SASが経営分析フレームワーク「Business Analytics」発表「BIは過去の技術」と指摘

» 2008年10月29日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 米SAS Instituteは10月28日(米国時間)、従来のビジネス・インテリジェンス(BI)の提供モデルを刷新する「Business Analytics Framework」を発表した。世界的な景気後退が明確になる中、SASは新しいフレームワークを「経営課題を解決するソリューション」(同社 シニア・バイスプレジデントのジム・デイビス氏)と位置付けて、企業に密着したサービス展開を強化する。

 Business Analytics Frameworkは同社が米国ノースカロライナ州キャリーの本社で開催した記者会見で発表した。同社 CEOのジム・グッドナイト(Jim Goodnight)氏はSASが強みを持つ金融業界、通信業界などで、ソリューション提供が成功してきたことを強調。特に同社売り上げの42%を占める金融業界向けソリューションでは景気後退を受けて「リスク管理ソリューションの伸びが顕著」と話した。

SAS InstituteのCEO ジム・グッドナイト氏。景気後退の中でリスク管理ソリューションが伸びていることを説明した

 Business Analytics Frameworkは、大手ベンダによる主要BIベンダの買収という業界の流れに対抗する動きだ。デイビス氏はIBMによるコグノス買収、SAPによるビジネス・オブジェクツ買収、オラクルによるハイペリオン買収などを挙げて、「BIは死んだ」と言い切った。これまで特有の機能で顧客の課題を解決してきたBIベンダだが、IBMやSAP、オラクルという多くの製品やソリューションを抱えるベンダに取り込まれることで、その特長が薄れてしまうという考えが背景にある。

SASのシニア・バイスプレジデントでチーフ・マーケティング・オフィサーのジム・デイビス(Jim Davis)氏

 デイビス氏は加えてBIが時代遅れになりつつあることも主張した。「BIはデータにアクセスする技術に過ぎない」と話したうえで、「SASは過去の技術には興味はない。顧客企業がいま抱える問題を解決できる技術に投資したい」と語った。

 SASが新たに発表したBusiness Analytics Frameworkは、これまでのツール単体売りを転換し、業種別ソリューションの展開を容易にするためのフレームワークだ。フレームワークを構成するのはETLツールなどからなり、企業内のさまざまなシステムのデータを統合してデータマートを作成する「Data Integration」と、そのデータマートから企業が次の採るべきアクションを予測し、事前に指し示す「Analytics」、従来のBIツールが属する「Query&Reporting」、そして金融業界や通信業界などの業種別ソリューション「Business Solutions」。加えてフレームワーク全体をKPIベースの「Performance Management」で管理する。

「Business Analytics Framework」の構成

 SASが他社に対する優位と考えているのは、このうちのAnalyticsだ。デイビス氏は企業が必要とする経営分析の機能をリアクティブ(事後)とプロアクティブ(事前)の2つに分けて、「他社はリアクティブの分析が中心。SASはプロアクティブの分析に強みを持つ」と強調した。

 Business Analytics Frameworkは考えとしては新しいが、構成する要素はSASがこれまで提供してきたツールが中心だ。ポイントはツール単体売りではなく、複数のツールとサービスを組み合わせたソリューション販売を推奨すること。BIツール自体も「フレームワークのサブセットに過ぎない」(デイビス氏)との位置付けで、あくまでもソリューションを中心に据える。

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