セルフサービスでクラウド環境を利用、HPが新ソフト日本専用のx86サーバも投入

» 2009年02月09日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 日本ヒューレット・パッカードは2月9日、ユーザーがセルフサービスでクラウド環境を構築できるようにする運用管理ソフトウェアを発表した。同時にホスティング事業者やクラウド関連サービスの提供事業者向けに高密度なx86サーバを発表し、クラウド・コンピューティングへの取り組みを強化した。

 HPが発表したのは運用管理ソフトウェアの「HP Insight Dynamics-VSE 4.1」と「HP Insight Orchestration」。両製品とも社内クラウド、外部にリソースを提供する公開クラウドの両方をターゲットにしていて、高信頼で使いやすいクラウド環境を構築できるという。VSE 4.1は物理サーバと仮想サーバが混在する環境で、リアルタイムにサーバリソースのプロビジョニングができるツール。サーバ構成の迅速な変更が可能になる。

 

 VSE 4.1を使うことで物理、仮想の区別なく論理的なサーバ群を構築し、その論理サーバ群を自由に組み替えることができる。論理サーバ群は物理、仮想のサーバプラットフォームやOS、CPUコア、メモリ、共有ストレージなどを自由に設定でき、移動も管理ソフトウェア上で簡単に行える。VSE 4.1では新たにUNIXサーバである「HP Integrity」のブレードモデルに対応した。

「HP Insight Orchestration」の利用画面。Webベースのツールでテンプレートをベースに構成を選択できる

 OrchestrationはこのVSE 4.1上で稼働するツール。管理者があらかじめOSとWebサーバ、アプリケーションサーバ、データベース、SAPなどのビジネスアプリケーション、開発環境などを組み合わせたテンプレートを登録する。エンドユーザーは用意されているテンプレートをWebベースのセルフサービスで選んで、管理部門に申請する。管理部門が許可すれば使うことができる。社内のテスト環境や新サービス提供のために、IT環境を迅速に構築する必要がある場合などに使える。価格はVSE 4.1が10万5000円(税込、以下同じ)から、Orchestrationが9万4500円から。

 日本HPのエンタープライズストレージ・サーバ事業統括 ISSビジネス本部 ソフトウェア・プロダクト&HPCマーケティング部 担当部長 赤井誠氏は「1日または数時間でサーバリソースを提供するのがあるべき姿だ」として、Orchestrationを使うことで「簡単にベストプラクティスの構成を作って、利用できる」と話した。社内クラウドだけでなく、外部公開型のクラウド環境でも利用できるという。

 HPはまた、日本市場だけで販売する新型のx86サーバ「HP SE2120」を発表した。高密度性や低消費電力、独立型の電源ユニットなど日本市場で特に見られるニーズに応えて開発した製品。日本で利用が多い「CentOS」の動作検証を行って、有償サポートも提供する。1Uラックサイズに2台のサーバが入る2ノード構成で、通常の1Uラックサーバの2倍の密度を実現している。プロセッサは1ノードに、インテルのCore 2 DuoまたはDual Core Xeonを1基搭載(サーバ1台で合計2基)。ハードディスクは1ノードで250GBのSATAが2台、または146GBのSASが2台搭載できる。消費電力は1ノードでアイドル時に96.0W、高負荷時は140.2Wだった。同構成の「HP ProLiant DL360G5」はアイドル時に186.4W、高負荷時は224.4Wだった。

x86サーバ「HP SE2120」

 日本HPのISSビジネス本部 ビジネスデベロップメント部 部長の正田三四郎氏はHP SE2120について「主にエクスターナル(外部公開)クラウドに最適化した製品」と説明し、「データセンターの限られたファシリティ内で多くのサーバを収納できる」と話した。ホスティング事業者、クラウド関連サービスの事業者がターゲットで、構成別に3タイプを用意する。最小構成価格で37万8000円から。

日本HPの執行役員 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 松本芳武氏

 HPはまた、同社が考える「アダプティブ・インフラストラクチャ成熟度モデル」に沿った顧客企業対象の無償アセスメントサービスも提供開始する。理想的なIT環境に近づくためのロードマップを提示するサービスで、今後30〜40社のアセスメントをしたいとしている。

 今回のソフトウェア、ハードウェア、サービスの発表は、これまでアダプティブ・インフラストラクチャをキーワードにITインフラの最適化を訴えてきたHPが、新たにクラウド・コンピューティングを担ぎ出した形だ。

 日本HPの執行役員 エンタープライズストレージ・サーバ事業統括 松本芳武氏は「クラウドを実現するための必要要素はこれまでHPがアダプティブ・インフラストラクチャで表現してきたのと同じ」と話し、今後はクラウド関連サービス事業者にも積極的に提案する考えを示した。HPはサービス事業者やデータセンター事業者、一般企業にクラウド案件を提案する全社横断の「NGDC(New Generation Data Center)タスクチーム」も組織した。

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