NTTデータ、いよいよクラウドコンピューティングに進出グリーンデータセンタ共通IT基盤サービスを提供開始

» 2008年10月01日 00時00分 公開
[内野宏信,@IT]

 NTTデータは10月1日、「グリーンデータセンタ共通IT基盤サービス」を提供開始すると発表した。システムごとに構築していたIT基盤を、複数のシステムで共有することで、IT基盤をより安く提供するサービスであり、同社の従来型データセンターサービスより最大30%価格を抑えられるという。データセンターの建物設備やネットワーク、コンピュータといったハードウェアに加え、OSやミドルウェア、さらにIT基盤の運用・保守までワンストップで提供することが特徴で、「将来的にはNTTデータが持つ多数のアプリケーションをネットワーク経由で提供する、クラウドコンピューティング・サービスの基盤としたい」(NTTデータ執行役員 神田文男氏)という。

 サービスメニューは、ラック・電源などのファシリティからミドルウェアまでを複数企業で共有する「マネージド・ホスティング ハード共有」、ファシリティのみ共有してネットワークやハードウェアなどのリソースは1社で占有する「マネージド・ホスティング ハード占有」、そして必要なリソースを自由に選んで利用する「個別カスタマイズ」の3つ。

写真 NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 データセンタビジネスユニット長 年清昭彦氏 

 ネットワークからミドルウェアまでのシステム基盤については、NTTデータがあらかじめ基盤として望ましい構成を設定した、フルオープンソース対応の基盤ソリューション「Prossione」と、マルチベンダ対応の基盤ソリューション「PRORIZE」を用意。これによって、「3メニューとも、Linuxを使うオープンソース系、UNIX/Windowsを使うマルチベンダ系の両方に対応できる」(NTTデータ ビジネスソリューション事業本部 データセンタビジネスユニット長 年清昭彦氏)という。

 年清氏は「複数社ですべてを共有する『ハード共有』は資産そのものを持ちたくない企業に、一部を共有する『ハード占有』は、設備は自前で持ちたいが運用は任せたい、といった企業に向いている。ターゲットは中堅・中小企業で、前者は弊社の従来型データセンタサービス価格の最大30%、後者は最大20%価格を低減できる。『個別カスタマイズ』は大企業がメインとなるだろう」と解説した。

 一方、神田氏は、データセンターの省電力化というテーマにおいて、仮想化や高圧直流給電、運用自動化、ユーティリティコンピューティングといったキーワードが注目されていることを紹介した。

 中でも、仮想化は多くの企業に浸透しつつあり、業務ごとに個別に用意していたサーバを、企業内で集約・統合する動きが数多く見られるようになった。神田氏はこうしたトレンドを指して、「この次のステップとして、各企業内でのサーバ統合だけではなく、今後は企業間をまたがったリソース共有化の動きが活発化してくるはずだ」と指摘。NTTデータ内でも4拠点18サーバを1拠点3サーバへの集約に成功するなど、今年5月から複数拠点・部門間のサーバ集約化・統合化の技術力向上に向けて実証実験を進めているという。

写真 NTTデータ 執行役員 神田文男氏

 また、AC→DC変換が複数回必要な交流電源方式のサーバに対し、変換が1回で済みエネルギーロスの少ない高圧直流給電方式のサーバラック・ユニットシステムの実証実験も実施。消費電力は最大20%、投資金額は50%減が見込まれており、感電防止など運用面での安全性を確認しつつ、今後NTTデータの部門サーバに順次採用する予定だという。

 このほか効率的な気流を実現する天井・二重床設計や、暖気と冷気を分離するキャッピングなど、データセンターの冷却技術向上も推進。「これらの技術を、共通IT基盤サービスを展開する都内データセンタ(サービス第1期分/1200平方メートル)にも採用しており、従来型データセンターに比べて、東京ドーム21個分の森林保護に相当する年間約2000トンのCO2削減を実現する」という。

 また一方で神田氏は、企業におけるIT活用のトレンドも指摘。「顧客管理、管理会計など自社独自のノウハウ、強みを反映すべき“戦略的IT活用”と、財務会計など特に自社独自の要件を反映する必要のない効率性を重視した“守りのIT活用”に二極化している」として、「それならば、自社独自のアプリ開発など、競争力の源泉となるコア部分に投資を集中し、それ以外のIT基盤についてはアウトソースしたほうが効率的だろう」と、今回の共通IT基盤サービスを別の角度からアピールした。

 また、アプリケーションを除いた、すべてのリソースを提供することに対して、「将来的にはNTTデータが持つ多数のアプリケーションをネットワーク経由で提供する、クラウドコンピューティング・サービスの基盤としたい」と展望を力説。「売り上げ目標は2011年までに40億円。現在すでに60件の引き合いがあり出足は順調。薄利多売を目指したい」と話している。

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