Twitter、その自信の根拠は今年中にはビジネス展開か

» 2009年02月13日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 Twitterの周辺が慌ただしくなってきた。GoogleやFacebookと同様に高い注目を集める同社だが、目に見えるビジネス展開はまだ何もない。だがFacebookからの高額の買収提案を拒否するなど、今後の展開には自信が垣間見える。日本のユーザーも多いTwitterの今後を考えてみた。

商用アカウントへの課金を否定

 Twitterへのユーザーやメディアの関心の高さが改めて示されたのは、1つのインタビュー記事だった。英国のマーケティング関連メディア「Marketing magagine」が、Twitter共同創業者のBiz Stone氏の言葉として、「企業が商用利用するTwitterアカウントに課金する仕組みを作り出すことが可能」と伝えたのだ。Twitterはこれまで具体的なビジネス展開を話したことはなく、世界中のメディアが商用アカウントへの課金を報じた。

 商用アカウントへの課金は、考えられるTwitterのビジネス展開として容易に思い付く。無料文化が一般化しているインターネットの世界では、よほどのインセンティブがない限り、エンドユーザーへの課金は難しい。それなら、Twitterをマーケティングプラットフォームとして利用している企業に対して課金をすればいいという考えだ。

 実際、企業のTwitter利用は拡大している。既報の通り、米デルは80個のTwitterアカウントを取得し、全世界でTwitterをマーケティングや販促に利用している。最近はTwitterのフォロワー限定の割引販売を始めるなど、同社にとっては重要なツールになっているようだ。

 だが、Twitterは2月10日に商用アカウントに対する課金を否定するコメントをブログで発表した。「Twitterは将来にわたって、個人、企業、有名人の誰でも無料で使える。われわれがTwitterのビジネスで考えているのは、すでに成長しているこの場所に対して価値を提供するようなことで、既存のサービスに対しての課金ではない」。そして、この発言の直前には「われわれは今年、収益をもたらすプロダクトを投入できればと思っている」と記している。

Twitterの公式ブログ

ビジネス担当を採用、動きがあるか

 あえて予想をすれば、現状のTwitterサービスに課金は行わず、新たなサービス、プロダクトで収益獲得を狙うということだろうか。Twitterのビジネス展開についてはこれまで商用アカウントへの課金のほかに、Twitterサイトへのバナー広告掲載や、著名人のフォローに対する課金などのプランが、うわさされていた。バナー広告はすでに日本語版のTwitterで行っていて、これを米国をはじめとする各国に展開するのは自然だ。しかし、バナー広告では「収益をもたらすプロダクト」には、なかなかならない。また、そのほかのプランも上記ブログポストで否定された形だ。

 1月21日にはTwitterのエンジニアであるAlex Payne氏が「Twitter Development Talk」に投稿し、これまで無制限のAPIリクエストを認めてきた“ホワイトリスト”入りのサービスやアプリケーションに対して、新たに制限を設けることを明らかにした。リクエストの上限は1時間当たり2万回。Twitter関連のアプリケーション開発者の中には、この制限を課金の布石と捉える向きもある。

 いずれにせよ、今年何らかの動きがあるのは間違いなさそうだ。2008年12月末にはモバイルビジネス開発のディレクターとしてKevin Thau氏が入社した。同氏は約30人の社員ほとんどがエンジニアといわれるTwitterの中で、初めてのビジネス担当幹部で、モバイル分野だけでなく、ビジネス開発全般を担当するようだ。同氏は過去にOpenwaveに在席したことがある。Twitterはまた「Twitterの拡大を加速するメディア、インターネット企業」とのパートナー戦略のディレクターを募集している。

5億ドルの買収提案を拒否

 Twitterは2006年8月にサービスを開始し、2007年5月に会社が設立された。現在はUnion Square Ventures、デジタルガレージ、Spark Capital、Bezos Expeditions(アマゾンのジェフ・ベゾズCEOのファンド)が出資する。その総額は2200万ドル以上といわれ、資金は豊富(TechcrunchによるとInstitutional Venture Partnersから新たに出資を受けたという)。ビジネス展開を検討する時間は、たくさんある。収益に結び付く開発を続ける時間もあるわけだ。2008年7月には売り上げがゼロの企業ながら、Twitter検索サービスの「Summize」を買収した。

 Twitterには買収のうわさも絶えない。2008年11月末にはFacebookからの買収提案を拒否したことが明らかになった。株式交換を含む買収額は5億ドルと言われる。

ユーザーの70%は2008年に利用開始

 2006年8月にサービスを開始したTwitterは急成長してきた。Twitterでは公式にユーザー数を発表していないが、マーケティング企業のHubSpotは2008年末に公開した調査レポートで、400万〜500万人と推測している。2008年に入ってから特に成長していて、全ユーザー数の70%は2008年からTwitterの利用を開始したという。1日に5000〜1万アカウントが増えている。Twitterユーザーの平均利用期間は275日といい、利用歴の浅いユーザーが大半だ。フォローしているユーザー数(Following)の平均は69人、フォローされているユーザー数(Followers)は69.5人。ちなみに最もフォローを集めているのはバラク・オバマ米大統領と言われている。その数は2月13日現在で26万8000以上だ。

Twitterユーザーの伸び(上)と、曜日別の投稿率(HubSpotの資料から)。水曜、木曜日が多い

 Twitterを習慣的に使い続ける人が多い理由は「バーを下げた」(Twitter CEO Evan Williams氏の発言)からだ。ブログやSNSの日記ではそれなりにかしこまって、起承転結があることを書かないといけないと思う人でも、最大140字のTwitterなら気楽にポストできる。この敷居の低さが続けられる秘訣だ。大きな事件や出来事があると真っ先にTwitterに情報が流れることが多くなり、リアルタイムに世界とつながる感じも人気を呼んでいる。

年齢層高め、マーケティング利用には好都合

 オルタナティブブログの「シロクマ日報」では、小林啓倫氏がPEW Internet & American Life Projectが公表したTwitterユーザーについてのレポート(PDF)を紹介している。Twitterとその類似サービスの利用者のうち、18〜24歳が19%、25〜34歳が20%を占めるなど若年層ユーザーの比率が高いのはほかのネットサービスと同様だが、「意外に中高年層にも浸透している」(シロクマ日報)という。Twitterユーザーの年齢中央値は31歳であり、MySpaceの27歳、Facebookの26歳と比べて、利用層の年齢が若干だが高め(調査は米国対象)。小林氏は「企業にとっては、若年層に偏りがちなSNSに比べ、Twitterがマーケティングの舞台として活用できる幅が広いということを示しているかもしれません」と指摘している。

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