米Adobe Max 2008基調講演レポート

米アドビ、Flash PlayerのAndroid搭載やFlash Catalyst、Wave、Cocomoを発表

2008/11/18

 米アドビシステムズは11月17日、サンフランシスコにて「Adobe Max 2008 North America」を開催し、新製品や新戦略の発表を行った。

 Adobe Maxは例年、日本を含む世界数カ所で開催され、新製品の発表以外にも多くのセッションやハンズオンなどを行う場となっている。米アドビシステムズCTOでエクスペリエンス&テクノロジ部門担当上級副社長のケビン・リンチ氏を中心にした基調講演では、「Client+Cloud」「Social Computing」「Devices+Desktop」という3つのテーマで新しい発表があった。

米アドビシステムズCTOでエクスペリエンス&テクノロジ部門担当上級副社長のケビン・リンチ氏 米アドビシステムズCTOでエクスペリエンス&テクノロジ部門担当上級副社長のケビン・リンチ氏
米アドビシステムズ社長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏 米アドビシステムズ社長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏

 まず、米アドビシステムズ社長兼CEOのシャンタヌ・ナラヤン氏が登壇し、開会のあいさつを行うとともに、昨年のAdobe Maxで発表があったコードネーム「Thermo」と呼ばれるツールの正式名称が「Adobe Flash Catalyst」になったと発表。「Thermo」はデザイン(Adobe IllustratorやAdobe Photoshopなど)とロジック(Flex Builder)を同じMXMLでつなぐツールで、デザイナとプログラマの協業において期待されていた。

 「Client+Cloud」についてリンチ氏は、クラウド上のWebリソースを扱うクライアントとしてのFlash/Adobe AIR(以下、AIR)のデモを行った。10月に正式にリリースしたばかりのFlash Player 10の機能紹介として、風にたなびく布のような形をした動画を複数再生するデモや新しいテキストエンジンを使って蛇行したテキストフィールド上に日本語の文字列が流れるアニメーションのデモなどが行われた。

蛇行したテキストフィールド上に日本語の文字列が流れるアニメーションのデモ 蛇行したテキストフィールド上に日本語の文字列が流れるアニメーションのデモ

 また、Flash Player 10については64ビットLinux版の発表もあった。プレビュー版が同日から利用できるということだ。

 Flash Player 10の機能を搭載するAIR 1.5リリースも発表。従来のWebKitに加えてActionScript/JavaScriptエンジン「SquirrelFish」を搭載した初のプロダクトになるという。AIR 1.5のデモは、「The New York Times」のニュースリーダーのアプリケーションで、自由に表示の拡大・縮小ができ、画像ファイルの位置も自由に変えられるというインタラクティブなものだった。

「The New York Times」のニュースリーダーのデモ 「The New York Times」のニュースリーダーのデモ
実際の2008年11月17日付けの「The New York Times」 実際の2008年11月17日付けの「The New York Times」

 クラウドとの連携の紹介では、米セールスフォース・ドットコムのプラットフォーム部門シニアバイスプレジデント、スティーブ・フィッシャー氏が登壇し、PaaSプラットフォーム「force.com」とFlex/AIRの連携を紹介し、デモを行った。

 また「Social Computing」では、「Cocomo」「Adobe Wave」の発表があった。Cocomoは、昨年のAdobe Maxでも発表があったWebビデオ会議システムのクラウド・プラットフォームで、Flex/AIRの新しいコンポーネントとしてリアルタイム通信やビデオ通信、VoIP、ファイル共有のAPIが使えるようになる。まだベータ版だが、アドビシステムズが提供するクラウド上でのソーシャルWebアプリケーションの開発が無償で今日から可能だという。

 Adobe Waveは、複数のWebサービスのメッセージ配信の仕組みを1つのサービスに集約し、AIRを使ってプッシュ型のノーティフィケーション(通知)ができるというもの。Webサービスの運用者が何らかの告知を行いたいと思った場合、RESTのWeb APIを通して、MySpaceなどからメッセージの告知ができる。これも、Adobe Labsでサインアップすれば、今日からプレリリース版を利用できるという。

Adobe Waveの概要(Adobe Labsのサイトより引用) Adobe Waveの概要(Adobe Labsのサイトより引用)

 「Devices+Desktop」では、Symbian OS(ノキア端末)やWindows Mobile、そしてのGoogle Android(T-Mobile端末)上でFlash Player 10のコンテンツが動くデモを行った。これは携帯端末用のFlash Liteではなく、デスクトップと同様のFlash Playerをあらゆる端末で動かすことを目的とする「Open Screen Project」の成果の1つ。正式な搭載時期は未定とのこと。Google Androidの発表では、「Androidの父」こと米グーグルのアンディ・ルービン氏も登壇し、喜びの声を語った。

 また、講演途中でリンチ氏がiPhoneの端末を取り出したので、ついにiPhoneでFlashが見られるのかと会場の期待が一気に高まったが、これはまだ交渉中とのことだった。

 Adobe Max 2008 North Americaは11月19日まで開催される。

(@IT 平田修)

情報をお寄せください:

HTML5 + UX フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

キャリアアップ

- PR -

注目のテーマ

ソリューションFLASH

「ITmedia マーケティング」新着記事

Xが新規アカウントに課金するとユーザーはどれほど影響を受ける? そしてそれは本当にbot対策になるのか?
Xが新規利用者を対象に、課金制を導入する方針を表明した。botの排除が目的だというが、...

Googleの次世代AIモデル「Gemini 1.5」を統合 コカ・コーラやロレアルにも信頼される「WPP Open」とは?
世界最大級の広告会社であるWPPはGoogle Cloudと協業を開始した。キャンペーンの最適化、...

Cookie廃止で広告主とデータプロバイダ、媒体社にこれから起きることとその対策
連載の最後に、サードパーティーCookie廃止が広告主と媒体社それぞれに与える影響と今後...