、「全社員が1つの目標に向かっていけるようにした」と吉田氏。お互いが連携、協力する「成功が成功を呼ぶサイクル」の構築を目指した。吉田氏は「戦略と組織をシンプルにした」ことを成功要因に挙げた。

 SASはグローバルで売り上げの25%、年間600億円程度を研究開発に投じていて、新しいソリューションの開発も強化している。2008年下期は、国内では顧客動向を分析する「SAS Customer Intelligence」や、金融業向けの「SAS Risk Intelligence」に力を入れる方針。製造業や流通・小売業など国内でSAS製品がそれほど浸透していない業種にもソリューションを提案する。各業種について専門性を持つパートナーとの連携も強める。

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