アドビが考えるFlash/AIRの未来とiPhone対応「Webブラウザを作ろうとしたことも」

» 2009年01月29日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 都内で開催中のイベント「Adobe MAX Japan 2009」のために来日した米アドビの最高技術責任者(CTO)のケビン・リンチ(Kevin Lynch)氏は1月29日会見し、同社が中心となって進めている「Open Screen Project」(OSP)の狙いを「PCやケータイにとどまらず、テレビやゲーム、セットトップボックスなどにもFlashを展開させていく。これらのデバイスは現在はクローズドだが(OSPの活動で)オープンにして、コンテンツやアプリが自由に開発できるような環境を提供したい」と話した。

米アドビの最高技術責任者(CTO)兼エクスペリエンス&テクノロジー部門担当シニア バイスプレジデントのケビン・リンチ氏

 OSPはFlashまたはAIRの関連情報をオープンにし、それらのコンテンツやアプリケーションをテレビやゲーム機など、さまざまなスクリーンサイズのデバイスでシームレスに動かすことを目的にした業界団体。アドビのほかに英ARMやインテル、モトローラ、NBC、NTTドコモ、ベライゾンなどが参加する。リンチ氏はOSPで解決したい問題の1つとして、デバイスによってさまざまなFlashランタイムが使われていることを挙げた。

 例えば同じFlashでもPCではFlash Playerが使われ、携帯電話ではFlash Liteが使われるなどランタイムが異なる。アドビは2008年11月、Flash Player 10とAIRを、さまざまなデジタル家電やモバイルデバイスで使われるARMプロセッサ向けに最適化することでARMと技術協力すると発表した。また、ブロードコムは今年1月、同社が開発するデジタルテレビやセットトップボックス用のSoCプラットフォームにFlashランタイムを組み込むと発表。いずれもOSPの流れを受けた取り組みだ。

 リンチ氏は将来的にはFlash Playerのランタイムを各デバイスで同一にして、アプリケーションやコンテンツの横展開を容易にすると説明した。その際に重要になるのが各デバイス上のFlashランタイムをどのようにアップデートするのかという問題といい、クライアント環境で動作するAIRアプリケーションを使ってアップデートを可能にするとした。Flash Playerの次バージョン「11」ではそのアップデート機能に対応する可能性がある。

独自ブラウザではなくAIRに

 そのAIRはランタイムのダウンロードが世界で1億件を突破し、順調に伸びている。Flash Player同様にAIRもPC以外への展開が計画されていて、リンチ氏は「今後のAIRの開発では、どのようなデバイスでもWebアプリケーションを利用できるようにする機能を織り込んでいく」と説明した。Webアプリケーションを使いやすくするためにアドビは当初、「自らで独自のWebブラウザを開発することを検討した」(同氏)という。しかし、「ユーザーへの幅広いリーチを考えると賢明ではない」として断念。既存のFlash技術を生かしやすい現在のAIRの形に落ち着いた。

 リンチ氏は特にAIRの今後の注力分野として携帯電話を挙げて、「NTTドコモと展開していく」と説明。具体的にはUSBインターフェイスを使えるようにすることや、デバイスのコンタクトリストにアクセスできるようにすることなどを今後の開発の例として挙げた。

技術的な課題とアップルの承認

 Flash Playerをスクリーンのあるどのようなデバイスでも動かすというOSPの活動を進める上で、対応必須なのはアップルの「iPhone」だ。リンチ氏は「Flash Player for iPhoneに取り組んでいる」と話したが、同時に「iPhone上でFlash Playerを走らせるためには解決しないといけない技術的な課題がまだ若干ある。また、iPhoneは誰もがソフトウェアを配布できるようなオープンな環境ではないためアップルの承認が必要だ」として明確な提供時期は示さなかった。「私もFlash PlayerがiPhoneに入る日が近いのではないかと期待している」(リンチ氏)

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