国際会計基準への対応は「大げさに恐れる必要はない」〜ベリングポイント少しずつ変化していく日本基準へ対応すれば十分

» 2008年09月26日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 ベリングポイントは9月26日、報道関係者向けに「国際会計基準」についての説明会を開催した。ベリングポイント 代表取締役社長 内田士郎氏は、「いま会計基準は、国際会計基準へ統一されるべく激動している。これはつまり、経営ルールがグローバル化していることにほかならない。当社は1200名の社員のうち400名が会計ソリューションに携わっているが、“大げさに恐れることはない”という結論に達している」とコメントした。

 ベリングポイント シニアマネージャーで公認会計士の山田和延氏によると、「会計基準とは企業の経営成績や財務状態を表わすために利用されるものさしであり、会計基準が異なればその結果となる利益や純資産も異なる。実際、三菱東京UFJは米国基準では5424億円の最終赤字だったが、日本基準の財務諸表では6366億円の黒字となっており、その差が1兆円以上ある」と説明。日本や米国は以前から独自の会計基準を用いているが、現在世界基準となりつつあるのは、欧州を中心に世界113カ国で採用されている「国際会計基準(IFRS)」だ。

川野氏写真 ベリングポイント エグゼクティブアドバイザー 川野克典氏

 この潮流に対して、米国も徐々にIFRSへの歩み寄りを始め、2008年8月には米国証券取引委員会(SEC)が「2011年までにIFRSを強制適用するか検討する」と発表。強制適用されれば、大企業は2014年から、中企業は2015年、小規模企業も2016年からIFRSが強制適用される見通しだという。一方、日本は現在、段階的にIFRSへ近づける「コンバージェンス」を行っている段階で、IFRSそのものを採用する「アダプション」を正式表明していない唯一の主要国となっている。

 これに対し、山田氏は「欧州では2009年から外国企業にもIFRSの適用を義務化し、米国もIFRSの義務化に向けて動き出している。このような状況から、日本もIFRSを適用する以外の選択肢は考えられない状況だ。問題はいつ適用するかという状況となっている」と分析。「最終的には、2014年ごろに連結財務諸表でIFRSと日本基準の選択適用が開始され、その後数年間で強制適用となると想定している。単体決算ではしばらく日本基準が残り、その日本基準もコンバージェンスによってIFRSへ近づいていく」と予測した。

 では実際、IFRSと日本基準ではどの程度の差異があるのだろうか。ベリングポイント シニアマネージャー 公認会計士 伊藤久明氏は、例として純利益を挙げた。日本では、収益から費用を引いたものを純利益としているが、IFRSでは持ち合い株式の含み損益などを加えた「包括利益」を採用している。これにより、経営者は自分でコントロールすることが難しい株式などの評価損益リスクも考えた経営を迫られるという。また、日本では買収企業ののれん代を償却するが、IFRSでは償却しない。このため、「合併・買収後ののれんの償却負担がないため、合併・買収が活発になる」(伊藤氏)とした。

 このような日本企業の現状について、ベリングポイント エグゼクティブアドバイザー 川野克典氏は、「日本の経理は大変な状態になっている。いわゆる日本版SOX法対応や、コンバージェンスによる相次ぐ会計基準変更、決算の早期化の三重苦に見舞われている。この問題を経理問題とせずに、経営問題として取り組んだ企業が世界で勝ち残れるだろう」と説明した。

 しかし、実際にはIFRSをそれほど恐れる必要はないという。例えば、現在あるIFRSと日本基準の差異は、2011年までに段階的に解消される予定であり、その後IFRSの強制適用が開始されたとしても、まだ十分に時間があるとした。また、包括利益が導入されても、純利益はなくなるわけではなく、実際包括利益を導入している米国でも、アナリストは純利益を重視しているという。そして、懸念される会計システムの改修も、日本で唯一IFRSの適用企業である日本電波工業のケースでは1000万円程度で済んでいることから、「日本はコンバージェンスによって、少しずつ変わっていくので、それに対応していけば、大騒ぎする必要はないのではないかと考えている。ただし、M&Aが活発化するなど、必ず変化は起こるので、それに対応する経営者の心の準備も必要だ」(川野氏)とコメントした。

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